13話 逃げる心、向き合う現実
頭が真っ白になった
解っている
これは逃避だ
現実とは思えない現実
あり得るわけも無いのだ、こんな事は……
そう言えば最近、物忘れが激しい
昨日、いや、2日前か……
どんな食事をしたのかすら思い出せない
理性が感覚を止める
忘れているだけだ
何を?
思い出せない
思い出したくも無い
頭の中に
ふと、たたずむ物
頭の中によぎった光景
それは昨日、桜並木で見た……
【胡桃の木】
何故だろう?
こんな時に思い出してしまうのは……
あの時が、一番幸せだったのかも知れない
目を瞑り、頭を振る
現実から逃げてはならない
こんな現実逃避をしても解決しない
そう強く思い、心を……
少しだけ整え……
ウチは目の前の現実に向き合う……
意識を戻す
心を取り戻す
ソコには、さっき見た
今も見ている光景
3本の線
3つのヒト
こ、これは……
あり得ない
本物…… だろうか?
いや、そんなまさか……
良く出来たイタズラ
では
無いように…… 感じる
リアル過ぎる
コレでは
リアル過ぎるよ……
皆を見渡す
龍斗が
6組の入り口、その戸に
手を掛けた
ガ……
躊躇、だろう
私だって
私なら
躊躇する……
正気では居られない
ガラ……
ガガガガガガラガラガラ……
戸が開く
二枚扉の片方
その片方の
全てが開いた
二枚扉が重なる
その、
ぶら下がる【ソレ】は
こちらを向いている
生徒?
生徒……
この学校の
制服だ
3人とも
いや、多分、もう
【そう】なっている【ソレ】は
3人では無く
むしろ
3体
決めつけたく無い
が……
どこかでそれを
心でそれを
【3体】だと認識した




