第二章「未確定な仮説」 2
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「彼をどう思う? 神様さんよ」
ここは真っ白な空間。距離感と呼べるものは全く感じない場所に男は居た。
「うん、間違いなく満点だね。僕の理想の人材だよ」
男の話相手は少年にも少女とも見受けられる子供がいた。
「そうかい、ま、久しぶりにVPSを起動して、エンコード《strength》まで発動させて負けるなんて、考えもしなかったな、BMIを作って以来のかつてない出来事だな」
「アレはワザとでしょ? 腕を潰しておくこともできたし、ましてや素手でやらなくたってよかったじゃない」
「それは多分、一人の人間の男としてのフェアプレイ精神がもたらした行いだな、真っ向勝負してみたかったんだよ」
淡々と言葉を発する男の顔は笑っていた。
「ふ~ん、僕はもう人間やめちゃってるからその感情は分かんないね。どんな気持ち?」
「お前に分かりやすく言うと、使命感だ。こうしなきゃいけない。あぁしなきゃいけない。選択肢は五万とあるのに目の前にある素直で愚かな選択、その選択を選ぶしかない、みたいな感じだよ。ま、ここまで感情が出せるのもある意味BMIが優れている証拠だな」
「やっぱり、人をやめた自分には分かりかねる心の部分だね。で、手はずはどうする?」
「まぁ、アイツの好きな奴と妹、それとアイツ自身を外に出させる方向で行こうか」
男はどこからか煙草を取り出し。口にくわえ火をつける。
「了解。じゃ、肉体づくり宜しくね。こっちの方もうまく誘導させるよ」
「あぁ、わかった。じゃ、ログアウトして、作り始めるとしますか」
男は手を自分の胸の前に移動させると、一冊の本が空中に浮きながら出現する。そして、男は本の最後のページをめくると、本には三つの選択肢があった。
・オプションメニューの表示
・ショートカットキーの設定
・ログアウト
男は三つの選択肢の中からログアウトをと書いてある部分を指でなぞる。
「あ、そう、やっぱり、煙草の味は表現できてないみたいだな、吸う時気を付けろよ。只の不味い棒に変わってやがる」
と、男の体が急にポリゴンメッシュに変わったと思えばおもちゃのツミキの城を壊したようにバラバラになった。
「う~ん、煙草か、僕吸ったこと無し、見た感じでまずそうぐらいしか思えないって」
悩む必要もないが一応考えておこう。そう思った。
「さ、僕は僕のするべき事をするかな……、データを一つにまとめないとね、コンパクトにして、端末に負荷がかからない様にしないと、楽しみだなぁ、特異体と会うのは」
そう言って彼は歩き出した。真っ白な空間の奥に向かって
「いかがでしたでしょうか?、疑問に思われる部分、又は不愉快に思われる部分がありましたら感想、レビューにお書き下さいませ、出来うる範囲でお答え、または修正します」