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はじまり

 俺は佐伯大志。30歳、独身のサラリーマン。趣味・特技はゲーム。苦手なものは人付き合いだ。

 そんな俺が今はまっているのはVRMMO「レジェンダリー ウォーズ」だ。このゲームはRPG要素とシミュレーションゲームを足したゲームで、「レムリアース大陸」を舞台に人族、魔人族、亜人族の3つの種族が数多くの国をつくり共存、対立している。プレイヤーは冒険者として魔物を狩ったり、倒した敵やほかのプレイヤー、NPCの冒険者を仲間にして傭兵団を結成したり、王として国を興したりと、自由度の高いゲームになっている。


 このゲームにはレベルはない。種族ごとに初期能力に差(特性)はあるが、戦い方や使う武器により、熟練度が変動するシステムを採用している。また。一定の熟練度になるとスキルの獲得ができる。つまり、自分の戦い方によりキャラクターの成長が変わるやり込み要素満載のゲームだ。


 大陸には多数の『拠点』(城やダンジョン、館等その種類は豊富にある)が用意されており、拠点を制圧することで自分の勢力の拡張が可能だ。拠点保有数が10個未満であれば、傭兵団や貴族、領主等の一勢力として、10個以上収めれば国としての運営が可能となっている。 


 俺のキャラクターは、ヴァンパイア(魔人族)、名前はタイシだ。性別は男、身長170CM、やせ型、黒目黒髪というリアルの自分に似せている。実際はリアルより若く、ちょっとイケメン風にアレンジはしているが・・・


 ヴァンパイアの初期能力は、最もベーシッな人族よりも魔力は高いが体力が劣っている。そして最大の特徴は眷属化という特殊スキルだ。眷属化は倒した敵を30%の確率で眷属にできる。


 そんなヴァンパイアをベースに苦節1年。ひたすら魔物狩りとイベントを制覇し続け、現在魅力MAX、魔力・統率力そこそこ、知力普通、体力・敏捷性その他が低めという、集団戦と魔法戦に振った成長を遂げている。

  

 ここまでは本当に長い道のりだった。コミュ力の低い俺とパーティーを組んでくれるプレイヤーが少なく序盤はかなり苦労した。

 ただ眷属化と高い魅力による効果は絶大で、冒険で一緒にパーティーを組んだNPCや、倒した敵(NPC)を仲間や部下にできる可能性が高くなり、リアルと反比例して仲間が増えていった。

 増やした仲間とともに少しずつ拠点を確保し、15の拠点を確保する中堅国家を形成するまでに至った。国の名前は、ガレリア王国とした。

 そして今、俺は王として新たな拠点を確保すべく兵を率いてた。


 俺は高台に副官と登り、今回の攻略目標を見下ろしている。

攻略目標の手前200mのところには、ガレリア王国のカントリーカラーである濃紺の鎧やローブに身を包んだ軽装騎兵(200人)、重装歩兵隊(1000人)、魔術師隊(300人)、弓隊(300人)が兵種ごとに隊伍を整え俺の指示を待っている。


「え~と。今から攻めるのは、NPCの拠点か。結構立派な城だな。まあ堀がないだけましか。敵は籠城を選んだみたいだが。援軍の期待できない篭城戦とは・・・まあ、この兵力差じゃあ仕方がないか。」と魔法で強化された眼で城の様子を確認しながら、ひとりごちた。


 俺の横には序盤から苦労をともにしてきた、眷属第一号の腹心であるダークエルフの美女であるアーシェラが佇んでいるが、返事をする気配はない。そんなことは意に介さず今度は副官に向かってつぶやく。「この拠点を落としたら俺達の新しい本拠とするか。今の拠点も手狭になってきたしな。なぁアーシェラ。」が、返事はない。その理由はつぶやいた俺が一番良くわかっている。俺の仲間は全員NPCだからだ。友達がいない事実と、いつの間にか当たり前のようにNPCに話かけるようになっていた事実にちょっと凹みながら、指示を出す。


 「第一魔法小隊!巨岩砲ギガロックカノン!斉射!」


すると、30人の魔法使いが詠唱を唱えたのち、盛大な効果音を撒き散らし、城壁に向かって岩が殺到し次々と激突する。その様子を見て「さすが苦労して育てあげただけあって、詠唱速度・命中率とも申し分ないな」と感慨深くつぶやく。


 しかし、相手魔術師のアンチマジックシールドの効果もあり、城壁がダメージを受けつつもまだ健在であることを確認した上で俺は、

「第一から第三魔法小隊は、ギガロックカノンを斉射、第四から第八魔法小隊は防御魔法をかけよ!」

俺は攻撃命令と共に、防御魔法を全隊にかけるよう指示を出した。


先ほどよりも盛大な効果音をまき散らしながら、大量の巨岩がつぎつぎに打ち出されていく。

飛翔音・・・そして・・・ドオオン!!!と轟音があたりに響く。なん度もなん度も。


 敵もただ指を咥えて見ているわけではない。様々な魔法が断続的に飛んで来るが如何せん質・両共、我が軍には及ばない。過剰気味にかけた防御魔法により相手の攻撃はそらされていく。


