秘密の共有
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ヴォルフ団長の説明によると、獣の耳がない人間は僅しか居ないらしい。また、獣の耳が無いことがばれるとやはり色々大変らしく、団長は他の人には獣の耳がついているように見える幻術魔法をかけていたらしいが私にはあっさりと見破られてしまいかなり動揺していたようだ。しかし、私も耳が無いと告白すると納得して、緊張を解いてくれた。
「貴女にも幻術をかけておきましょう。帽子を取らないといけない時もあるでしょうから。」
「ありがとうございます!」
フワッと暖かい風が頭のあたりを撫でる。
「みえてます?」
頭のあたりをペタペタと触るもなにも感触がないので本当に獣の耳が生えたのか実感がわかない。
「大丈夫ですよ。今日は遅いので、明日他の騎士の前で帽子をとってみるといいです。他のかたの反応がみれますよ。」
「わかりました。因みに団長様は他のかたにはどんな耳が見えているのですか。」
「…狐です。」
興味本位で聞いてみると言いにくそうに団長はぼそりと答えた。
「それにしても、私以外で公領の外で耳のないものを、初めて見ました。サクマカヨ、貴女は何者ですか?」
先ほどとは違った緊張感がその場をおおう。
「先ほども言ったとおり耳を持たないものは少ないのです。」
「…私は、この国のものではありません。」
団長の反応が気になり手に力がこもる。
「しかし、貴女は私たちの国の言葉を話せている。」
「前に滞在した街で、翻訳の指輪というのを頂きました。なので会話などには困っておりません。」
フィリエに買って貰った指輪をみせると、団長は納得したようだ。
「私がいた国では耳を持たないものが当たり前でした。むしろ獣の耳を持っているものはいませんでした。」
「なんと!」
う、嘘は言ってないからね!!
加代は自分に言い聞かせる。だらだらと冷や汗がとまらない。
「私が、この国に来たのはほんの数日前です。帰る方法はないとあるかたに言われたので諦めて、います。っなので、私は、この国で、生きて、いきたいと思っています。この国のことを、知りたいのです。」
帰る方法がない、と言葉に出すと実感が湧き涙が溢れてきた。最後の方は言葉を紡ぐのがやっとだった。言い切ったあとどんな顔をすればいいのかわからず、加代は俯いた。焦ったり、悲しくなったり、感情の起伏に自分がついていけなくなっている。かつりと団長がこちらに近づいてくる気配がすると思っていたらふわりとマントに包まれた。
「っっ!??」
「すまない、そのような顔をさせるつもりではなかった。」
加代の瞳から雫がこぼれ落ちる。
「う…ぇえ…」
一度、切れた堰はもう止まらなかった。今日あったばかりの人だとか、男の人に抱きしめられてるのは人生初だとか、もうそんなことは気にしていられなかった。
ひとしきり泣いたあと、加代は恥ずかしそうに団長から距離をとった。
「あ、の…いきなり、すみません、でした。」
「いえ、もう大丈夫ですか?」
「はい。自分のテントに戻ります…あの、ヴォルフ団長…」
「はい。」
「私、もっと色々知りたいんです。この国のこと、この世界のこと…皆さんの邪魔にならないところまででいいんです。私の方から改めてよろしくお願いします。」
「勿論です。」
ぺこりとお辞儀をした加代にゆったりと団長は微笑みかける。
「おやすみなさい。」
その微笑みに今度こそ本当の安心をした加代はふわりと笑って団長のテントを後にした。
加代が去ったあとひとり、加代の笑顔をみて顔を真っ赤にした団長が一人項垂れていた。




