異世界転生だと思ったら乙女ゲーだった件。って、怒られた!
「あなたの所為で攻略できなくなってるじゃない。どうしてくれるのよ!!」
物凄い剣幕で詰め寄られ、思わず後ずさってしまう。
ってか、知らねーよと言いたい。俺には俺の事情があって精一杯生きてきたんだってな。
とは言え、伯爵家の俺が男爵家の令嬢にそんな事言ってしまったら、彼女が危なくなってしまうこと等想像に易く。いくら少し腹が立ったからとは言え、我を忘れ彼女を危険に晒したいと思うほどではない。
……転生前だったら危なかったけど。
「とりあえず落ち着いて。ほら、皆注目してるよ」
言われて気づいたようで、元々注目を集めていたと言うのに更に現状注目を集めてしまっている。
ただでさえ平和な学園生活送ろうと必死だったって言うのに、先が思いやられるなぁ。
「うー。とにかく後で詳しく話しましょう!」
言い捨てて去って行く美少女。でも、彼女のお陰で不思議に思っていた事が幾つか分かる事が出来たのは僥倖だろう。道理で完全ファンタジーな世界なのに変なところで前世と同じ訳だよな。
『あはははは、やっぱりお兄ちゃん見てると退屈しなーい。面白いよ』
『るさい! 俺は面白くないの!! ってか、本来お前がしなきゃいけない事なんだからな。今世の俺!』
元は俺がいた心の中の個室、前世俺が住んでいた部屋と全く同じ部屋に篭城している入れ替わった当時のままの姿をした今世の俺に怒鳴るも、窓からニヤニヤ俺を楽しそうに眺めている。
くっそー、俺と負けず劣らずコイツも面倒くさがりやだからなぁ。ってか、そこの居心地の良さを考えたら出てくる方を期待したら負けか……あの時の判断は間違いじゃないと断言出来るしもう諦めもついているのだが、偶にこうやって文句言うぐらいは許して欲しい。
と言うか、こいつわざとやってるし良いよな。うんそうだ。
っと、精神面で色々話している場合じゃないな。ってか、ただでさえ面倒だったのに、これから更に面倒事が起こりそうで思わずため息をついてしまったわ。
……しかし、乙女ゲーか。前世は男だったし、流石にそういう趣味はなかったからオタクと言えど手を出した事はなかったんだけどなぁ。
ってか俺今世でも勿論男なんだけど! もしかしてあの子に攻略されるキャラだったとか?
一瞬悪いとか思ってしまうけど、そもそも俺自分の意思でこうなった訳でもなく、何でこうなっているのかも分からないんだ。不可抗力だろう。
「お前も災難だったなー」
ニヤニヤと楽しそうに話しかけてくるのは、この国の王太子にして俺の親友のギルバード。
うん、絶対こいつ攻略キャラだろう。俺様だし文武両道だし何よりイケメンだしな。金髪青目とかどこの白人さんだよって思ってたけど。
あ! 攻略出来なくなったのってこいつなんじゃ……、さりげなく会ったか聞いてみるか。
「まぁ、何やら重要な事があったらしいからね。落ち着いてくれたら話くらいは聞こうと思ってるよ」
「ひゅー、相変わらずモテモテだなぁー」
「いや、そういうんじゃないみたいだったぞ。
それは良いとして、お前彼女と会った?」
「ん? おう、何やら奇妙な事したりブツブツ呟いたり不思議な踊り踊ったり。愉快な奴だったぞ」
……いや、何しとんじゃ? まぁ、分かるけどさ。あの発言とかから考えるに逆ハーとか考えてたんだろ? なのにコイツは幼馴染で許嫁の女の子にぞっこんだからな。間を取り持ったの俺だけど。……あ、だから俺に突撃してきたって感じなのか。うん、把握した。
「あ、でも、妙に洞察力は鋭かったな。そこだけは感心したし、それまでは不審な奴と思ってたけど根は悪くなさそうだな。アリアとは比べるべくでもないけど」
「はいはいごちそうさま。ともかく、悠長にしていると授業に遅れかねないしさっさと戻るぞ」
多分それ事前に情報知ってただけだって言いそうになったのをグッとこらえ。ボロが出る前に先を促す。
まぁ、いつもの事なので、相変わらず真面目だな。なんて言われてしまうが、当たり前だ。今でこそ分かったけど、乙女ゲーの訳分からん妄想を具現化したようなチート野郎と違って俺は普通なんだ。篭ってる今世の俺は分からんが、前世でただのオタクだった俺に無茶言わないでくれ。必死に頑張ってお前らの足元に追いつくので精一杯なんだかんな!
そもそも怠けぐせが祟って餓死するくらいの、しかも死んですら治れなかった俺だ。今努力できているのが奇跡なんだよ。立ち止まったらもう1度歩きだす事すら出来ないのが分かってんのに止まれるか!
