持ち込み
私は名も無き漫画の編集者。
今日もココには漫画になるために、漫画家の卵達がやって来る。
「どうもこんにちわ。」
おっと、卵とは言ったが、まさかこんなチビッ子が来るとは予想外だぜ。おしめが外れたばかりって感じじゃないか。
「坊や、歳はいくつだい?」
「う~んと、5さい。」
ジーザス、5歳とか受付の時点で止めろよ。どうしてココまで来れたんだよ?
「今日僕ね、お母さんと一緒にマンガの持ち込みに来たの。」
マジでか・・・そういえば後ろの方で黒いスーツを着たお母さんらしき人がお辞儀してるぞ。母親同伴で持ち込みとか聞いたこと無いわ。
「漫画書いてきたの?」
「うん♪」
はて、どうしたものか、俺は五歳児が書いてきた原稿を読むのか?
・・・いや読まねばなるまい。俺は編集者で彼は漫画家、読まぬ理由は無い。
「とりあえず、そこの椅子に掛けて。」
「はい♪」
俺は机を挟んで五歳児と椅子に座る。クリクリとした目、黒い坊っちゃん刈りの頭、うん、見るからに幼児だ。幼児以外の何者でも無い。
「じゃあ。早速原稿を見せてくれないか?」
「うん♪お母さん、持ってきて♪」
呼ばれたお母さんがニコニコしながら近づいて来て、小脇に抱えた茶封筒から白い原稿を取り出し、それを机の上に置いた。
漫画家の母親が見てる前で原稿見るなんて、スゲー緊張するなぁ。
俺はいつもの様にパラパラと原稿を捲る。だが俺は衝撃を受けた。
ダイナミックなコマ割り、大胆かつ芸術的な絵、センス溢れる台詞の数々、五歳児が書いたとは思えない・・・い、一体全体どうなってやがる?
「どうです?たかが5歳児が書いたにしては出来た漫画でしょ?」
な、なんだコイツ急に態度がでかくなって、机の上に足を乗せだしたぞ??
後ろのお母さんまでドヤ顔じゃないか。
「もうデビュー確定ですよね?5歳児の僕がデビューするだけでも話題になりますが、加えてこの技術、3ヶ月前までクレヨンだったんですよ?客観的に見ても凄いですよね。僕はいずれアナタ達の週刊誌の顔になりますよ。」
生意気だなぁ、最初が素直な感じだっただけにスゲー腹立つ。だがそんな顔が出来るのはここまでだ。
「この作品には重大な欠点がある。」
「な、なんだって!!」
良いリアクションする五歳児だな。じゃあ突き付けてやるか現実を。
「話が面白く無いんだよ!!」
「・・・えっ?」
真顔になってキョトンとする五歳児。だか畳み掛けてやる。
「この勇者が魔王を倒しに行くストーリーはありきたり過ぎてつまらん。絵も上手いのに中身が無いから気持ち悪く感じる。五歳児の人生経験の無さが明るみに出ている。」
俺は持てる力を全て使って作品を酷評してやった。さてどうなるかな?
「グスッ、グスッ、うわぁあああん!!おかあさーん!!」
ふむ、泣いてお母さんに抱き着いたか。・・・やべぇ、やり過ぎた。五歳児に全力出すとか編集者失格かな?
「よしよし、良い子、良い子。編集者さん気にしないで下さいね。この子ちょっと最近天狗になってたんで、良い薬です♪」
ふぅ、助かったぁ。訴えられたらどうしようかと思ったぁ。
しかし、この子に才能があるのは確か、他誌に取られるのは勿体無い。
「坊や、悔しかったらコレに懲りずに、また書いた原稿を持ってきなさい。」
「うぅ、分かりましたぁ・・・次はもっと面白いの書いてきますからぁ!!」
泣きながらも決意の眼差しの五歳児。うんうん、これは次も持ってくるな。
こうして五歳児はお母さんにオンブされて出て行った。
その後、五歳児は俺が身震いする程の傑作漫画を持ってくるのだが、それはまた別の話。




