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第174話 利己的集団

 リムは行動を共にする意義を皆に説いた。それが己の利点だけでも良い、だが共に行動する以上は協力する事を前提とせよ、と。


「って事でぇ! オレに着いてきてもらうぅ! 必要と判断すれば皆が皆に協力する。いいな? 行動の疑問はその時に話し合えば良い。オレだってただの人間だ、間違う時もあるだろうよ。万能を目指すつもりも無いけど、それでもそれなりに唯一の存在としてこの世界を渡るつもりだ。必要ならその、あれだ。虹の聖石(レインボーウィル)やら鍵の石板(キープレート)やらを見つけて、不穏な世界を変えてみようと思う! 皆が穏やかに暮らせる一日を創る糧をオレが築けるように」

「えらくデカイ事言うたなハゲ。分かってんのか? 虹の聖石(レインボーウィル)は何処にあるかも分かってへんのやで? それに鍵の石板(キープレート)かてどんな力かも分かってへんし用途も分からん。今の状況で必要かって言われたら優先度は低いんとちゃうんか?」

「話聞いてたか、儂姫(わしひめ)鍵の石板(キープレート)の一つはアルの故郷、ナインズレッドにあるんだろ? アルが一緒に居る理由が故郷だって事は分かってる。国を挙げて動く程の物ならそれなりの力はあるだろうし、そうなれば穏やかに譲り合う事が出来るとも思えない。簡単じゃん、そんなのがあって争いが起きるならオレが全部持っていれば、皆の目はオレに向くだろ?」

「それだとお前が周りから狙われるだろうが。ブラキニアも探しているんだぞ。そんな奴と行動しているのが、その国の王子だなどと知れてみろ。国自体の威信にも関わる」

「じゃあそん時はそん時じゃね? ザハル自身がその時に有益な方に着けばいいじゃん。オレと敵対するか? それとも祖国と敵対するか? いや待てよ、もしかしたら互いに協力出来るかも知れない? 今話した所でどうしようも無いし、その時の最適解で動くしか無いだろ? オレぁ政治だ戦争だなんて事には向いて無いんだ。その時の閃きで生きてんだからさ」

「楽観的過ぎて呆れて来る。ザハル、もう一度聞くぞ。こんな奴と一緒に居てもいいのか?」

「……裏切りなんて言葉は使うなよ、リム。お前が言ったんだ。その時の最適解で動く、と。オレがそう判断した時はこの集団からは抜けさせてもらうぞ」

「いんじゃないの? だけど、話くらいはしろよ? 勝手に行くなよ? 寂しいからな」


 リムのにこやかな笑顔に軽い溜息を付いたザハルは、アルへと目配りすると二人でファミリア諸島へと歩いて行くのだった。


「で? ドームはどうするんだ?」

「先程言った通りだ。オレ達オルドールは現時点ではお前に着いて行く」

「ほんじゃ、先走った妹を制止してきてくれよ」

「ああ」


 ドームもザハル達の後に続き、島へと足を進める。


「で? どうするよ」

「どうもこうもないやろ。儂は今帰る場所も無いし、行く先も決まってへん。とりあえずはアンタに着いて行くけど、ザハルが言った通りや。その最適解で動かせてもらうで」

「決まりッ! ほんじゃ頼むよ」

「フンッ。行くで、こなつ」

「にゃぁ~ん」


 皆がそれぞれの想いを秘め、島へと歩き出していく。一人俯いたタータを除いて。


「さて、このおなごはどうしたもんかね」

「アナタが何故そこまでに強気なのかは分からないけれど、竜族の争いは本当に危険ヨ? 並みの力じゃ太刀打ちできないのヨ? それでも――」

「他人を考える余裕なんかあるのか?」

「え?」

「お前は自分の種族の争いに巻き込みたくないと思ってんだろ? でもそれがこの世界を巻き込む可能性が高いと言っておきながら人には関わるなって? そりゃぁ違うだろ」

「……」

「あーあー、どうしよっかなー。世界がアブナイー、オレ達も死ぬかもシレナイー、でも竜族が関わるなって言ってクルー、よし家に引きこもって死ぬのを待とう!」

「い、いやそういう訳じゃ……」

「どんな種族だろうが関係無いだろ。そこに関わる全ての奴が当事者だ。オレはもうその一人なんだよ」

「……」

「で、どうすんだよタータ。お前はこの内の誰かが犠牲になる事を恐れてるのか? 違うだろうよ。そんな戦いに巻き込んじまう皆に申し訳ないんだろ? 自分だけじゃなんとか出来ないから、でもどうしたら良いのか分かんないんだろ? なら一言言えよ、『巻き込んじゃってゴメン、でもどうしたら良いか分かんないから手伝って』って」

「……」

「気持ちを言葉にするのは簡単な事じゃない。ましてやそれが自分の所為かも知れない、相手に迷惑が掛かるかも知れないなら尚更だろうな。出会った事を後悔するなんて無理な話だ。運命だなんて簡単な言葉にするのも好きじゃない。オレはお前の気持ちが分かる訳でも無い。だけどな、今一緒にいる以上は仲間だ。そいつらが協力してくれと言われればオレは絶対力になる。さっきも言った通りだよ。一緒に居る、それが今の答えなんじゃないのか?」

「リムっち……死ぬかも知れないよ?」

「みんないつかは死ぬだろ」


 リムはニコリと笑みを返し、ファミリア諸島へと歩き出した。


「ご主人様……」

「ドラドラ、タータはどうしたらいいんだろ」

「アタシがアイツに上手く話しを付ける事が出来れば何か変わるかも知れないワ」

「ルシエっちに……?」

「エエ、あの脳筋バカを抑えるのはアタシしか居ないのヨ。それにリムもああ言ってる。みんなの前で大見得切ったんだもノ、簡単には逃がさないワヨ。アタシ達の闘い、エヌマ・エリシュからは」

「……うん」


 ドラドラの背に乗ったタータも、リムを追う様にファミリア諸島へと向かうのだった。



――――一方、ファミリア諸島最奥の島では。


「おか……姉ちゃん、来ちゃったよアイツら」

「あ、今間違えただろラーハム」

「ま、間違えてないもん! ラフーム兄さんだって間違える時あるじゃん!」

「そ、そうだっけなぁ?」

「……よし、あの島からアイツを連れてこい」

「えっと、アイツってホワイティアの五清白(ごせいはく)だとかってうるさい奴?」

「準備運動だ」

「えー? おか……姉さんが相手だと準備運動にすらならないでしょ」

「ああ! ほら、ラフーム兄さんも間違えた!」

「いつも言ってんだろ! 私は子どもが嫌いなんだ! お母さんなんて呼ぶんじゃねえよ! アンタ等二人とも、後で仕置きだ」

「う……ごめんなさいルシエ姉ちゃん」

「ごめん……ルシエ姉さん」


 竜人のラフームとラーハム、二人の兄妹は肩を落としながらルシエと呼ばれた女性の前から姿を消す。


「……来やがったか、クソ野郎が」

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