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北陸クトゥルフ紀行(仮)  作者: 大滝龍司
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四 日常への回帰


「おはよう」


「はよぅ。……ひでぇツラだな、また例の発作か」


 心配そうな坂井に対し、俺は笑顔で首を横に振った。


「いいや、つい夜更かししてしまった。なにしろ嬉しくてな」


「病気が治っても治らなくても睡眠不足は変わってねーじゃねぇか」


 呆れたような口調だが、坂井の顔も嬉しそうだ。こいつは本当に良い奴だと、俺はつくづく思った。


 理渡から催眠暗示を施されてから数日。その間、俺の夜間恐怖症はすっかり鳴りを潜めていた。若干の不安を感じる程度の後遺症はあるものの、以前のような発狂寸前の地獄と比べれば天と地ほども違う。俺はまさに、生まれ変わったような気持ちで今を生きていた。


「第二の人生というのは、こういう気分を言うんだろうな」


「おおげさな奴め。これで論文地獄へおかえりなさいだ、ざまあみろ」


「今なら何だって素晴らしいものに思えるよ」


「じゃあ俺の分もやってもらおっかなぁ? んんー?」


「ああ、こっちのが終わればな」


 などと馬鹿なやりとりを笑って交わす。それだけのことが、無性に楽しい。


 たっぷりの睡眠と、憂いの無い生活。健康であることが、これほど素晴らしいとは。


 灰色に塗り潰された人生に、再び色彩が戻ってきた。


 夏以来止まっていた俺の時計は、ようやく動き始めたのだ。



 ◇



 そうして大学四年の夏休み終盤という、多忙な時期に復帰してからしばらく経った頃。


 研究室で窓の外をぼんやり眺めながら、在庫を絶滅させるべく、いつものようにコーヒー粉とお湯をかき混ぜていると、昼食を終えた坂井が帰ってきた。


「おかえり」


「ただいま。何見てんの」


「いや。工学部棟、いつになったら元通りになるんだろうな、と」


 中庭を挟んで向かい側の一号館、通称工学部棟には人の気配がまったくなかった。そして一階のある区画は、今もブルーシートで覆われており、その向こうを窺い知ることができない。


「現場検証が終わるまでだろうよ。二学期の開始までに、なんとかしてもらわないと、工学部のやつら悲惨だよなぁ」


「そうだな……」


 事件以来、工学部棟は閉鎖され、警察関係者以外の立ち入りが制限されている。


 あのブルーシートに覆われた区画に、事件現場である小さな実験室がある。あった、と過去形で語るべきか。坂井によると、原型を留めないほど破壊しつくされているらしい。


 記憶が消えた今では、かつて知っていただろう事件当時の状況について、まったく思い出すことができない。事件にまつわる記憶は全て忘れ去ったらしく、以前は知っていた、という認識しか残っていない。それがどうにも不思議で、記憶喪失とはこういう感じなのかと、むずがゆさのような割り切れなさが脳髄に浮かんでいた。


 俺の視線はなんとはなしに、工学部棟の壁面から下の中庭へと落ちる。


 夏休み中ということもあって、今はタバコ休憩をする学生や教員の姿も見えない。寂しいものだ、と思っていると。


「……ん?」


 視界の端に、どこかで見たような姿が映った。工学部棟の、本館側通路とは反対にある裏の出入り口前に、白い服の女がいる。


 白いつば広帽に、長い黒髪。


 まさか。


 俺は一口もつけてないコーヒーカップを机に置き、飛び出すような早足で研究室の外へと向かった。



「理渡」


 息の乱れを正してから声をかける。


 見間違いではなく、それは確かに鶴来で会った女であった。


 遠目でも判断できた特徴的な帽子は、これから屋内に入ろうとしたためか、今はお腹の前で手に掴まれている。ゆったりとした白のシャツ(ブラウスというやつだろうか?)とスカート……いやズボンか? 女性物はよくわからないが、とにかく、相変わらず上下とも白い出で立ちをしていた。


