捕虜フリル・ククリの場合
アイテムボックスは、
スマホから選択する事により、出し入れができる事がわかった。
重さも感じず好きなときに取り出せるため、
非常に持ち運びに便利な道具といえるが、
不便な点もある。アイテム欄の項目内の部分取出しが出来ない点だ。
たとえば肉10kgで収納したとすると、
そこから、1kgほしいときにも10kg全部ださなくてはならない。
どうにかならないものか
他にも、アイテムボックスだけの問題ではないが、
ダンジョン操作のほぼ全てがスマホを通して行っているため
ゴリゴリと恐ろしい速さで電池が減っていってしまう。
これも何か対策を打たねばなるまい。
現在は既に50%をきっている。
太陽発電型充電器はあるが、こんな薄暗い洞窟内では意味もない。
ひとまず必要の無いときは電源を切ることにした。
ダンジョンコアは、バグの一種なのだろうか?
ボックスに入れる事ができた。
これで魔力隠蔽を常時発動しておけば、襲われないし
魔力問題さえ解決すれば、ハッピーエンドな気がするんだが早計だろうか?
生活の基盤さえ整えば
死亡率ほぼ100%のダンジョンなんて運営せず。
捕らえた3人のだれかを、奴属の首輪で召使にでもして、
平和ENDでいいようなきがしてきた。
着替えも歯磨きも全てやってもらい、お金も稼いできてもらう、
おれはのんびりと携帯ゲームで遊ぶ、夜は一緒のベットでただれた生活を
そんな理想のヒモ生活を妄想しながら、牢屋の一室に向かう。
奴属の首輪は何度も使用する事はできない。
使う相手は身長に選ばなければなるまい。3人の中の誰にするか、もしくは温存しておくか、
牢屋は豪華なつくりの部類となっている。
迷宮内でもっとも豪華な部屋はダブルベットのある牢屋という不思議。
ダブルベットは、もともと家にあった家具である。
なぜあるかというと、
珍妙な事にアイテムボックスに入っていた。
アイテムボックスが満杯となっていたときは
ボックス内のアイテムを丸々引き継ぐバグでも起ったかと期待したが、
中に入っているものは予想と大きく異なっていた。
ダブルベット
テレビ
大型スピーカー
パソコン
ギター
米40kg
炊飯器
etc…
そう、
家にあった家具などが丸々ボックスに入っていたのである。
役立つものも多くあるだろうが、
電気の供給のないところでの電化製品は、完全にただの粗大ごみである。
使えないものはボックスからとりだし、部屋につめると、
一部屋がまるまる埋まってしまった。後で、外に捨てに行かな
ければなるまい。
いや、せっかく人手がいるんだ。
裏切れない奴属の首輪をつけた奴に運ばせればいいか。
そうなると肉体労働に向いている男が一番だが。
だが奴隷は女の方が、男のロマンが、
そんな夢と現実の狭間で煩悶しつつ目的の部屋にたどりつく、
「はいるぞ?」
「ひっ!」
少々乱暴に簡易ドアをあけ、部屋に入ると、
村娘のような少女が、怯えた様子でベットの端に転がっていた。
フリル・ククリ、
ネーム持ちの少女だ。
うすでの上着に、紺のスカート、
身軽ではありそうだ
しかし、ひらひらのフリルや
際立ったおおしゃれこそしてないものの、清潔感があり、とても盗賊がきる衣装とは思えない。
「……………」
少しの間様子を伺う。
緊張で言葉が出ないようだ。何をされるのか、と身構えている。
腰の曲線がまたなまめかしい。
怯え具合からも察せるが、あきらかに荒事向きではない。
他の二人は縛ったが、彼女は危険もないだろうと
部屋におしこんでいるだけだ。甘いだろうか?
