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第188話 絶対に信じない!!

――時は戻り、現在。リムとタータが目にしたのは、周囲に血を撒き散らした調査隊の男の姿だった。


「ど、どういう事だよ……タータ! 早く治癒をッ!」

「あい!!」


 首元から(おびただ)しい量の血を流していた男の目には、既に光が無かった。恐怖で歪んだ顔と爪にこびり付いた自身の肉片を見たタータは、既に遅しと判断していた。


「まだ死んで時間が経って無いね。もう少し早く見つけれてればタータの力で何とかなったかも知れないのに」

「お前が落ちる必要はねえよ。コイツらはどう見たって普通の人じゃない。よく見てみ。オレらと別れたザハルが向かった方向、あっちに見えるのは明らかに調査隊っぽい死体だらけ。アイツらがこんな惨殺すると思うか? きっと何か訳が有りそうだ」

「一番やりそうなのがザハルっちだけどね♪」

「お前、切り替えが早えよ。数秒前まで助けられなかったって落ち込んでたと思ったら、惨殺現場を見てザハルっち♪ じゃないんだわ」

「気を落とす必要無いって言ったのリムっちじゃん♪ それにどうしようも無い事でいつまでも落ち込んでても仕方無いもんね♪」

「そ、そうだけども!」

「そうだとも♪」

「はあ、お前と居ると元気を貰えるよ」

「あはっ♪」


 にっかりと笑みを浮かべたタータだったが、とんがり帽子をクイっと上げると遠くに見える親父島(おやじしま)を見上げた。その顔からは既に笑みが消え、何処か悲し気な表情である。


「お前の百面相っぷりにはそろそろ慣れて来たな」

「んん? リムっちの顔も色々変わって面白いよ♪ タータのおっぱい見た時とか、鼻の下がびよーんって伸びてたし顔も変形できるじゃん♪」

「いや、それはただのバケモンなんだわ。ってふざけてる場合じゃなくてだな。どうする、こんな短時間でみんなとはぐれてしまったし、ドラドラも置いて来たまんまだ」

「ドラドラは大丈夫♪ だから親父島に向お♪」

「従えてるお前が言うんならそうなんだろうけど、そんなに強いのか? ドラドラって」

「んー多分みんなより強いと思う♪」

「いや説得力無いって。ホワイティア城でケチョンケチョンにされてたじゃんかよ」

「あれはタータが言ったから。ドラドラが暴れると城なんて簡単に無くなっちゃう♪ ミルっちの国を壊す訳にいかないでしょ? だから手は出さないでって言っといたの♪」

「……えっ?」


 ここに来てリムは衝撃を受ける。確かにリムの前でドラドラが本気で戦った事は一度も無く、寧ろ劣勢の場面ばかり。それなのに一行の誰よりも強いとタータは豪語する。とても信じられる筈が無かった。


「あははは。可笑しな事言うなよ。バサバサと飛び回ってるだけじゃん。それに腕ももがれるしさ。あのクソドラが皆より強い? そんな訳あるかって」

「クソドラがなんだっテ」

「ッッ!!?」


 高らかに笑いドラドラを小馬鹿にするリムの後方には、見知らぬ大男が佇んでいた。


「ってなぁんだ。ビックリさせんなよ。てっきりクソドラかと思ったじゃんか」

「あ、ドラドラ! お帰り♪ ラーハムちゃんはちゃんとお説教聞いたの?」

「しっかり躾けておいタ」

「……え?」


 リムの思考が追いつかない。そこに立っていたのは上半身裸の大男。所々に見える鱗は竜人のそれである。下半身は全て鱗で覆われており、強靭な爪がしっかりと地面に食い込んでいる。リムは記憶の中にあるドラドラと目の前に立っている竜人を重ねる。ドラドラと酷似した後ろに延びた二本の角や同じ紫色の鱗、声までもが同じだった。しかし特徴的なオネエ口調は何処へと。


「ぎゃははは! いや、声は似てるけどそりゃ無いだろ! だって、ドラゴンじゃないじゃん! いや、嘘ももうちょっとうまくついてくれよ!」

「……」

「……いや、もうちょっとマシな嘘を、ね?」

「……」


 その時、竜人の大男の後ろから肩を竦めたラーハムがトボトボと現れる。


「通せん坊してごめんなさい。もうしません」

「えーっと、どゆこと?」

「そのままの意味ダ。この馬鹿はまだガキの癖にワタシにたてつこうとした。叱ってやっただけダ」

「えええッ!? いや、ラーハムってその……えええッ!? ほら、コイツ等って一国をも滅ぼすレベルだとかって話じゃないのかよ! それを叱ったとかそんな軽い感じで抑え込んだの? 全然頭が追いつかないんだけど!?」

(あるじ)ヨ、この馬鹿に説明してはどうダ」

「うん♪ リムっち、これがドラドラね♪」

「いんや! そんな訳が無い! オレの五感がビンビンと感じてる! コイツは違う! だってほら! あれだよあれ! 食らえ! 真実の眼(トゥルースアイ)!」


 リムは両手指を二本立てて、おでこに有る第三の目で竜人を透視する。勿論そんな物は無いのだが。リムから白い環が広がり、辺りを柔らかく包み込んだ。


「馬鹿の所作としか思えんナ」

「ば、馬鹿って言ったな! 馬鹿って言った方が馬鹿なんですぅ!」

「で、馬鹿にはどう見えたんダ」

「……あれ? おかしい! これは真実を曝け出す技! お前がクソドラだとしたらそんな恰好、すぐに解けるはず!」

「リムっち、だからドラドラだってば♪」

「竜の姿も今の姿も真実ダ。両方ともワタシに変わりはない」

「う、そだ……」


 リムは色力(しきりょく)を解くと地面にへたりこんだ。


「嘘だ! そんな訳あるか! あのクソドラがめちゃくちゃ強いとかあるかぁ!! そこまで言うんなら竜の姿になってみろよ!」


 竜人は肩甲骨辺りに力を加えると、メキメキと翼を生やしていく。徐々に変化していき、やがてはいつもの姿となったドラドラが巨躯をうねらせていた。


「この姿は重くてイヤだワ」

「なんてこった、パンナ……コッタ」

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