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第166話 乱暴な片付け方

「ほら、ほらほらほらァ! どう? 痛いでしょ?」

「んくッ! くはッ! あがッ!」


 カズキの時間停止により蓄積されたダメージが、マミの身体を襲う。


「ハァ、ハァ、ハァ。アンタ、悪趣味にも程があるわ」

「んー、それを可能にしているのが君じゃないの? 楽しいねぇ」


 マミに攻撃が効かない訳では無い。痛みは勿論伴う。だが、外傷はいとも簡単に治ってしまう。ほぼ無敵の身体に、拷問じみた攻撃は相性が悪いだろう。カズキの攻撃は精神的に蝕んでいく。


「ハァ、ハァ。き、効かんねんそんな攻撃」

「強がりにしては息が上がってるよ?」


 徐々に衰弱していく無傷の身体。


「なあアンタ。アンタは時間の女神に愛されとるって言うたな」

「そうだよ。僕はね、とーっても愛されているんだ。だからホーラは僕にこの力を与えてくれた」

「本当に愛されとるんか?」

「……言葉に気を付けてよ」


 楽し気な表情から一変して、カズキはマミを睨み付けた。


「愛されてない? じゃなかったら! こんな! 素晴らしい! 能力を! 与えて! くれる! 訳が無いんだよッ!!」


 言葉の合間合間にマミを蹴り続けていく。


「んぐぁ! ハァ、ハァ。じゃあ、なんで。アンタは時間を止める事しか、ハァ、ハァ。できひんのや、んくッ!」

「うるさいッ! 愛されていない君なんか、止める事すら出来ないじゃないか! 生意気を言うな!」


 いつしかカズキは時間を止める事無く、マミを蹴り続けていた。


「なあ、そろそろ気付いたらどうや? アンタも一緒なんやろ」

「何がだ! 僕は愛されている! ホーラ! ねぇ、ホーラ! 僕を愛しているよね!」

「アンタも過去に囚われたクチか。寂しい奴やな」

「何が寂しいんだ! 僕に同情するな! 僕は愛されている! ほら! こんなにも楽しく君を蹴れ――ッッッ!!??」


 カズキの右足がボロリと崩れ落ちていた。


「なんだ! なんで僕の足が!」

「ずーっと気付いてへんかったみたいやな。儂、分かったんや。なんでアンタに儂の毒が効かへんのか」


 カズキの右足に触れていたのは、リムだった。


「アンタ、体内に毒が回らん様に血液の循環を止めとったんやろ。その時間を止める力で。やけどな、儂の毒が強すぎたんや。毒の回りを遅らせる事に無意識に力を割いとったから、儂にはもう普通に蹴っとるだけやった。増してや冷静さも失って、このハゲが近付いとる事も分からんかった」

曖昧な領域(グレーゾーン)。これは()を有する生物全てから、色素(しきそ)を吸収するオレの十八番だよ。このまま触れ続ければ時期に身体全部の素を吸収する。それに色力(しきりょく)を発動する事も出来ない筈だ」

「は、離せッ! 離せ離せ!」

「グオァアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 突如、上空より飛来したドラドラが大きな口を開けてカズキに噛み付いた。

 惨い物だ。骨を噛み砕く音。微かに聞こえるカズキの悲鳴。ドラドラは躊躇う事無くカズキを噛み砕き、飲み込んでしまった。


 あまりにも唐突な終わりだった。


「んーイマイチね。アンタが素を吸収した所為で、味が質素だったワ」

「なあお前、すげー惨い事言ってるって分かってる?」

「ドラゴンの主食は生肉よ。ご主人様が良いって言うならアンタだって食べるワ」

「か、勘弁してもらいたいね」


 地面に残るカズキの血肉を見て、マミは考えていた。


「ん? どうした? 儂姫」

「なあ、なんでこんな子どもが色力を持って世界を滅ぼそうとしてるん?」

「なんでって言われてもなぁ。この世界ってそういうもんじゃ無いのか?」

「……二人とも愛を欲しがっとった。それってどういう事か分かるか?」

「生まれが悪かったんだろうな」

「……おかしいと思わん? 生まれた所が悪いだけで、まともに愛を受ける事もできひん。理不尽やと思わん? 子どもは親を選べへん。儂かてそうや、二人からちゃんと愛情を注がれたなんて微塵も思ってへん。けど、爺が居ってくれた」

「そういう事だろ」

「どういう事や」

「所詮、運が悪かったんだろうな」

「……運、か。それはちょっと乱暴やない?」

「優しく片付くなら人は死なないよ……」


 マミは府に落ちないまま、崩れ変わり果ててしまった屋敷を見つめていた。




――――暦刻の休息地にて。


「あーあ、散々な結果だね」

「彼らは所詮、統合者(インテグレーター)の駒に過ぎないよ。あの程度、いやあれほどの力を前に戦ったんだ。勇敢だと称えるべきじゃないかね?」

「スゴイ! 二人とも頑張った!」

「彼らにももっと力を付けて貰わないといけない。その為にも私達が導かなければならない。オスワルト、例のシステムは」

「もーんだいなし! って言っても一色だけじゃ起動できないじゃん。野に放っておいても動きやしないよ」

「だが、用心に越した事はありません。()()()が完成次第、起動システムとして内臓しておきなさい」

「あいあいさー!」


 再び出されたシステムという言葉。彼らは何を企んでいるのだろうか。

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