驚愕の事実、青天の霹靂とはまさにこの事だろう。
「はぁ、しっかし他のキャラはモブはともかく皆面影あるって言うのにあんたその悪人面以外ほっとんど原型ないわよ。
確かブクブク太りやすい体質とか設定なかったっけ? どんな事やったのよ?」
教師からも信頼の厚い俺は普段使われていない教室で作業をしたいからと言う名目で鍵を借り、前世の名前は田中未来と言う彼女と2人になったのだが。
うむ、色々説明して貰ったのだけど、乙女ゲー原作の俺はクズと呼べるほどの悪党だったらしい……。
しかも、痩せるのは本当に苦労したのだけど、そんな裏設定まであったのか。知ってどうこう出来る訳じゃないのだけど、思わず製作者に太る設定くらいはなんとかならなかったのか? と問い詰めたい。
「ただ単に痩せる努力しただけだって。後、悪人面は外では言わないでくれよな。俺は気にしてないのに周りが妙に気にしてるっぽいから」
俺の言葉に不思議そうに表情を変える未来。
「周りが気にするって、あんたやっぱりキャラクター通りのことやって来たわけ? サイテー」
「おいこら、俺は無実だ! まぁ、何で皆反応するからよく分かってないんだけどな」
俺も不思議なのでそう答えると、顎に手をやる未来。
突然ぽんっと掌に拳を乗せる。
「やっぱり信用ならないからじゃない?」
「うあー、やっぱりそれしかないよな! くっそ〜。俺なりに頑張ってきたつもりだったけど、やっぱ本人が思う事って大半つもりで終わってるもんな。
第一、俺死んでも治らなかったくらいの怠け者だったし」
「え? どう言う事?」
「いや、前世で33のニートだったのだけど、色々面倒くせってネトゲにハマってたら気付いたら死んでたみたい。多分満腹中枢ブッ壊れてたかで全然お腹減らないから水分しか殆ど取ってなかったのが原因だと思う」
「うわぁ、ないわー」
「俺もそう思うわ。で、今世でも何て言うかな、精神の部屋みたいなの? まぁ今世の俺が表面にいて俺は中でぬくぬくしてたと思ってくれ。
で、そのまま今世の俺が苦労とかしても、助けれると本能で分かりつつ面倒くせぇって放置しちゃった事があんだよ。
色々あって今世の俺は今引きこもってるけど、けど俺が死んでも面倒くさがり屋なのは全く治らなかったって訳だ。でも、この世界ってシビアだろ? だから、死ぬ気で努力してる……つもりだったんだわ。足りなかったみたいだけど」
「あー、うん。要は怠け王って事ね。
よっ、この最低男!」
……楽しそうだね。ってか、お前さん前世から今世含めてどんな環境で育ってきたの? 思わず頭痛がしてきたんだけど。
「うん、でも、なんか……ありがとう」
「……は? 何で礼言われたの?」
「いや、だって、斉藤さんのお陰でこの世界ちゃんと現実なんだって分かったから……今までどこかゲームとして見ちゃってたのよね。
うん、このままだったら本当に危なかったわ。ありがとう」
やばい、地味に嬉しさが込み上げてくる。
同じ転生者とも言うべき相手の言葉だと、物凄い俺に気遣ってくれる周りの人間と違って、心からの本音だと理解出来るからな。
何て思ってたら、なおも続ける未来改めキャシー=フォン=ラドクリフ男爵令嬢。
「これでハーレム拡大出来るぜひゃっはー」
「お前マジで強いわ!」
あ、思わず大声出しちゃった。ってか、前世の俺以上に自由だなこいつ。
くぅ、それでも設定とか絡むって言うのなら、基本スペックとか高いのだろうなぁ。まぁ、乙女ゲーの主人公が基本どんなのか分かんないからあれだけど。いや、この手のタイプは生まれた瞬間から目的の為に努力を怠らなそうだ。
色んな意味で侮ったりするのは止めよう。唯一の仲間とも言える奴だしな。やり取りのお陰で残念美少女ってイメージしかなくなったけど。
そんなこんな、更に努力を始めた訳だが、何故か使用人達には泣いてご自愛下さいましと懇願されるし。友人達も口々に心配してくるし。親友には半ば呆れられるし。婚約者からは木刀を振り回されて追いかけまさわれるし。
しかし、そこまでされてやっと体調管理も大事だと再確認するとか。体が動くから大丈夫って訳じゃないのは当たり前だよな。睡眠時間もバッチリ予定に組み込んだし、うん、長さが取れないなら密度だよな。ただやるのではなく、意識を高く持つって事を更に意識しなきゃな。
「いや、本当にありがとうキャシー。いや、心の友よ!」
「わざとよね! それわざとよね! 何にも知らなかった私を馬鹿にしてるんでしょ!
