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ルビーアイ  作者: アゲハ
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3話 桜子

異様な足の重さに歩くのもしんどい……


原因は解っている


告白、か……


あんなん産まれて初めてやもん……


はぁ……


ウチは今まで吐いた溜息とは別の溜息をついた









校舎に入る



玄関で内履きに履き替えた所で後ろから急に抱きつかれた!?


とっさに



「きゃーーーーーーー!!」



と、叫ぶウチ



「うわ!! 驚かせないでよ!!」


「驚くのはこっちだし!!!」



まだ心臓が早鐘を打って痛い位だ


だが、もう声で解る


てか、こんな事するのは1人しか居ない


転校当初からスゴく仲良くしてくれている数少ない友人だ



桜子(サクラコ)! 勘弁してやーーー……」


「あはは! そんなに驚くとは思わなかったし♪」



全然反省の色が見えない……


そればかりか桜子は



「でさ、でさ……」



と切り返す



「ん?」


「龍斗、どーだったの!?」


「は!? ゲホッゲホッ…… ハァハァ…… あんた…… どこまで……!?」



急な問い掛けに息が出来ず咳き込む



「え?! 龍斗、神妙な顔して出てったからさ…… ついに告白かと?」










私は言葉を失った


転校当初からホントに勘の良い子だとは思っていたけど……


まさかココまでとは……



「んーーー…… まぁ、色々? みたいな?」



この場は、はぐらかすしかない



「あちゃーー! ダメかー! てか、なんでなんで?」


「……んーーー…… まぁ色々だってば……」



そう答えたウチは、つい周りを見てしまった


そんな顔を覗き込むように彼女は言った



「あ、そか…… 龍斗は皆のアイドル的な…… ね…… なるほど……」



周りを見ただけなのに……


ホント、勘が鋭すぎ……









でも、それだけじゃ無い


理由自体は他にもある



「それにさ、あんな事あったばっかやん…… ウチらだけワハハとはいけんよぉ……」



その理由を話したウチ


その言葉に視線を落とした桜子は



「そうだね……」



と答えた



「よー! 泉! 龍斗はどーだった!?」



不意に遠くから声を掛けられる


ウチは足音の聞こえる方向に目を向けた


そちらからは、よ♪っと手を上げた男性が近寄って来た


いつ見てもチャラそうな男だ


顔は悪くない、むしろ龍斗並みに良い、って言い方も失礼かな……


だって……



(オサム)…… アンタらカップルはどーしてそうも意思疎通してるわけなん!?」



ヤレヤレである



「また説明するん面倒やから桜子に聞き!」




説明嫌いなウチは桜子に全てをブン投げた


教室に足を向けた瞬間、桜子が手を差し出す


支えが必要な訳では無い


その手には3冊の本が握られていた



「まあ何はともあれ、気分転換も必要でしょ! 新しい小説持ってきたよ♪」



そう言う桜子はソレらをウチの前にチラつかせた


え!?


何!?


これって!?



「コレって、メッチャ読みたかったやつや! おーきに♪」



小説好きのウチには最強の3冊


桜子は自慢げに言葉を掛ける



「でしょー!!? まずはコレ! 【風と共に去りたかった】♪」


「コレ映画なったやつやん! 楽しみやー♪」


「そそ! 最後のね、田中が犯人なんだよ! メッチャ面白かった♪」


「うぉい!! なんでラスト言うん!?!?」



思いっきり肩を()()くウチ



「痛ったー!! ごめーーーん! つい♪」


「ついって…… 次のは言わんといてよ! で、お次は?」


「はいはい! んで、次はコレ!【パイレーツ・オブ・トリビアン ~雑学王に俺はなる~】♪」


「コレも知ってる! ヒャッホー♪」



天高らかに万歳♪


だが隣の修も覗き込んで口を出す



「お? コレってこの前俺も貸して貰った海賊雑学のヤツだよな? 最後の賞金100万円を田中が手に入れた時は鳥肌立ったぜ!!」



「お前もか!!! しかもまた田中!?」



こっちには容赦なく腹部にワンパンを()()込ませた


フゥと一息付き、ウチは2人を交互に(にら)んだ



「アンタら、マジキレるで……」



男女の顔に冷や汗が煌めく



「は、はい……」

「は、はい……」



「良いユニゾン謝罪や…… で、ラストは?」


「うん、次はね、【不思議の国のアリと巣】だよー♪」


「ベストセラーやん♪ じゃコレ借りるわ♪」



驚きの表情を見せる桜子



「え? 他のは?」


「ラスト知ってまで見たくないわ!」



顔を見合わせたカップル共は声を合わせて



「ですよねー…… アハハ……」



と、引き()る顔をウチに向けた


だが直後、その表情を笑顔に変えたのは桜子だ



「だって泉は大阪人だから、ツッコミ凄くて面白いのよ♪」





あのねぇ……





ん、大阪人?






私、大阪人なの?






大阪のどこ生まれだっけ?





大阪人だっけ……





そっか





大阪なんだ…… ね





ふと桜子に目を移した私は怪訝(けげん)そうな表情で、うつむく私の下から覗き込んで居た



「もしもし? 泉さん?」



あっ、と顔を上げたウチに心配そうな顔を見せる両者


ウチは目の前で大きく手を振る



「あ、うん、大丈夫!! 何でも無いん!!」



何だろう



今の違和感……



そして不安は……



でも2人は大切な友達



だから、これ以上の心配は掛けられない



理由を聞かれても困る



ウチ自身、何も解らない



言葉にも出来ない



だからウチは笑顔で2人に



「さて、教室行こーや♪」



そう、言った

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