捕獲
通常ならば、保護期間中に、
チュートリアル…ゲームの操作説明がてら兎など動物の侵入があり、、
罠設置方法をおぼえつつ、それを撃退する事で食料確保などし、準備を整えるはずなのだが。
フリル・ククリ(16) HP14 盗賊(♀)LV1
モブ HP27 盗賊(♀)LV7
モブ HP38 盗賊(♂)LV9
侵入者のステータスが表記される。盗賊だ。
本当に保護期間はきれてしまっているようだ。
…これもバグ、なのだろうか?
もっとも、
オレがゲームの世界にいるという、
今の現状こそが最もありえないバグなのだろうが。
3人の侵入者。LVは大したことない、
ネーム持ちが一人いる。
ネーム持ちとは名前、画像ありのキャラの事で
ゲームの中であったなら喜び、
いかに殺さず捕獲すべきかに頭を悩ませていたところだろう。
「誰かいんのか~?いたら返事しろよ~」
スマホを操作していると、
品のない甲高い女の声がきこえてきた。
ダンジョンという事に気がついていないのだろうか?
だとしたら好都合だ。
ろくに迎撃措置のない生まれたばかりのダンジョンなど、
存在がしれ、対策されたらただのカモと成り下がる。
返事は当然しない。しかし帰るそぶりはない。
足音が洞窟内を反響して聞こえる。徐々にであるが近づいているようだ。
携帯を持つ手に思わず力が入る。
相手はアウトローな盗賊だ。
冒険者相手であったなら、そしらぬ顔であいさつをかえし、そのまま
ダンジョンコアを持ち外へ逃げるという手もあったのだろうが、
盗賊となるとそれは通用しないだろう。
身包みはがされて、命まで奪われかねない。
宝石のように輝くダンジョンコアはまず見逃してくれないだろう。
ダンジョンコアを隠せないか?
衣服の中は…、だめだ、この宝石は大きい上に発光している。
とても隠し切れない。
こたつのなか、ムリだろう。中を見られたら一目瞭然だ。
アイテムボックスの中…悪い案ではない。
ゲームではアイテム欄にないのでムリだったが、
ダンジョンコアが手に持てるものである今でなら可能かもしれない。
だがダンジョンコアは、コタツの上で光り輝いているが、
『アイテムボックス』とはどこにあるのだろうか?
イメージとしてはバックのようなものなのだが。
「本当にいないのか?いるなら返事しないと、敵とみなすぞ?」
「ただ身包みはぐだけだと思うなよ?ナイフをお前達の体で研ぐからな?」
まがりくねっているとはいえ広い一本道、
見つかる事は、ほぼ確定、返事を返さないとやばいか?
いや、返事を返したところで…。
そもそも人の体でナイフを研げるか!さびるだろうが。
脅しなのだろうが…。
…考えがまとまらない。
いつ盗賊が目の前に現れるかわからない状態、
冷静に考える事もできそうにない。
まず距離をとろう。
オレはその場をしのぐ事を第一に考えた。
スマホを操作して、多大な魔力を消費するが2階を作る事を決意、実行に移す。
ズ・・・ズズズズ
「きゃぁ!?」
「うぬ?」
「な、なんだ!地震か?」
大地がゆれる。
(また、地震!?もしかして、ダンジョン作成に連動してる!?)
(これは、階層がつくられてる揺れ…なのか?)
(悲鳴は盗賊のものだろうか?かわいい声だったが。)
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
魔力5000を消費しました。
ダンジョン2階が作成されました。
大部屋0 小部屋4
水脈を掘り当てました、2階の30%が水に浸食されます。
鉄鉱石を手に入れました。
水のエレメント(原石)を手に入れました。
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取り留めのない事を考えている中。
スマホから目を移すと風景がかわっていた。
先ほどまでが広い通路のような洞窟だったが、
今いるところは、こたつ一つで部屋がうまるような小さい空間だ。
(うわ、下がぬれてる。)
地面が湿り気をおびている。
ただでさえ、電気の供給が止まり役に立たない
こたつがさらに役立たずになってしまった。
ダンジョンコアは操作しない限り
迷宮の最奥部に設置される事になっている。
階層を増やした為、ダンジョンコア付近のオレやこたつも、
移動したのだろう、と予測する。
スマホで、
盗賊の居場所を確認、地震による落石を懸念したのか、
今のところ移動はしていないようだ。
(落ち着いて考えてみれば、
相手はLVも大したことないし、迷宮内でなら撃退可能なんだよな。)
いつ盗賊が目の前に現れるかわからないという、
目の前の危機を脱したオレは、幾分冷静に考えられるようになっていた。
ゲーム、DDEの難しいところは、
いかに効率よく魔力を摂取し、次に備えるかによる。
魔力消費を抑えつつ、冒険者を撃退し最大限の利益を得、迷宮の力をつける。
効率を求めすぎると、リスクがあがり死ぬ確率は当然上がる。
(今回は最初だし、利益度外視して確実に対処しよう。)
(魔力隠蔽をつかえば、次に備える為の時間も稼げる。)
クリアしてないとはいえ、ゲーム上では
プレイ回数が3桁に届こうかという、迷宮運営の熟練者である。
オレは、ゲームでよく使っていた。
偽装した落とし穴&底に、衝撃を抑える捕獲用スライムを設置する。
結果
あっけないほどあっさりと捕獲する事に成功する。
階層が違うため声も聞こえないが、
スマホから報告があがっているので間違いないだろう。
少し拍子抜けする。
オレはとっさにつくったが、水浸しの2階は好きになれない。
1階を拡張する事にする。
1階に牢屋をいくつかつくり、3人を閉じ込める事にした。
「さて、ききたい事は山ほどある。」
尋問する3人のうち2人が女性。
ネーム持ちの方はもちろん
名前の表示されなかった方もわりかし可愛い見た目をしている。
ここは法律などない異世界、
しかも相手は盗賊という犯罪者。
牢屋にふかふかのダブルベットを設置する。
自重する必要はどこにもなかった。