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第九話 幸福過ぎる王子

シンデレラを追いかけた王子は……

(『星空文庫』さんに『幸運な王子』というタイトルで掲載した作品を改題しました)

 舞踏会から逃げ出してしまったシンデレラを、王子は自ら馬に乗って追いかけた。

 途中、森の中で眠るオーロラ姫を発見し、思わず口づけすると、姫は目を覚ました。放って置くわけにもいかず、一旦城に連れて戻ろうと、姫を自分の後ろに乗せ、馬を走らせた。

 ところが今度は、毒リンゴを食べた白雪姫のひつぎをかついだ七人の小人こびとと遭遇し、驚いた小人が棺を落としてしまったため、白雪姫はのどに詰まった毒リンゴを吐き出して生き返った。これまた置き去りにできず、王子は二人の姫を馬に乗せ、自分は手綱を引いて城に戻った。

 城に帰ると、あろうことか二人の姫は言い争いを始めた。

「口づけされたってことは、王子さまはわたしが好きということよ。あなた、少しは遠慮しなさいよ」

「冗談じゃないわ。あなたは眠っていただけじゃない。わたしなんて死んでたのよ。王子さまは命の恩人なのよ。誰が他人に渡すもんですか」

「何よ。やる気?」

「やってやろうじゃない」

 あられもなく、つかみ合いの喧嘩けんかになった姫たちの横で、王子はオロオロするばかり。

 そこへ、自分を追いかけていたはずの王子がいっこうに姿を見せぬため、しびれを切らせたシンデレラが乗り込んで来た。

「ちょっとお、あんたたち、後から出てきてあたいの王子さまを盗らないでちょうだい。あたいの方が先約なのよ」

「ふん、あなたなんて本当のお姫さまでも何でもない、ただの庶民じゃないの」

「そうよそうよ。あなたの出る幕じゃないわ」

「何よ、偉そうに。あたいがどれだけ苦労してこのチャンスをつかんだと思ってんのよ」

 三つ巴の争いになっているところへ、城の奥の部屋から、さらに何人もの姫が現れた。

「ベッドにエンドウ豆があって眠れません。王子さまの横で眠らせてくださいな」

「体は親指ぐらいでも、王子さまへの愛はこの城よりも大きいですわ」

 中には、しゃべれないらしく、こんなプラカードをかかげた姫もいた。

【あなたのために、声を犠牲にして人間の姿になったのよ。責任とってちょうだい!】

 王子はどうしていいかわからなくなり、城を飛び出してしまった。

 行くあてもなく彷徨さまよっていると、突然、目の前に空飛ぶ舟が降りて来た。

「日本から来たかぐや姫です。一緒に月へ行きましょう。これが本当のハネムーンですわ」

 だが、王子が舟に乗り込もうとした時、姫たちが追い着き、一斉に叫んだ。

「逃がすもんですか!」

 ああ、過ぎたるは……。

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