 理渡のほうでもこちらに気づく。左半分の顔にある大きな目が、少しだけ見開かれた。


「真舘さん」


「見かけたもんだから。なんだ、やっぱりうちの学生だったのか」


「やっぱり……?」


「ああ、いや、なんでもない」


 理渡がうちの大学の学生なのかどうか、件の仕事がイタズラなのかどうかも含めて気になっていた。などと本人を前にして言えるわけがない。


「ここにいるってことは、所属は理学部か工学部なのか?」


「いいえ。ここへは、用があって」


「用?」


「ええ。でも、少し困っていて」


 理渡は工学部棟の裏出入り口を見る。


「今は閉鎖されている。少なくとも夏休みの間は、中に入るのは無理だろう」


「そうですか」


 残念。と理渡は呟き、工学部棟の壁際に沿って歩き出した。


 俺もその後に続いて歩く。


「真舘さん。その後、どうかしら」


「すっかり良くなった。あんたのおかげだ、それで、お礼を言いたくて」


「どこか、ぐあいの悪いところは?」


「全然ない。強いて言うなら、治ったおかげで卒論地獄に引き戻されたぐらいかな」


 冗談はつまらなかったのか、理渡は「そう」とだけしか言ってくれなかった。


「……ここ」


 やがて、ある場所の前で足が止まる。


 ブルーシートで覆われ、更にその周りに立ち入り禁止のバリケードが築かれた区画を見やる理渡に、俺は恐る恐る声をかけた。


「……なあ、用ってのは、ここにか?」


「ええ」


 そう応えたのち、しばらく理渡は無言でその場に立ち尽くしていた。


 俺はいたたまれない心持ちだった。この場所。このブルーシート一枚隔てた向こうにあるのは……。


「この部屋は、何をするところだったの?」


 唐突な問いに、俺はすぐ答えることができなかった。


「ここは……」言いかけて、気づく。理渡が過去形を用いたことに。「……知っているのか、ここだと」


 理渡は、沈黙で答えた。


「……ここは、工学部の実験室だ。事件の後、修復工事をする予定だと聞いているが、本当かどうかは知らない。俺は違う学科だから……」


「事件の前は、どうだったの?」


 理渡はこちらを振り返らない。


 その問い詰めるような物言いに、俺の内心は穏やかではなかった。


 こいつは、何を聞こうとしている……?


「……第二実験室。具体的に何をするための部屋なのかは知らないが、たぶん実験とか、作業とか、あとは物置代わりに使われていたんじゃないかな。小さい部屋だし、けっこう汚かったから、こういうところには精密機械を置かない」


「事件が起こる直前に、誰が何をしていたかは知っているかしら」


「ああ、ええと、確か……」そこまで言いかけて、俺は今の自分の発言に疑問を持った。「……いや、わからん。知っているような気がしたんだが……」


 言い訳のように口の中で呟くと、理渡がこちらを振り向き、目を細めて俺を見た。


「……そう。それが原因なの」


「原因?」


「真舘さん」その声は、分厚い刃物のように固く鋭かった。「行きましょう」


 理渡は俺の手首を取った。氷のように冷たい体温が伝わってくる。


 そのまま踵を返し、来た道を戻りはじめた。手首を掴まれている俺も、それに続く。


「お、おい」


 振りほどこうと思えば、簡単に払いのけられただろう。その程度の力しかない理渡の手を掴まれたままにしたのは、さしてそうする理由が無かったのと、何となく、言うことを聞いたほうが良さそうだと思ったからだ。


 工学部棟を離れ、中庭の反対側まで到達したところで、理渡は手を離した。


「いったい、どうしたんだ?」


 理渡はまた返事をしない。


 ほんの数秒ほどの間を置いて、ようやく口を開いた。


「真舘さん。あなたはもう、あそこには近寄らないほうがいいわ」


「近寄るなって……。なんだ、悪霊でもいたのか?」


「……そうね。とてもとても、恐ろしいのがいました」


「それ冗談だろ」


「ええ冗談です」


 明らかに本気の口調ではなかったが、しかし、からかっている様子でもなかった。


「なあ。もしかしてそれは、俺の記憶と関係が……」


 理渡は、人差し指で俺の口をふさいだ。


「それ以上は、黙っていましょう。せっかく、忘れられたのだから」


「あ……う……」


「大丈夫。けれど、気をつけて。私が思っていたより、あなたはずっと深いところに関わっていたのかもしれない。あの場所だけじゃなく、建物全体にも近づかないようにして」


「……思い出すかも、しれないのか」


「万が一にも、ということはあるわ。きっと、そうはならないだろうけれど」


 理渡は目を伏せた。


「恐らくあなたは、ただの目撃者ではなかった。時間をかけて、何らかの関与をしていた。そうした記憶まで封じたのだとしたら、思い出すきっかけは多くなる。けれど、あえて踏み込もうとしない限り、要の記憶が戻ることはない」


「何故だ」


「ここにはもういないから」


 理渡の声は確信めいたもので構成されていた。


 ここには、いない。


 なにが、いないのか。


「どこまで思い出したところで、それそのものがなければ、きっと、決定的な記憶までは辿りつけない。それでも、危険性は高くなる。だから、真舘さん、あれに近づいては駄目」


 有無を言わさぬ物言いに、俺は頷くしかなかった。


 頷きを見て、理渡は後ろを、工学部棟を振り返る。


 ……俺は、何かに関わっていた。その何かが、事件と関係している?


