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第182話 束の間の親睦

 ホワイティア王国から直線距離にして二百キロ以上も離れた島で、まさか白軍(はくぐん)の主軸である五清白(ごせいはく)に出会うとは思っても見なかった。

 先のブラキニアで出会った黒軍の精鋭である五黒星(ごこくせい)の二人、ヌルとフィーアも流星の衝突の折に飛ばされた経緯がある。それを踏まえれば各地へと散った五黒星や五清白の面々と遭遇する可能性は十分に有り得た。単にリムの心構えが甘かったとしか言いようが無いのだが、それでもオルドール家と因縁があるロンベルト一派との接触は避けたかった。


「で、セインさんはここで何をしてるんだ?」

「一刻も早くホワイティアへ帰還しなければならない。白王(はくおう)様が行方知れずと聞いては尚の事。私はこの島からの脱出を試みているのだが、どうにも厄介な相手が居てだな」

「それは?」

「貴様らも耳にした事くらいはあるだろう。ティアルマート一族の長、ルシエだ」

「だはぁあ! やっぱりそうか。あ、因みにセインさんは五清白の中だと強さはどの位なんだ?」

「何故その様な事を聞く」

「あ、いやぁ。竜人ルシエ・ティアルマートと張り合える実力があるか気になるだろ? オレ達も実はちょーっとそいつに用があってね」

「……ミルキに次ぐ二番手として白軍の中では通っている。が、私ですら全く歯が立たなかった。まるで楽しんでいる、いや弄ばれているかの様に一方的だった」

(五清白の二番手が一方的、か。だけど、ロンベルトより格下の五清白ならば歯が立たなくても当然かも知れないな。何せルシエの子って言う兄妹ですら色巧(エクスクエジット)級なんだから、ルシエ自身は色星(しきせい)級かそれ以上)

「リムと言ったか。貴様は何故この島へ」

「ちょっと長くなるんだけどね――」


 勿論リムは、ホワイティアやブラキニアの事は伏せてここに来る経緯を説明した。流れの者として商業大国アカソへと辿り着き、この島との融和目的と言う事にして。


「成程、近隣諸国が悩まされているのか。であれば尚更放っておく事は出来ないな。アカソは私も知っている。ホワイティアが直接取引をしているのはキヨウ・アカソ氏だった筈だが、名前の挙がったナコシキ家の勢いは東側諸国へも知れている」

「そんなに勢いがあったのか」

「そのナコシキ家の噂を聞いてアカソへと辿り着いたのではないのか?」

「あ、いや。正直色々とあってね。成り行きでアカソに着いただけなんだよね。国勢には疎くてね」

「流れの者にしては珍しいな」

「まだ流れて浅いもんでね」

「相手の過去を詮索するのは良くないな。すまない」

「いやいいんだよ。セインさんも早く国に帰れると良いな」

「感謝する。しかし、この島からの脱出方法が見出せていない現状を鑑みると、帰還は望み薄だ」

「諦めちゃダメでしょ。何があるかは分からないけど、白軍さんはそんなに柔じゃないはず」

「励ましは有難いが、何故その様に知った風な事を」

(あ、やべ。またやっちまった。オルドールの二人を想像してたら白軍が相当な猛者揃いに思えて仕方無いな)

「まあ良い。もう一つ聞きたいのだが」

「ん?」

「詮索は良くないと言ったものの気になって仕方が無いのだが、貴様のその毛色は……まさかとは思うが色操士(しきそうし)では?」

「えーっと。自分ではそういう認識は無いんだけど、一応そういう部類になるのかな」

「なんとも曖昧な答え方をする。して、灰の素を持つ貴様の色力(しきりょく)はなんなのだ。今までその様な色を見た事も聞いた事も無いのだが」

「それは内緒。流れ者がそう簡単に他人に力を教える訳が無いでしょ?」

「それもそうか。重ねて詫びよう、すまない」

(コイツ、案外話の分かる奴だな。扱いやすくて助かる)


 リムは情報を引き出そうと、暫く世間話をする事にした。しかし、有益な情報が無いまま数十分が過ぎる。


「で、そのナコシキの御嬢様ってのがすんごい口が悪くてさぁ!」

「ハハハ! 男を相手にかなりの強気、中々の豪胆さだな」

「ねえリムっち、そろそろ出ないとミルっち達の様子が気になるー」

「……?」

(バカ! その名前を出すなッ!)

「今、ミルと言ったか?」

「そう♪ 霧の悪魔(ミスティデビル)のミルっちだよ♪」

「かぁぁ。やっぱコイツは何も考えてねえ……」

「どういう事だ」


 セインの顔がみるみる険しくなる。


「もう! 馬鹿の所為でバレちまったじゃねえか! おいタータ、少し目を瞑れ! 影渡(シャドウクロッシング)ッ!」

「あわわわわ!」

「待て! 貴様ら何者だ! 何故オルドール家の者を知っている! 今霧の悪魔(ミスティデビル)は何処にいるッ!!」

「教えられる訳無いだろ! んじゃ! 頑張って島から脱出できるといいね! 世間話楽しかったよ!」


 リムはタータと共に、足元の影へと沈み込んでいった。


「どういう事だ。まさかオルドール家の人間がここに? ロンベルト様の計画はどうなったのだ。それにあの色力、確かブラキニア一族の……あのリムとやらは何者なのだ」


 リムの色力によって発動されたザハルの技によって、地上の大木へと戻ったリムとタータ。しかし目に映る光景にリムは驚愕する。


「ど、どういう事だよ……タータ! 早く治癒をッ!」

「あい!!」


 そこにミルやドームの姿は無く、痛ましい姿で横たわる人影があった。

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