盗賊とステータスに出ている以上、
今の姿が彼女の全てというわけではないだろうが、
その怯える小動物の顔をした裏に、何かたくらみがあるとしても
所詮はLV1である。
脅威にはなるまい。
「あ、あの…。」
「何だ?」
無言でなめまわすように見ていると、少女が口をひらいた。
「わ、私をどうするつもりですか?それと………みんなは?」
戸惑いふるえながらも、けなげにもこちらをみて質問する。
みつめかえすとすぐに怯えたように目をふせる。
完全に小動物である。
「ふむ」
彼女の問いにどう答えるか逡巡する。
現時点では、
この少女に対し、どのような態度をとるかきめかねていた。
戦力にはならないだろうし、
指をみるにあまり家事もやった事が無さそうだ。
貴族ではないだろうが
子煩悩な親に、大事に大事に育てられた箱入り娘、というイメージが強い。
使えない人間を無駄に置いておくほどの余裕があるとはいえない
当初、愛玩用のペットにするか、ストレスのはけ口にするか。
オレとしてはその辺を考えていた。
だが、ネーム持ちという点が気にかかる。
ステータスコマンドで名前と画像が出るという事は
なんらかの進行しつつあるイベントの主役
もしくはそれに近しい存在であるという可能性がある。
あまり粗末に扱うべきではないかもしれない。
「お前をどうするかは、ひとまず置いておいて…皆、とは誰の事だ?」
「カインズさんとシャルさん。
あ、えと。眼帯した男の方と、私ぐらいの少女のかたです。髪の青い…。」
モブにも名前があるらしい。
カインズと、シャル。か。スマホの電源をいれ、確認するがやはり
モブ、とでている。
この二人はぞんざいに扱っても問題ないだろう。
シャルという名前が捕らえたモブの少女の名前か。
今日はその女をいじめよう。そうしよう。
そんな事を考えつつ質問する。
「二人とは仲間なのか?」
「そうです。」
「親しいのか?」
「……いえ。あまり。」
そこで目を伏せる少女。
仲間になって日が浅いという事だろうか?
LV1だし。
「親しくないなら、どうだっていいだろう。」
「そんなわけにはいきません!その、私を受け入れてくださった頭の妹ですし。」
「そうか。」
どう答えるべきか。
このまま話しているとやっかいなイベントが絡んでくるかもしれない。
切り上げるべきか。
しかし頭というのは多分、盗賊の親玉だろう。
それの妹となれば、ネーム持ちでもいい気がするか…。モブなのか。
「二人は今のところ無事だ。」
「そうですか。」
あきらかにほっとした様子の少女。
「今後どうなるかは……お前の態度しだいだな。」
「あ、あの。雑用でも何でもしますから、そ、その、命だけは。」
なんでも!?
今なんでもっていったよね?
恐らく意識してのものではないのだろう。
だが、スカートからのぞくふとももから目が離せなくなり、
思わず飛び掛りたい衝動にかられる、が。
「考えておこう。」
「お、おねがいします。」
きびすを返す。これ以上いると襲ってしまいそうだ。
一度仕切りなおした方がよい。
このはけ口は、モブにぶつけよう。
彼女の従順ぶりが、やや、きになる。
きのせいかもしれないが、オレの望みどおりの展開になりすぎている。
単に性格からくるものなのか?
普通いきなり、
罠に引っかかって閉じ込められて、
なんでもするから命だけは、とすぐさま懇願はしない。
理不尽な怒り、などの過程が飛んでいる気がする。
よほど後ろめたい事でもあるのだろうか?
存外切り替えが早いのかもしれない。
単にこの世界が、殺伐としていて、それにまだオレがなじんでいない為
違和感を感じるだけ、という可能性が高いか。
オレは、頭をふり、意識を切り替える。
そして隣の牢屋へと足を踏み入れた。
そこにはガムテープで後ろで縛られた少女がふりほどこうと暴れていた。
元気のいいことだ。
まな板の上の鯉のようにぴちぴち簡易ベットで跳ねる少女をどう料理するか
思いをはせ、無言ではいっていった。
すぐにオレの存在に気づき、恨みがましい目でにらんでくる。
気配察知能力が高いのか。盗賊だしな。
「むむ~~。」
ガムテープで口をふさいでいるから何をいいたいかはわからない。
強気そうな顔も、今の縛られた少女の状況。今後の展開を考えると
口元がにやけるてしまうのをとめられない。
今は様々な不安を忘れ、童心にかえろう。