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第十二話 セカンドシーズン

あれから一年、新たなシーズンが始まり……

 あのまわしい事件から一年。

 両方のほほにコブのあるじいさんは、自宅の庭で一心不乱にダンスの練習にはげんでいた。

(このコブを取ってもらうには、オニたちが感心するような踊りを見せるしかない。だが、隣の爺さんがやったようなのは、もはや時代遅れだ。見ておれ。わしが最新のヒップホップダンスを身につけたあかつきには、どんな気難しいオニだって脱帽だつぼうし、両方のコブをいっぺんに取ってくれるはずじゃ)

「おお、元気そうじゃないか」

 そう言って庭に入って来たのは、その隣の爺さんだった。頬のコブがなくなって以来、すっかり自分の容姿ようしに自信過剰となり、年甲斐としがいもなく日サロで真っ黒になった顔にサングラスをかけていた。ジムにも通っているらしく、アロハシャツの前をワザとはだけて、これ見よがしにシックスパックの腹筋をさらしている。

 隣の爺さんは自分の肉体の若さを充分に見せつけてから、気取ったポーズでニッコリ笑い、不自然なほど白い歯を見せた。

 フタコブの爺さんは、みるみる不機嫌ふきげんになった。

「ふん、若作りしおって」

「いやいや、あんたほどじゃないさ。ダンスも随分上達したようじゃないか」

「ああ。自慢ではないが、その辺のヘナチョコな若者には負けん。首尾よくオニどもにコブを取ってもらったら、天下一舞踏会てんかいちぶとうかいに挑戦するつもりじゃ」

 それを聞いた隣の爺さんは、皮肉な笑みを浮かべ、あらぬ方に向かってつぶやいた。

「なるほど、サードシーズンへの伏線か」

「え、なんじゃと?」

「あ、いやいや、独り言さ。ところで、これはウワサだが、森のオニたちに政権交代があって、新たに選ばれたボスは、踊りが大嫌いらしいぞ」

「そんなバカな。それじゃ、わしのコブはどうなる?」

 隣の爺さんは周囲を見回し、声をひそめた。

「良かったら、知り合いのドクターを紹介するよ」

 フタコブの爺さんが激しく首を振ったため、コブがブルン、ブルンと揺れた。

「バカなことを言うな! そんなルール違反をすれば、ファーストシーズンからのファンが離れてしまう。ええい、ここで悩んでいても始まらん。当たって砕けろじゃ」

直談判じかだんぱんに行くのか。だが、気をつけろよ。オニたちも、以前よりはパワーアップしているからな。なんなら、助太刀すけだちしてやろうか?」

 だが、フタコブの爺さんは、ニヤリと不敵ふてきな笑みを浮かべた。

「心配には及ばん。ダンスのキレを良くするため、武術の修行もしたのじゃ。オニどもが手荒なマネをするようなら、わしの遊星飢狼拳ゆうせいがろうけんを一発お見舞いしてくれるわ。はーっはっはっはーっ!」

 こうして、二人の爺さんの新たな冒険が始まった、とさ。

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