12話 見回り
気を取り直して藤田先生がフラフラしている西棟では無く、予定通り教室の立ち並ぶ東棟、三階に向かう事にした
階段を登る
登り慣れた階段なのに、これ程に暗いと、やはり不安になる
慎重に登った
内履きクツのゴム底が……
キュッ…… キュッ……
軋むような音を立てる
こうも暗く、音も無い
キュッ…… キュッ……
妙に耳障りな足元から響く不協和音
こんなに三階まで距離あったっけ?
怖さ、なのだろうか……
いや、もう二階は過ぎた
間もなく……
着いた、三階だ……
階段を登りきり、廊下に出る
三階は1年生の教室が並ぶ
その数、20クラス……
ホント無駄にデカい学校……
昼は誰かしら廊下に出ている
だから、だだっ広さを感じないのに……
今は真夜中
そう…… 生徒は居ない
奥にある1年20組……
暗がりによって見えないその先は……
異世界に繋がっている様な気すら持つ
ダメだ
落ち着かない……
早くまわって帰ろう……
長い廊下の先から目を離し、視線を3人の友達に向ける
一点を凝視してた
それはウチと同じ感情……
廊下の先の暗闇
その恐怖
こんな機会も無ければ、見る事は無い
これは、恐れ……
これは、怖れ?
畏れなのかも知れない
この闇に飲み込まれないように……
心を強くし、一歩、足を出す
ふと、我に戻る3人が同じく一歩
もう、大丈夫のようだ
キュッ……
キュッ……
キュッ……
キュッ……
4人の足音が響く
ただの見回りの様な物だ
1年1組を覗き込む
1年2組を覗き込む
3組を、そして4組を…… 覗き込む
気楽なものだ
探索という名の、ただの見回り
警備員がやってるのは、こんな事だろう
ただ、彼らと違うのは
ウチ達は
懐中電灯を持っていない
それだけの違いだ
でも、人を恐怖させる暗闇は
4人から言葉の一つも出させない
充分な程の圧力
仲間が居なければ……
もう……
帰りたい
5組……
6組を覗く
他の部屋の様に覗いた
だいぶ慣れた覗き方
流して覗いた感じの軽さ
でも……
違和感に足を止め……
もう一度
私は
覗いた
3本の線が
教室内に垂れ下がる
もう、見た
これは、もう見た
足を止める
隣を見る
ウチは口を開き、言った
「龍斗、修…… アンタ達…… また…?」
龍斗と修
2人は6組の教室内を見ていた
凝視してた
聞こえていないのか?
もう一度、声を掛ける瞬間だった
目に入った月明かり
違う
これは違う……
これは……
さっきの【ソレ】では無い……
このシルエット
アレは……
アレは……
【人】だ




