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第十四話 死神さん、こんにちは

不慮の事故で死んでしまった東海林の前に現れたのは……

 こんなに呆気あっけなく自分が死んでしまうなんて、東海林しょうじは思ってもみなかった。ましてや、道に落ちていたバナナの皮ですべってころんだのが死因だなんて。

 だが、目の前には、倒れたままピクリとも動かない自分がおり、一方では、フワフワ浮かびながらそれを見ている自分がいるのだ。

「ウソだろう。こんなバカな死に方があるもんか!」

 別に、誰かに向かって言ったわけではないが、すぐそばから返事がきた。

「死に方にバカも利口りこうもあるまい」

 東海林が声のした方を見ると、大きな草刈り鎌を持ち、スッポリと頭からフードをかぶったドクロが立っていた。

「えーっと、あんまりベタなんで聞くのも恥ずかしいんだけど、あんた死神かい?」

「ベタで悪いが、死神だ」

「まあ、この際だから、いいや。それより、なんでおれが死ななきゃならないんだよ!」

「寿命だな」

「だって、まだ若いのに。結婚もしていないのに」

「そんなことは関係ない。若かろうが、年寄りだろうが、大富豪だろうが、貧乏人だろうが、死ぬ時は死ぬのだ。こんな公平な話はないだろう」

「いやいや、それこそ不公平じゃないか。世の中には、金持ちで美人と結婚して長生きするジジイもいるのに、なんでおれが」

「それは違うな。生きている間に何があろうと関係ない。命あるものはすべて、いずれ死すべき定めなのだ」

「そんなの不条理だ!」

「まあ聞け。おまえは元々この世にいなかったはずだ。つまり、元に戻るだけだ」

「いやだいやだ。やりたいことがいっぱいあるのに。美味おいしいものも食べたかったのに。女の子にモテたかったのに。いやだ、絶対にいやだ!」

「やれやれ、聞き分けのないやつめ。ジョージつかさ、おまえの寿命はきたのだ!」

「ん? ジョージってなんだよ。おれは東海林司だ」

「えっ、ちょっと待て」

 死神は懐から黒い手帳を出し、読み始めた。

「えーと、本日の死亡予定者は、ジョージ司、日系三世、八十八歳、ってか」

「おいおい、まさか間違いなのか。冗談じゃないぞ!」

「うーん、すまん。名簿を見間違えたようだ。仕方ない、すぐに生き返らせよう」

「やったあ、バンザイ! 生きててよかった!」

 飛び回る東海林を、死神が骨ばかりの手でつかんだ。

「これっ。ジッとしないと、よみがえらせることができないぞ。よしよし、大人しくなったな。だが、いいか、これだけは忘れるな。生き返ったとしても、命は無限ではないぞ。いつかは、わしが迎えに来るのだ。その時後悔せぬよう、精一杯生きるのだ。決して、命を粗末そまつにするなよ。さらばじゃ!」

「ありがとう、死神! あれっ、誰もいないや」

 東海林は生き返った。

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