 そう考えた時、怖気のようなものを感じた。


 俺は事件当日、自分の研究室で寝泊りしていた。卒論に必要な実験の都合で、一晩そこで過ごす必要があったからだ。そして翌朝、友人たちを訪ねに隣の工学部棟へ赴き、第一発見者となった。記憶はほとんど残っていないが、そういうことだったらしい。


 だが、事件が起きる前の実験室が、どんな状態だったのか。その記憶すら封じられてしまったということは。あの事件は偶発的、通り魔的なものではなく、もっと前から兆候があったということになる。


 あそこで、何が起きていた?


 俺は、何に関わっていた?


 そして。そして理渡は、なぜそれを探るようなことをしている?


「……用ってのは、『あの部屋』だったのか?」


「…………」


「あの事件と関係があるのか?」


 理渡は答えてくれない。


 その大きな瞳は俺を見てはおらず、なにかを思案するかのように、この世界ではないどこかを見ていた。


「理渡」


 名前を呼んでようやく、焦点が俺に向けられる。


「あんたが何をしようとしてるのかは分からない。俺が口出しして良いことじゃないのかもしれない。だが、俺が関わっていたことなら、俺は、あんたの手助けをしたいと思っている」


「あら」理渡の口元に、ほんのりと意地の悪い笑みが零れる。「私、真舘さんには嫌われていると、思っていたのだけれど」


「胡散臭いと思っているのは、今も変わらない。だけどな、それを差し引いても、あんたには助けられたんだ。その分の恩返しぐらいはするさ」


 理渡がいなければ、今も俺の人生は滅茶苦茶だったはずだ。治る見込みのない症状を、手品のように消してもらった。あの地獄の苦しみから解放してもらった。言葉のお礼をいくら並べ立てても、受けた恩には報いれないだろう。


「義理堅い人」


 理渡は、今度は穏やかに微笑む。


「でも、お気持ちだけ、頂きます。あなたが考えているように、さして問題がある話ではありませんから」


「にべもない。警察の真似事をしているのなら、ここに参考人がいるんだぞ。協力するくらい、なんてことは無い」


「いいえ。あなたはむしろ、事件の被害者と言って良い人でしょう? これ以上、苦しませるわけには、いきません。あなたは、あなたの人生を生きなければならない。辛い記憶を忘れて、自分の道を、歩まなければ」


 そう言うと、理渡は帽子をつまんだ手を、俺の頭へ伸ばした。


 広いつばによって視界が遮られる。香水か何かの、花のような香りが鼻をくすぐった。


「もう、私にも会わないほうが良いでしょう。さようなら」


「待ってくれ。俺は、あんたに礼がしたいだけなんだ。あんたのやってることに関わっちゃいけないのなら、他のことでも……」


 不意に、俺の頭に被せられた帽子から、理渡の手の力が消えた。


 手を離して、去ろうというのか。追いかけようと、俺は帽子を脱ぎ、そして。


「……理渡?」


 理渡の姿を、どこにも見つけられぬまま。


 広い中庭にいるのは、俺ただ一人だけだった。



「おかえり。どしたよ」


 研究室に戻るなり、坂井がいつもの調子でそう言ってきた。


「いや……知り合いがいてな」


「工学部のほうに?」


「……何故わかった」


 今しがた不可思議な体験をしてきた直後だったので、俺は、坂井もまた人知を超えたことを言い出したのではないかと動揺した。


「そこの窓から見えたぜぇ」


 ああ、と疑問は腑に落ちる。俺自身、そこから理渡の姿を見つけたのだ。坂井にも同じことができて当然だった。


「女か」


「ありきたりだなお前は」


「窓の外を見ていて急に走り出したんだから、彼女でも見つけて飛んでったのかと」


「彼女なんぞいない。……自分で言っておいてなんだが止めよう、この話題は」


「モテない男どものブルース」


「お前もそうだろうが」


「ちゃんと複数形で言ったぞぅ。てか、なにそれ」


 坂井は、俺が手に持っていた、理渡のつば広帽を指差した。


「ああ、これか……」


「どこで拾ってきたんだよ、そんなの」


「その、な。さっき言った知り合いが忘れていった」


「知り合い?」


「俺と一緒にいたのを見ただろう。例の理渡ってやつだ」


「はい?」


「見覚えのある顔だったか? ここから判断しろだなんて、無茶を言っているとは、わかっているが。お前のほうが俺より後輩連中の顔を覚えているだろうし」


「んー……」


 坂井は眉をひそめて、俺の顔をまじまじと見た。


「やっぱり無理か」


「なに言ってんだお前」


 首を傾げながら、坂井は言った。


「中庭にいたのは、お前一人だけだったろうが」



 ◇



 ……俺の人生が再び生気を取り戻したことは、断じて間違った認識ではない。


 しかし。それに対するかのように、俺の周りで何かが変容していた。


 それが何なのかを言い表すことは難しい。漠然とした何かが。不安でもなく恐れでもない、見えない誰かが俺のことを無視して這いずりまわっているような、捉えがたい気配とでも言えば良いのか。そうした何かが、部屋の壁を一枚隔てた向こうに漂っている。そんな印象を、ふとした拍子に感じるようになった。


