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南極Boyz

作者: 鮭太郎

 南極、それを聞くとあの日のあの時を思い出す。


 夏のある日、コンビニで親友と一緒にアイスを買い包装から取り出した。俺が買ったアイスは南極ペンギンアイス、俺が1番好きなアイスだ。夏になるとここら辺の店ならどこでも売っている安いアイスバーだ。だが、それが理由で好きなんじゃない。安い分、味に深みが無く、パッケージにはフルーツが描いてあるが実際には一切入ってい無い。では何故このアイスを買ったか、それはただ単に南極が好きだったからだ。


 南極、それは人類が最後に到達した神秘の大陸。大部分が分厚い氷床に覆われその下にはまだ人類が知らない未知の世界が広がっている。ロマン溢れるその魅惑の地に当時の俺は憧れていて、クラス中に南極の素晴らしさを説いていた。親友も俺が直々に南極の素晴らしさを教えた1人だ。


「知ってるか?南極は1961年の南極条約でどこの国の領土でも無くなったんだぜ。」


何時ものように知識を披露し、親友は「ふーん。」と相槌を打った。


「溶けてるよ。」


と、親友に指摘され慌てて食べた。いつものように乳脂肪分ゼロのコクの無い砂糖汁が口に広がる…そう思った。しかし、口に広がったのはリニューアルしたのか、いつもとは違いコクのありそしてしっかりとしたフルーツの味だった。ふと、親友のパッケージを見ると底には南極ペンギンアイスのライバル、北極しろくまバーと書いてあった。


「おい、なんで北極しろくまバーなんか買うんだよ!」


「いや、北極しろくまバーの方が美味しいから買っただけだけど。」


「南極ペンギンアイスはリニューアルして美味くなったんだぞ。それに俺達は南極ボーイズだろ!」


しかし親友は、


「何それ、南極ボーイズって。リニューアル…?」


俺は衝撃を受けた。昨日の俺達は南極ボーイズだなって言う話をもう忘れたのことに。


「あ、それ…」


「ん?…あっ当たりだっ⁉︎ヨッシャァァァァッ!!!」


 当時の南極ペンギンアイスの当たり棒はなんと抽選で南極観光ツアーが当たるという豪華なものだった。憧れの南極に行けるというのは俺が南極ペンギンアイスを食い続けてた理由の一つだった。しかし、さすが南極観光。抽選と言えども全く当たらなかった。それゆえ、俺は大いに喜んだ。そして、その夢への抽選券たる当たり棒を親友に見せつけた。


「どうだッ!良いだろ、これがまぼろしの南極ペンギンアイスの当たりだッ‼︎」


すると親友は冷めた目をしながら落ちたパッケージを指差した。


「いや、だからそれは北極しろくまバーだよ。」


落ちたパッケージにははっきりと商品名の“北極しろくまバー”と書いてあった。


 あの時ほど恥ずかしかった事は無かった。今でも南極と聞くとあの日の羞恥を思い出す。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 昔そういうアイスがあったのでしょうか。夢が膨らみますね。当たり棒引くとこくらいまでなら現実的にありうる程度の確率なのかもしれない。 よくわからんけど、なんかあこがれる、っていう感じが出て…
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