表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

第十五話 とんでもないヤツ

莉緒が花粉症になった原因とは……

 三月始めのことである。莉緒りおは、突然たまらない目のかゆみを感じた。

 続けてクシャミが出た。それも、普段の「へくちん」というような可愛かわいらしいものではなく、「ぶえっくしょん!」という、おっさんのような激しいクシャミである。

 すぐに、ツーッと鼻水がれてきた。

(やだ。これって、もしかして)

 とりあえず、ティッシュで鼻をかんだが、あとからあとからめどなく鼻水があふれてくる。

「ぶ、ぶえっく、ぶえっくしょ、ぶえっくしょーん!」

(もう、何よ、これ。絶対、花粉症じゃん。ホント、やだ)

 鼻をかんでもかんでもキリがない。体内の水分が全部鼻水になってしまうんじゃないか、という不安を感じるぐらいだ。

 莉緒の勉強部屋にある可愛いカバーのティッシュボックスは、たちまちからになった。

(まだ止まんないよう。早く新しいの、もらってこなきゃ)

 階段を降りる途中で、一階から母親の激しいクシャミが聞こえてきた。

「ぶえっくしょん! こんちくしょーめ!」

(やだ。おっさんみたい。でも、ママも花粉症だったっけ?)

 続けて、鼻をかむ音がした。

「ねえ、ママ、ティッシュの新しいのちょうだ、い、っくしょん!」

「そこに、あるから、勝手に持っていっていい、わ、っくしょん! こんちくしょーめ!」

「ママ、ママ、こんちくしょーめって言うのは、よして、よ、っくしょん! ふうっ。でも、ママって花粉症だったっけ、っくしょん!」

「違うわ。急によ、っくしょん! 何でも、今年は特に飛散量ひさんりょうが多いんですって、ぶえっくしょん! こんちくしょーめ!」

 再び母親のお下品なスラングを注意しようとした莉緒は、リビングから流れるテレビのニュースに耳をそばだてた。

《気象庁の発表では、何故これほど急激に花粉が飛散し始めたのか、原因不明とのことです。次のニュース。国有林の中に無断で立ち入り、不審な行動をしていた男が逮捕されました。自称、十三代目花咲はなさかじいさんと名乗るこの男は、灰色の粉のようなものを杉の木にいていました。調べに対し男は、『すまん、ちょっと時期と場所を間違えたようじゃ』と、意味不明の供述きょうじゅつをしている、とのことです》

 思わず、莉緒は叫んでいた。

「こんちくしょーめ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