 かつて異常に恐れていた、夜や暗闇を見つめている時だけではない。流れてくるニュース映像、研究室で坂井達とする馬鹿話の端々、誰もいない研究棟の階段に響く己の足音。なんの変哲も無い日常生活の中に、デジャヴめいた感覚が脳裏をかすめていくのだ。


 封じられた記憶に起因したことだろうとは、薄々感じていた。同時に、その理由を知ることはないとも理解していた。記憶が蘇らない限り、何に引っかかったか分かるはずがない。


 当初は、それで構わないと思っていた。理渡が言ったように、俺の記憶は思っていた以上に封じられた部分が多く、それだけトリガーとなる要素もあちこちに潜んでいるのだろう。だが無視し続けていけば、何の問題もなく生活を送れるはずだ。


 はずだった。



 ◇



『金沢市東部の山間部で、街灯などの破損が多発しています。石を投げて電灯に当てて壊したと思われるものや、柱ごと倒された道路灯が相次いで発見されており、何者かによる犯行と見られています。これらの被害は県道二十七号線を中心に多発し、八月からこれまでにかけて、一ヶ月で二十件近い被害が報告されています。犯行は深夜に行われていると見られ、県警では悪質な活動とみて巡回を強化する見通しです……』


 研究室でネットのニュース配信を見ていると、背後から坂井が覗きこんできた。


「なに見てんの」


「ニュースだ。街灯を壊してまわっているヤツがいるらしい」


「どこぞの暴走族かね」


「かもな」


 俺は坂井のためにニュース動画を最初から再生する。


 映像には原稿を読み上げるキャスターの他、撮影された現場の様子も映し出されていた。


 破壊された電灯、倒れた街灯。ちらりと映っただけだが、街灯だけでなく自動販売機も壊されているらしい。


「うわ、信号機までやられてるのか。あれ百万ぐらいするんだろ」


「そうなのか」


 適当に相槌を入れつつ、俺の目は無残にも地面へ倒された街灯の映像に引き込まれていた。


 切断されたかのような、滑らかな破断部。


 理由はわからない。しかし、俺にはその壊され方に、何かが感じられた。どこかで見たような。それは、いつ、どこでだったか。


 なにも、思い出せない。


「金沢の県道二十七号は、どのあたりだったかな」


 そう呟いた俺に、坂井は窓の外を指して言った。


「大学の前を通っている、あの道だよ」



 その日から、俺はこの件について密かに調べることにした。


 この破壊行為が最初に見つかったのは、石川大学のある角間町からである。それから一ヶ月のあいだに、清水、田島、二俣といった山間の町で被害が見られるようになり、発見場所はおおむね西から東へと移動しているように思えた。


 被害は数日ほどの間は一箇所に集中し、そのうち東よりの別の場所で壊された街灯などが新たに見つかる。ある期間が過ぎるごとに、この犯人は活動範囲を変えているようで、一度犯行エリアを変えると、以前の場所には二度と現れなかった。


 報道や、ネットに上がっている目撃者の情報でわかるのは、これぐらいだ。それでも地図に現場位置を書き込むこと、そこから何かを考察することぐらいはできた。


 何故、こんな事件に興味を持ったのか。最初のうちは自分にも理解できなかった。


 しかし日が経つにつれて、段々と心の中で確信めいたものが育ちはじめていた。


 これは人間の仕業ではない。


 新しい情報を地図へプロットしていく都度、そんな言葉が脳裏を何度も何度も叩いていく。


 何故か。根拠は何か。証拠はどこにある。


 あの鋭利な切断面。


 確かに人間には無理なようには思える。だが、世の中には様々な器具、工作機械があるのだから、不可能ではないだろう。


 そう考えてしかるべきなのに、どうしても「違う」という結論が、どこからともなく滲み出てくる。


 この操られているかのような思考がいったいどこから湧いてくるのか。恐らくそれは、封じられた記憶と関係しているのだろう。俺は、この見えざる何かを知っている。知っていたのだ。


 理渡の言葉が思い返される。「ここにはもういない」と。ここにはいない。俺の傍にはいない。だが、確かに、まだいるのだ。何かが。何かが……。


 そうした思いは、日に日に強くなっていった。身体は健康を取り戻し、夜の闇に怯えることも絶えて久しいというのに、精神だけが、淡い影の手に撫でられ続けている。


 やがて、その強迫観念の中に、ある種の感情が混ざっているのを感じるようになった。それは暗い色をしていたが、単なる恐怖や、畏怖、忌避感ではなかった。


 それが何であるかを知った時、俺は愕然とした。


 罪悪感だった。


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