閑話休題
この世界に来てようやく1日が過ぎ、朝を迎えた。
昨晩はなんやかんや、ルビーが復帰祝いと称し飲み会を催してくれた。
そこにはビールのような発泡酒やワインなど果実酒が目白押しだった。
魔族の宴というから正直グロテスク系の料理が出てくると想像していた。目玉スープとか生き血のワインとか、稚拙なイメージではあるが。
だが、実際に出て来た料理はチーズみたいなおつまみ。特段お腹が空いた訳ではなかったが、チーズもどきは美味しかった。
イメージ通りの世界でないことを感謝した。イメージで作られた世界なら間違いなくグロテスクな料理になっている。
グロ耐性はあるがノーマルな人間の精神なので無理です。
酒に関しては飲みたかったが自分の容姿に臆して飲めなかった。世界が違うし元はどうやら大人だったようだし何より中身はアラサー女子だから全然イケるはずなんだけど。
道徳観念のしっかりした国に生まれたため変に真面目な私。だれに咎められるわけでもないが良心が傷んだ。ということでひたすらに果実ジュースを飲み一夜を明かした。
大きくなったらきっと飲んでやる。
ルビーランスはひたすら飲んで床で寝てしまった。白夜も顔色をかえることなく飲み続けていた。私が気がついた時にはいなかったから自身の部屋で寝てるのか、おそらくどこかで仕事をしているような気がする。
とりあえず2人とも酒豪だった。
1番驚いたのは2人以外にも魔人がいたことであった。
いや、いるとは思っていたけど実際会えるとは思わなかった。
白夜に聞いた話では魔王に傅く魔人魔族はその種族ごとに領土があり、そこを治める長が私の直属の配下らしい。その領土の全てに君臨するのが私、魔王さまである。
魔王の直轄地にて政が進むため基本的に有力者はこの場所に集約されていたようだ。
一族の長が1人で働きに来るわけもなく数人ずつ選ばれた部下が付き従っていたとのこと。
もちろんそれ以外にもこの居城には魔人や魔族がいるみたいなんだが、私の魔王という立場のためか私自身の前に現れることは少なかった。
もしそうなら実にもったいない話しである。魔人とは美形ぞろいなのかお目にかかった人たちはみな美しかった。上位の者ほど美しいのだろうか、確かに白夜とルビーは群を抜いていた。
きっとまだまだ見たこともないようなイケメンがいるに違いない。可愛い女子もいるに違いない好奇心がムクムクと顔を出す。
よし、決めた。
私が魔王として君臨するならば必ず全てのひとを目通しする。あとで白夜やルビーの配下に会いに行こう。
嫌がられても諦めない。魔王さまの命令は絶対。そこは魔王さまの権力を行使してやる。
ちなみにおそらく私の成長形態もなかなかのものだと推測する。今でこそ8歳児だがすでに恐ろしく可愛いのだ。自分で言うのもあれだが将来が楽しみである。
以前の私とは違いすぎて未だに実感が持てないがせっかく美貌を手にしたのだから楽しもう。
体といえば日本の私の体はどうなっているのだろうか。始めは夢だと思っていたからなにも考えてなかったが、体ごと来たわけではなさそうだし。
白夜やルビーが魂と言っていたから、魂のみでこちらの世界に来たらしい。
魂のないあちらの私の体はやはり死んでしまっているのだろうか。
当直中の仮眠の最中であったはず。過労死として認められるのか突然死か。自分のことなのにやたら客観的にみえる。
寝ている間に死んでしまうとはずいぶん幸せだがやり残したことがなかったわけでもない。
両親も健在だったし別れを言えなかったことはきっと今後も心に残り続けるだろう。
ただ、どうにもこちらの世界が私が元いた世界だったようだし、残りの人生は悔いのないように精一杯楽しむとしよう。
しかし楽しむためには私はもっとこちらの世界を理解する必要がある。魔法しかり。魔王の役割や世界の仕組みしかり。
もちろん楽しむだけでなく、王である以上は国を守り治める責任がある。
そのためにも私たちに敵対するものや危険は知り置く必要があった。
昨日聞いていた白夜の魔術講義は分かりやすかったがまだ実際にはちゃんと使えてないので修練し魔術が使用できるようにしたい。
ただどうにも魔術とは無縁の世界にいたためまだ感覚がわからない。
無意識では使えたし言霊の威力は理解したが…
とりあえず知らないふりしてルビーにも聞いてみよう。
更新が遅くなりました。4月まではわりと遅いですが最後まで続けていきたいです。