入学
ようやく投稿できた、一次創作。
暖かい目で見ていただけたらと思います。
「鏡野白。上ノ原中学出身、よろしくお願いします」
なんて、テンプレな台詞を告げて自分に宛がわれた席に座る。
こっちを見ながらこそこそ話してるクラスメイトを一瞥して、意識を窓の外に向けてから密かに嘆息。
(お先真っ暗、だな・・・)
◇◆◇
「・・・というわけで、今日はこれで下校になります。学生寮に入る方も、寮生活は明日からになりますので今日のところは帰宅してくださいね」
教室の前方でそう告げるは副担任の藤巻静香先生(24歳、現在フリーらしい)。長身、セミロングの茶髪に整った柔和な顔立ちでしなやかな肢体をカッチリとしたスーツに包んだ、いかにも"デキる女"というイメージだ。
「それではみなさん、また明日。帰り道では気をつけるようにしてください」
そんな締めの言葉を皮切りに、生徒達が一斉に席を立ち、教室を後にしていく。
俺、鏡野白もそれに倣って鞄を手に教室を立ち去ろうとする。
「白っ」
そんな俺の背中にかけられる、鈴の音のような澄んだ声。
振り向くとそこには、十年来の付き合いの幼馴染、立花紫がこちらに駆け寄ってきていた。
「ああ、紫。お前も帰りか?」
「ううん、わたしはこの後生徒会の顔合わせ」
「生徒会?」
「聞いてないの? "純粋色の円環"持ちは生徒会入りなんだよ」
「・・・そうだっけ?」
「もぅ」
言って、クスクスと口許に手を当てて笑う紫。
その手首には、彼女の名前と同じ、紫色の腕輪がはめられている。
かく言う俺の首にも、純白の首輪がはめられていたりするのだが。
「・・・ただ一つの例外、純色の白、か・・・」
「・・・・・・」
ぽつり、と漏らした紫から逃げるように視線を逸らして、窓からまだ昼間の外を見る。広大な敷地を有する、この"界命学院"。その中庭中央に鎮座する、一体の銅像。
「・・・"界命空"・・・」
あらゆる事を思考し、そのクセ何一つとして考える事無く、ただ己の欲求を満たすためだけに、世界の混乱に乗じて行動した男。
ふと、彼が世界に向けて発した言葉が頭をよぎった。
『何があろうと、僕が何をしようと、世界は何一つ気にしない。世界とは個の集合体であり、同時に個などとは最も無縁な存在なのだから』
この言葉を最後に、界命は行方を晦ました。
「・・・これが、あの男の見たかった世界なのかねぇ?」
乗用車が空を飛び、空間そのものに画面が現れ、自律行動する機械の存在が当たり前な世界。
界命曰く、「正史より大きく逸脱した世界」。
「気にしてもしゃーなし、か」
こちらを不安気に見つめる紫に、大丈夫、と告げて、俺は再び歩を進めた。




