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女が好きで、何が悪いッ!?  作者: 夕焼けに憧れる本の虫


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ずっと一緒。


 「……好きだよ」


「え、なに?」


 大好きだよ、依吹ちゃん。


 私の声は、喧騒に搔き消えるくらいにはか細い。


「ううん。お仕事お疲れ様。もう少しだね」


 それに、今更わざわざ伝えなくても、なんて。


 私の言葉に、依吹ちゃんは向日葵のように笑って、親指を立てた。


「おぅよ、こちとら生徒会ィ! 仕事は完璧、笑顔は素敵! なんでもござれな生徒会っ! だからな」


「うんっ、そうだね」


 2日あった文化祭も、もう終盤。

 音楽と喧騒の響く廊下は、もう夕日の色が濃くなってきている。


 「最後のひと仕事、行くぞ!」と勢い良く歩き始めた依吹ちゃんを、小走りで追いかけた。



◇◇◇



 「私、生徒会長に立候補しよっかな」


「えっ、依吹ちゃん、生徒会長に……?!」


「うん。変かな」


「ぜっ、全然変じゃないよー! だけど、すごいなって」


 やっぱりすごいなって思った。

 だけど、私とは疎遠になっちゃいそうだなって、怖くもなった。


 だって、生徒会の中でも、会長さんだよ……?

 うちの生徒会は、女子校だからか特に人気投票になりやすいし、人気の理由も、見た目とか面白さとかそんなのだし……だけど、依吹ちゃんにはそんなの関係ないんだろうな、って。

 依吹ちゃんなら、そんな壁も軽々飛び越えて、本当に会長さんになっちゃうんだろうなって、思った。

 私には無縁な世界だなって。

 私には出来ないことだなって。


「ね、だから、瑠奈も一緒にやろう!」


「えっ、私?」


 だから、この言葉を聞いた時、本当にびっくりして、信じられなくて、だけど心から嬉しくて、


「ちょ、ちょっと、何で泣くのさー?!」


「ごめんね、依吹ちゃん」


 慌てて私の涙を拭ってくれた依吹ちゃんに、笑って言ったの。


「依吹ちゃんについていけるように頑張るから、だから、これからもよろしくね」



◇◇◇



 「どうしたの、ぼーっとして」


「えっ? あっ、ううん、ごめんね。ちょっと昔のこと思い出しちゃって」


「あー、あるよね。火なんか見てると、なんか色々考えちゃったり」


 キャンプファイアを囲んで思い思いに踊るみんなをただ見ているだけのはずなのに、妙な緊張を感じる。

 いつもと同じで、何かが違う。

 小さく息を吸う音が聞こえ、依吹ちゃんは口を開く。


「瑠奈はさ、生徒会書記になって良かった?」


「えっ、……うん。どうして?」


 驚いて依吹ちゃんの方を見るけど、依吹ちゃんは、断固としてこっちを見ない。


「いや、その……本当?」


「うん。依吹ちゃんといられて、色んなお仕事が出来て、とっても楽しかった」


「きつかったり、しない?」


 やっと私の方を向き、目を合わせた依吹ちゃんは、いつになく自信がなさそうに言う。


「慣れないことは多いけど、でもやっぱり……楽しいのが1番かな」


「本当?」


「うん、本当だよ」


「……良かった」


 私の言葉を聞いた依吹ちゃんは、小さく、でも安心したように笑った。


「依吹ちゃ、」


「会長ー! こっち来て踊んなよー!」


 キャンプファイアのすぐ近くで、両手を振っている人たちが見える。


「はーい! 行く行く!」


 立ち上がって叫び、こっちを振り向いた依吹ちゃんは、「呼ばれちゃった。行ってくるね」と小さく舌を出した。


「待って!」


「えっ?」


 驚いた表情で振り返った依吹ちゃんの、思いのほか強く掴んでしまった腕をそっと放す。


「……どうしたの?」


「依吹ちゃん、生徒会に誘ってくれてありがとう。これからも……よろしくね!」


 恥ずかしいけど、今更だけど、伝えなくていい言葉なんてないから。


「おぅ」


 照れたように笑った依吹ちゃんは、その照れを隠すみたいに、勢いよく走って行く。

 やっぱり依吹ちゃんは、私には出来ないことが出来る。

 あんな風にみんなとじゃれ合うことだって、私には到底出来ることじゃない。


「瑠奈ー! 瑠奈は来ないの、だってさー!」


「瑠奈ちゃんもおいでよー! 一緒に踊ろー!」


 だけど、依吹ちゃんと一緒なら。


「わ、私っ?」


「うん! はやくー! 次の曲始まっちゃうよー!」


「い、今いくー!」


 私だって、強くなれるかも知れない。


「お疲れ様、瑠奈」


 駆け出した私を走って迎えてくれた依吹ちゃんが、私の手を取った。


「ありがとう、依吹ちゃん」


 依吹ちゃんの手を、そっと握り返す。


「あれ、2人なんかいい感じ?」


 周りから囃し立てられて、顔が燃えるように熱くなる。


「い、依吹ちゃん……」


「良いじゃん。2人で踊りたいんだからさ」


 向日葵のような笑顔になった後、足を絡ませたのか、「おっと、」と私の方に倒れ込んでくる。


「だ、だいじょ——」


「好きだよ、瑠奈」


 聞き間違いかと思った。

 だけど、地面に手を突いた後も、いたずらっ子みたいに笑って、心配するみんなにピースサインを出す依吹ちゃんを見ても、耳許で囁かれた言葉と、心臓の鼓動は消えていきそうになかった。


 だから、


「依吹ちゃん、私、」


 今度こそ伝えるんだ。


「どうしたの?」


 結局後出しになっちゃったけど。


「ずっと、一緒だからね」


 大好きだよ。

 みんなには聞こえないように、そっと囁く。


 真っ赤になって固まった依吹ちゃんの手を取って、きゅっと握る。

 次の曲が、静かに流れ始めた。

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