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ルビーアイ  作者: アゲハ
7/23

6話 放課後

正直、意外だった


龍斗のあんな顔を見た事が無い


加藤君とは知ってる仲


そんな事を言っていたが、あれ程(いか)れるのだ……


知ってる仲以上の友達


多分、親友だったのかも知れない


そう思うと、午後の勉強に身が入ら無かった








終業のチャイムが鳴った時、ほぼ同時といって良いタイミングで教室の戸が開く


ウチはソレに目もくれずに教科書を仕舞い込んで居た


だがスタスタと近寄る足音


ふと目を向けると、隣には笑顔の桜子が立って居る



「桜子? どしたん?」


「うん♪ 買い物行こーよ!」


「買い物?」



突然の誘いに理解が出来ず繰り返す


またも隣に現れる人影


それは修だ



「泉ぃー! 行こーぜ♪」



何度見てもイチイチ()()()い男だ


なんでこんな男と付き合っているのか疑問にすら思う


まあ、そんな事はどうでも良い



「何を買いに行くん?」


「何でもいーよ♪ とりま、外を歩きたかっただけ!」



桜子はそう言うとウチの腕を掴んでは、教室から連れ出そうとする



「チョイ待ってや! 教科書片付けな……」


「いーから、いーから♪」









拉致(らち)にも似た強制力でウチは校外へと連れ出され、気が付けば駅前へと足を運んで居た








「買い物って駅前でなん?」


「うん、そうだよ♪」



そう言った桜子は周りを見回した


そして表情を変えると走り出した


ウチは目だけを、そちらに向ける


ソコには男性が一人立っていた



「こっち、こっち♪」



その人に駆け寄ったと思われた後、彼の手を引きまた戻る


桜子の手を引かれた男性は龍斗だった



「あ……」



ウチはその言葉が口から出た


今朝、あんな事があったばかりなのに……


昼休みには気が付かなかった感情の揺れ


噂話に気を取られ、あの時はいつものように接していた


だけど今は違う


ウチに気を逸らす逃げ場は無く、彼もまた、チラチラと視線を掛ける


ウチはバツの悪さを感じていた








「春とはいってもまだ肌寒いじゃない? 2、3着くらい今の時期に丁度良い服が欲しーんだ!」



そう桜子はウチを含めた3人に言った



「修に選んで貰ったらえーやん?」



その言葉に桜子は



「修はセンス無いから♪」



そう、明るい声でバッサリと斬り捨てた



「そりゃねーぜ……」



ま、修の言いたい事も解る


やれやれ……


ウチが選ぶならそれでも良い


ただ、やはり……


龍斗が居るのは緊張する


ウチは極力、龍斗の顔を見ないようにショップへと入店した








あれやこれやと桜子に似合った服を探す


何着も試着しては取り替える


お気に入りが見つかって値段を見ると……


やはり不採用となった


結局、いまだ1着もカートに入れること無く時間が過ぎた時だった


新しい服に手を掛け、桜子に持って行く



「桜子♪ コレとかどうや?」



キョロキョロと周りを見回す



「アレ? 桜子?」



格子状のラック、その縦通路を抜け、通路が見渡せる様に横の通路を歩く


姿が見えない


どこやろ?


そう思った時だった


肩にポンと手が乗る


振り向くと、ソコには龍斗が居た



「なんかアイツら急用出来たとかで走って行っちまったよ……」


「そっか…… じゃ、しゃーないな……」


「まーな……」



ふと龍斗に目を向けた


彼はウチの視線を感じると目を()らす


2人で理由も無い買い物をしていてもしようが無い


解散を切り出そうとした時だった



「なぁ、泉…… 時間あるか?」



そう問い掛ける


別段、ウチには急用は無い


だからウチは



「構わんよ? 何かしたい事あるん?」



そう答えた


フッと和らぐ龍斗の顔



「じゃあよ、飯食(めしく)わねぇ……?」



食事の誘いか……


ウチはポケットに手を入れ携帯電話を取り出す


ポチリと電源スイッチを入れると時間は17:38を示して居た



「悪ぃ! 門限とかあったか!?」



彼は申し訳なさそうな顔を見せる



「大丈夫や♪ ウチ、門限ないもん! それにな……」


「ん?」


「んーーーー……」


「なに?」



一度言葉を濁したが、ソレに食い付いてしまった龍斗に再度()()()()()のは失礼に思えた



「ウチな、夜の9時までは家に帰っちゃならんのよ」



え? っと驚く彼



「何で!?」


「さあ、何でやろな…… まぁ、ウチはパパの言い付けが絶対やさかい……」


「仕事の関係とか?」


「ソレも解らへん…… 聞かんといて…… 解らんもんは解らん」


「そっか…… 悪かった」


()えんよ♪ で、どする?」



彼は少し迷いの有る表情を笑顔に戻して言った



「じゃ、行こ!」


「あいさ♪」



あ……


ウチ……


龍斗と普通に(しゃべ)れてる……


そっか、桜子か♪


この時間をくれる為に龍斗を呼んでくれたのかもなぁ……



(おーきに、桜子……)



そんな事を心で感謝し、龍斗と連れだってショップを出ては食事が出来る店を探す


見付けた店に入ると、どうでもいい事を笑いながら話した


帰る時間まで、本当に色々話した


告白を断った仲だなんて、周囲は気付かないだろう


そんな恋人同士の様に笑いながらただ、本当に楽しい時間が過ぎた

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