あんたの所為で逆ハーどころじゃないわよ! こいつに努力しろとか寝言言った私もバカぁあああ」
そう、未来は。いや、未来さんはこんな僕に常に叱咤激励してくれるのだ。
叫びながら去っていったけど、きっちりアドバイス貰ってるし彼女も逆ハーするので忙しいのだろう。
うむ、お礼じゃないけど、何か彼女の助けになれる事を探そう。
『あはははは、本当にお兄ちゃんって面白い!』
『いや、時たまお前の反応が不可解なんだが』
『ううん、是非ずっとお兄ちゃんはお兄ちゃんのままでいてね』
『? お、おう』
いつも作品を出す前に読んで貰っている妹の反応がイマイチだった為、連作に出来るほど練ってはいたのですが単発にする事にしました。
なので、少しばかりこちらに設定書いておきます。反響があれば短編集として書くかもしれません。
ptが想像を遥かに上回る程入った為転生少女メインのお話を書きました。
http://ncode.syosetu.com/n5137bv/
よろしければご閲覧頂ければと思います。
主人公・本分にあった末路がトラウマで、頑張っても頑張ってもまだ足りないと思い込んでいる人。
実は、既に親しい人間は心配するほど努力していたのに転生者の女の子の言葉で益々加速する事に。
しかも、太りやすいと言う欠点こそあるものの他は元々高水準の才能があった為自分が思うより遥かに、それこそ誰もが頼りにしてしまうほど高い能力をまんべんなく備えている。のに皆が自分を立ててくれていると勘違いが勘違いを1人で呼び込んでいる状態。
他にも色々勘違いしているの事が多々あるのだが、長くなりすぎるので割愛。
転生少女・望んでこの世界に転生した少女。なので、前世からの記憶はバッチリ全部持っている。
大好きな乙女ゲーに転生出来た事により、絶対逆ハーエンドを迎えて愛されまくってやると意気込み、本来のスタートとなる転入するまでは全て思い通りにいってたのに、主人公が色々とやらかしまくっていた所為でおじゃんに。
だが、彼女は諦めない。そんな存在をこの世界の神は転生等させてあげない。
のだけど、不用意な1言から主人公を焚きつけてしまい、勿論自覚なし主人公がそれを周りにもバラしてしまった為大変な状況になってしまっていたり。
ただ、主人公が好意を持って接してくれているので、悪質な嫌がらせ等には至ってない模様。
ちなみに、実は主人公が半ば大ハーレムを築いている事も知ってしまい、ダブルパンチのショックを受けていたり。
完全に男女の想いはないし、育つ事も主人公共々ないのだが、妙に主人公に優しくされ他人には勘違いされまくるハメに。故に更に上手くいかなくて主人公に八つ当たりし、夫婦漫才と(以下略)
不屈の人なので、いつか逆ハー築けるかも?
王太子・乙女ゲーでメイン攻略キャラとなるお人。超高スペック。色々あって本来孤独&人間不信気味になっている筈だったのだが、主人公のお陰で既に問題解決済み。幼馴染の彼女とは乙女ゲーでは物凄い不仲の筈が、ちゃんと心が通じ合えばどれほど自分を想っていてくれたのか知る事が出来たので、今ではもんの凄いラブラブ。どころか恥ずかしがる彼女をも無視して公然とイチャイチャしています。本来は、思いが通じなさすぎて幼馴染の女の子の性格がかなり暗くてねちっこくなっている筈だったのだけど、それも早期の段階で解決しているかつ王妃になる為の教育も受けている為、明るくお人よしな上にハイスペックな女性へと変貌している。
色々主人公には感謝しているし、勘違いしまくっているのもなんとかしようとしているのだけど、それが更に勘違いを呼んだりするのでどうしたものかと悩んでいたり。
色々と設定が多すぎるので割愛。
婚約者・本文に登場しているのは1人ですが……。ちなみに、何故木刀を振りまわしていたかと言えば、出会った時たまたま剣での護身術の授業に向かう途中だったので、そのまま追い掛け回した為。別に暴力彼女ではないので悪しからず。
この少女は、乙女ゲーであれば早々に婚約破棄し終えている間柄だったのだけど、主人公の行動故に現在の位置に収まっている。割と幼い頃から主人公に惚れているのに素直になれない人。感の良い人なら気付く程度のアプローチはずっとしているし、実は主人公もそのアプローチ自体は気付いている。と言うのに勘違(ry
他の婚約者は……これ以上はあんまりにも長くなりすぎる為割愛。
主人公の周りの人・男女問わず主人公スキーの集まり。色々考えてはいるのだけど、本編に殆ど絡んでないし無茶苦茶長くなるので割愛。
その他設定・ファンタジック現代風乙女ゲー(なんじゃそら?)いえ、私乙女ゲー何てプレイした事ないもので、ツッコミどころ満載なのはご容赦頂ければと思います。他は勿論割愛で。
最後に、無駄に長い後書きで本当に申し訳ございませんでした。
少しでも楽しんで頂けたのでしたら幸いです。