時間にして20分ほど経過しただろうか。魔術師隊の残りMPが気になる頃合になった。

「打ち方やめ!」

ほどなくして、攻撃魔法の発射が止む。

相手からの攻撃魔法は相変わらず続いているが、その数と威力は落ちていた。


「敵さんもお疲れか・・・さて、城壁の状態は・・・と」

現実であれば大量の砂埃で視界が遮られ城壁の様子が見えるようになるまで時間がかかるのだろうが、そこは都合のよいゲームの世界。すぐに岩の雨の結果が確認できる。


「よし。城壁が崩れたな!崩れたところに楔を打ち込むぞ。弓隊牽制射撃開始!敵の弓隊に味方を狙わせる余裕を作るな!歩兵隊!目標手前100mまで全速前進!」

精鋭たちが駆け足で戦場を駆けていく。

 そんな精鋭たちに向かって敵から弓や魔法による投石、落雷が襲う。直撃を受けた兵はさすがに即死だが着弾付近にいる兵たちは防御魔法の効果もあり、前進していく。


目標地点に到着する前に、続いての指示を出す。

「前衛隊は楯をかまえい!その後戦闘速度で前進!!」

歩兵隊が駆け足により乱れた隊列を直しつつ、前衛は楯を前につきだし、次列以降は上面に楯をかまえ上からの攻撃に備える。

 移動をしつつの隊形調整、移動速度変更という高難度の機動を見て俺は、思わずニヤリとしてしまう。


 そんな歩兵隊がじわりじわりと崩れた城壁に近づくが、城壁からは熱した油や、火矢が射掛けられ、必死に抵抗が続く。あと一歩で城壁内に到達できそうになるが、食い止められる。そんな一進一退の攻防が1時間も続き、いい加減焦れて来る。

 「ふむ。魔法攻撃は止んだか。思ったより魔術師の人数が少なかったのか。だが、それ以外は粘るな。よし。そろそろ俺も出るか!第1騎兵小隊、俺に続け!」


 俺は30騎ほどの騎兵に囲まれながら、前線へ駆けていく。ちなみに俺の愛馬はアンデッドスレイプニールの「ニール君」だ。


 今の俺の隊の配置は前線から、重装歩兵隊、弓隊、魔術師隊を100M間隔で展開しているわけだが、俺は弓隊と重装歩兵隊の間を目指して駆けていく。もちろん移動中も俺たちに向かって弓による攻撃が加えられているが、俺の周りの騎兵によりことごとく叩き落され危険を感じることはない。

 

目標地点に到着後、俺は中級魔法を詠唱する。

「吹っ飛べ!火炎爆殺!(ファイアエクスプロージョン)」

少なくないMPを消費しつつ、崩れた城壁に向けて魔力を開放する。


城壁前では、魔力が収束していき、一気に爆発!爆風と火炎により、敵味方の区別なく吹っ飛んで行く。

「よし、今だ!!歩兵隊楯を放棄し突撃!!」


その指示に忠実に兵たちは俺の魔法で広がった城壁の綻びに向け攻勢を強める。

そして・・・

ついに、一部の部隊が城壁内に侵入を果たした。こうなるとあとは早い。 

歩兵が城壁内を蹂躙したあと、弓隊、魔術師隊が続々と城壁内に進軍する。


城内の制圧も順調に進んでいく。ようやく最後のイベント。王の間の制圧だ。

通常、王の間には現在拠点を当地する主がおり、その主を倒した上でその拠点のコアに触れると制圧が完了する。

 今回の拠点はそれほど強力な敵がいなかったことから、俺からすれば弱い部類の主が1人いるくらいだと思っていた。

 早く制圧をして、城のカスタマイズをして、現在の本拠からアイテム類を輸送して・・・と制圧後の楽しい作業に思いを馳せながら、自分の身長の倍はあろうかという扉をはやる気持ちのまま押しあけた。


 扉をあけた瞬間俺の目に飛び込んできたのは、10名ほどの魔術師たちと、ひときわ豪華の衣装に身を包んだしぶいおっさんだった。

そして魔術師たちの手には光弾が形成されていた。

 俺は慌てて扉の外に戻ろうと後ずさりをするが、無情にも敵の王と思われる男の口から術の発射を告げる言葉が紡がれる。

「聖浄光矢!(ホーリーアロー)」


敵魔術師たちから一斉に光の矢が発射される。俺は避けることが無理と判断し、呆然と立ち尽くす。

 その時、俺の横に風を感じた。いや、誰かが駆け抜けて行き、俺と光の矢の間に立ちふさがる。

俺の目の前には銀髪と漆黒の鎧に身を包んだ後ろ姿が目に入る。


「アーシェラ?・・・」

俺がつぶやいた瞬間、次々と光の矢がアーシェラに突き刺さり、倒れる。

俺は咄嗟に手を伸ばすが、アーシェラには届かない。

呆然とする俺の胸に敵の王が放ったと思われる光の矢が突き刺さり、そこで俺の意識が途切れた。


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