第48話 助力
――――ホワイティア城 大図書室。
「ど、どういう事です!? 何故おぬしが二色の、交わる事の無い対の色を同時に操っているのじゃ!」
「さあ、なんででしょうねえ」
「まさか混色派生!? 混色派生できる人間は限られているはず。ましてや転移者がその様な力を……」
シラルドは心底震えていた。まるで靄のかかった視認する事の出来ない、得体の知れない巨大な生物を目の当たりにしている様相。
彼もそれなりに歳を重ね、この世界での事象は大方把握している口。しかし、数多の出来事を見聞きしてきたシラルドでさえ、この白黒の、対をなす色力を扱う人間を知らない。信じられるはずが無い、それがこの世の理なのだから。
「混色派生? ああ、ミルとタータがやってた儀式の事か。影と霧ねえ、混ぜれるのかな? よいしょ」
リムは左の黒い靄、右の白い霧を手元でこねる様に合わせた。しかし何も起こらず、元通りの黒い靄と白い霧に分離された。
「……影と霧。現象としては混ざる様な相性じゃ無いよな」
そう、リムは混色派生による色力の会得では無い。あくまで吸収し、自身の能力として転換、放出しているのだ。
「し、信じられない。他人の色力を扱うなんぞ混色派生以外有り得ないのです!」
「そんなこたあ知らねえよ!」
「ですが! 今貴方は自身の能力、吸収が出来ないと仰いました。墓穴を掘るとは滑稽です」
リムの能力である吸収は何故かここ、ホワイティア城では扱えなかった。
「貴方の過去、記憶を改変して私の駒にして差し上げましょう。記憶の鏡!」
鏡を床へ立て、リムへと向けたシラルドは記憶改変を試みる。鏡面が夕日を反射しリムを照らした。
「これで転移者である貴方も私の従者となりましたね。ホッホッホ」
「……」
リムは呆然と立ち尽くし、シラルドの色力の前に成す術が無い。しかし、何事も無かったかの様に首を傾げたリムは困惑した様子だ。
「……どういう事です?」
(シラルド、貴方はまだ分かっていない様ですね。リムの秘められた力を甘く見過ぎではなくて?)
「リ、リリ……様!? どこから声が!?」
(私を従者にできるとでもお思いですか?)
白王リリの声はシラルドの頭に直接語り掛けてくる。シラルドは再び混乱に陥った様子で周囲を見渡した。
「ええい! リリ様は今、行方不明の筈! 幻聴なんぞに耳を貸す訳には!」
シラルドは鏡面をリムへと向け、再び記憶改変を試みる。
(しつこいですわ! 真実の眼!!)
リムから白い衝撃波が波紋状に広がり、シラルドの鏡を砕き割った。
(私の色力を前にして、真実から目を背ける事は意味を成しませんわ。リム? 城周辺に展開している私の色力を解きました。これで貴方の曖昧なる力を使える筈です)
「ん? ああ、なんだか分からないけどありがとっ!」
リムは確かめる様に灰色の壁、曖昧な領域をドーム状に展開した。
「気を付けてねー。この壁、触れると色力吸っちゃうよー?」
「ふん、そんな虚言に付き合っている暇は無いのじゃ。上で待っているぞ……」
シラルドは再び何も無い空間から巨大な鏡を取り出し、その鏡の中へと消えて行った。
「あ!! あいつ逃げやがった!」
(リム、私の力は多用できません。ですが、既に貴方のその吸収する色力によって代用はできるでしょう。エミルを、兄妹達を救って下さい)
「なんであんたがオレの中にいるのかは分からないけど、後でしっかり説明してもらうからな?」
(ええ、勿論ですわ)
「とりあえず上か? こういう戦いは玉座の間が最終局面だって相場が決まってるんだぜ!」
(何を言っているかよく分かりませんが。とりあえずシラルドは、ロンベルトのいる玉座の間へ向かったと見て間違いないでしょう)
リムは床に寝かせていたタータを引き摺り、大図書室を後にする。
「重いんだよ! この巨乳娘!」
大図書室 リム対シラルド。お預け……。
――――リムの意識の内側。
白い炎と黒い炎が揺らめいていた。
(フン、相変わらず甘い奴よ。とっとと終わらせれば良いモノを)
(私達の色力はリム自身に負担を掛けてしまいます。彼自身が耐えられなくなるという事は避けたいのです。それに私はリムに賭けているのよ。真実へと導く曖昧なる使徒として、どう行動するか興味はありませんか? ガメル)
(フン! 欺瞞に満ちたこの国の主の言葉とは思えんな)
(欺瞞に満ちているのはホワイティアです。オルドールは巻き込まれたに過ぎませんわ)
(我の国を見るがいい。民は皆、愚直に従っておるわ。我がいる限り明日を約束しておる。明るい明日などと戯れた先導はしておらんがな。ガッハッハ!!)
(見習いたいものですわね)
(フン、皮肉をいいおる)
ねえねえお父さん。ガメル様、最近見ないね。
いつも街に来て、隣にいる兵士さんから食べ物貰えるのに。
ねえねえお父さん。ザハル様も最近見ないね。
お仕事大変なのかな。
ねえねえお父さん。お父さん。なんでお父さん動かないの。お父さん……。




