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報告

魔王の遺体が安置されているという不気味な島。

そこより発生する霧は濃く島全体を白く覆っている。近年では覆うどころか、島を超え海の上を這うように広がり隣接する大陸にまで届くこともあった。


大陸にある王国の一つ、リリアム王国は地理的に最も白霧が迫る場所に在していた。


「霧が止まっただと?どういうことだ。」


茶色の髭が特徴的なユラー侯爵はリリアムの首都にある執政室にて報告を受けた。


「はい。もっとも彼の国に近いユリウス伯爵領よりそう報告があがりました。」

文官の1人が報告書を差し出す。


「霧については今後どうにかしなければ我が国を覆い隠すことは間違いなかった。それが7日前より拡大することなく、むしろ消退しているとは。」

報告書を読みながらユラーは霧の発生について考える。


「あの霧は魔王が倒れた後より発生したと聞く。魔王の亡骸が消失したのだろうか。」

「あるいはそうかもしれません。今後さらに調査し対応を練る必要があるかと思います。」


「また厄介な。彼の地はどの国とっても厄災に他ならぬ。調査と言えどもどうしたらよいか…。

ストラウス君、君はどう思う?」

「は。彼の国は魔の国です。人族のみでは何かと調査は難しいと。ですのでまずは我が国に友好的(・・・)な亜人に情報得るべきかと。」

ストラウスと呼ばれた金髪碧眼の文官はそう言って新たにユラーに書類を手渡す。

「これは。」

ユラーは書類に目をやりしばし考えこむ。


「…なるほど。亜人らは我らより魔に近い存在。何かと情報は得やすいか。」

「さらに、冒険者ギルドにも情報を流すのが良いかと。いずれこの情報は他者の知ることとなりますし、ならば早々に流して動けるよう整えるのも手かと思います。」

ユラーはストラウスの考えを理解する。

「うむ。そうだな。情報を得られなければ対策の立てようがない。早速王国支部長を呼べ。」

「はっ」

ストラウスは拝礼し部下を引き連れドアから出ていった。

1人残されたユラーは再び考えこむ。


「亡骸が消えたのであれば新たな魔王の誕生を迎える可能性があるな。幼い魔王ならば手の打ちようもある。その場合どの国より、いや誰よりも早く手に入れねば。」

ストラウスから渡された書類に再度目をやる。

「まったく、あの漆黒の魔王は死してなお誰よりも厄災となるな。」

ユラーの頭には、いや誰の頭にも死んだ魔王自体が復活するなど夢にも思わなかった。

魂自体の消失が確認された魔王。100年前に滅んだ最悪の厄災。

魔王の存在するこの世界において純然と繰り返し起こる魔王同士の戦いに敗れてなお世界に影響を与える存在は長い歴史上存在しなかった。

あの漆黒の魔王は特殊である。誰もが認識しているのに、誰もがその復活を考えることはなかった。

次回はまた主人公視点です

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