捕虜フリル・ククリの場合③
「聞こえなかったのか?ネコのまねをしてみろ。」
「…………………にゃ、にゃー?」
かなり間が空き、
首をかしげながらも、小さく消え入りそうな鳴き声をあげるフリル。
恐らくオレが何を求めているのかわからないのだろう。
シチュエーションというものを理解できていないようだ。
でもかわいいから許す。ネコミミもつけたい気分だ。
いきなりネコのまねをといわれても、
なんだこいつ?という話だろう。
おれ自身とっぴもないのは自覚している。
しかしここはゲームの世界。
エルフやドワーフなどはもちろん、
ネコミミ娘や、犬ミミ娘などの亜人もいるはずなのである。
せっかくゲームの世界に類似した異世界にきたのに、出会った3人といえば
盗賊3人組であり、魔法も使えない。
カインドは魔具をもっていたがぱっとみただの
眼帯男である。能力も視覚的にみれるものではない。
聞く話は、仇だの、盗賊間の派閥争いだの、殺すだの、きな臭いものばかり。
希望の星でもあった奴属の首輪は、保身から男につけてしまう。
もはや夢も希望もないのだ。
少しばかりオレの妄想をここに
再現させたくなったとして、罰は当たるまい。
「……にゃー。」
オレの様子から求めているものと違うとわかったのだろう。
それでも、理解不能のままでも鳴きまねを続けてみせる
彼女は案外辛抱強く適応力が高いのかもしれない。
ほんとは、語尾ににゃん♪とかつけてくれる
ノリのいいのがすきなのだが
彼女の不幸な生い立ちをかんがみるに、そんなノーテンキなキャラではない。
強制して無理にやったとして求めるものにはならないだろう。
馬鹿な事をした。
せっかく力になろうと意気込んでくれているのだ。
もっと生産的な事をさせよう。
ネコはあのモブ女にやらせてみよう。
シャルというモブ女はしゃべらせるととかくやかましいし、
何より反抗的で役に立つ気がまるでしない。
ならば割り切って、ネコとして調教し、
人間の言葉をしゃべらせず
どこまでオレの求めるネコ娘像にちかづけるかを試してみるのもいいかもしれない。
「………にゃー。」
…オレから言い出した事だが
少々いたたまれなくなったので一度退出しようときびすを返すと。
袖をつかまれた。
「…………………………」
「…………………………」
お互いに無言である。
何を言えばいいのかお互いわからないのだろう。
いいだしっぺはオレだが、オレもちょっと仕切りなおしたい気分だ。
どのくらい沈黙が続いたのだろうか。
フリルが謝ってきた。
「……その、ごめんなさい。
………田舎育ちなので本当にスグル様の求めるものがわからないんです。
が、がんばりますので、どういうことをすればいいのか教えてください。」
恥ずかしげに目をそらしながらいうフリル。
どうやらオレがおかしいとは思わず、
自分が無知であると勘違いしてくれたようである。
忘れてくれ、という言葉を飲み込む。
「…そうだな、ベットの上で壁の方向いてネコのように四つんばいになってみろ」
「は、はい。」
こういうシチュエーションも悪くない。
よし、きめた。フリルとはいろんなシチュエーションエッチを楽しもう!
いわれたとおりの体勢をとるフリル。
お尻をこちらにつきだし、誘ってるとしか思えない姿勢だ。
(……………………)
現実でここまで挑発された事はない。しかも本人は一生懸命かつ無自覚と来た。
たまらないものがある。
「次に、お尻を左右にゆっくりふるんだ。」
「こ、こうでしょうか。…あ、あの。のぞきこまないでください。」
(……………………)
ひょっとして今、オレはすごい事をやっているのではないだろうか?
ガンダレフ一味の問題を対処するまでは、
リスクを考えフリルと最後まで事を及ぶ予定はない。
ただ純真で無垢な少女を、自分色に染めていく感覚に、理性が今にもふき飛びそうになる。
「こ、これでどうでしょうか?」
「ちがう、こうだ!」
「きゃぁああ。」
「ほら、恥ずかしがらない!」
「ご、ごめんなさい。」
何度目になるかわからないが、お尻をなで上げる。
倫理コードは働かないようだ。
限界が近い。
限界だと思ったらあのモブ女のところにいき、発散しておくべきだろう。
カインドは生活の地盤固めに使い、
フリルで遊び、
シャルでストレスを発散させる。
露出の大きい女戦士も、魔女っ娘も清楚な神官女も、エルフもネコミミ娘もいない。
ファンタジーの香りは弱い、
しかし、すでにオレは、法のない異世界を満喫できているのかもしれない。
ならばこのオレにとって都合のよい、この生活を守らなくてはならない。
そのためには、ガンダレフ一味も、シャーリーの盗賊団も邪魔である。
対策をたてねばならない。
ふりかかる火の粉を払う力をつけなくてはならない。
しかし今は先の事を考えるのは後にしようと、
あえぎまじりのネコの鳴き声をあげる、フリルをみて思う。