第一章「それでも少年は『剣』を握る」 ―参―
「御拝読ありがとうございます。セレスです」
「読みにくかったり文法が間違っていたりするかもしれませんがどうぞ貴方の寛大な心で御許しを願います。それでは、空想直線上のフォーマッド第一章「それでも少年は『剣』を握る」―参―をお楽しみください」
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道を隠して、心を隠して、覚悟を開ければ真っ暗闇が待っている。その中で汝が問えば我は答える事がなきにしもあらず。
――どうしたらこの子を救えるの?
我はその問いを答える。
――世界を周り果てとは何か、幸とはなにかを知れと。そう我は答える
「ただいま、ナミキ。今、起きているの?」
少年が自分の家の玄関の戸を開けるとそこは真っ暗だった。電球が無ければ蝋燭もありはしない。
「お兄ちゃん御帰りなさい、今日はなんだか楽しい事でもあったの?」
奥の部屋から聞こえてくる。妹のナミキの声。今にも死んでしまいそうな儚い声。そこまでの音量を持たない、脆弱な声。
「うん。いい事あった」
「あの御姉ちゃんと今日も話したんだね」
「うん、ちょっと乱暴されたけどね」
その時を思い出すと今でも笑ってしまいそうな少年は、ニヤ付いた顔だった。
「お兄ちゃん、顔がニヤ付いているよ」
ニヤ付いた顔を隠す様にすぐに顔を元の表情へと変わった。なんとも、子供らしい行動だろうか。
「ニヤ付いてない。それより、またあの僕の読んでいた古本を読んでいたの?」
少年は話を変えた。それはこれ以上なにか自分に不利な事が起こりそうだったからと言うなんと年頃の少年らしい正しい反応だ。
「うん、だって一人の少年が女の子を救うために世界のどこかにある物を探し求めて歩き続けるんだよ。しかも、途中から……」
「もう何回も聞いたよ。それは何回か読んでるから、その本の最後も知ってる。最後どうなるかおしえ――」
「いい、言わないで! 言わないでよ。最後はまだ読んでないんだから」
ビックリしたのか少年の目は少し見開いた。
「その本読み始めてのは5年も前だろ? どうして、そこまで最後を知りたくないの?」
「だって、5年も大切に読んでいた本だから、最後を知っちゃったらこの本が今まで大切にしてきた本じゃなくなる感じするから……」
「……まぁ、わからない事でもないけど、もうそろそろ本を片付けてくれないかな、準備してある昨日の残り物を温めて夕食の時間にしたいんだけど」
そう言って置くから温め終っているお粥のお皿をキッチンから持ってくる。
「え~、また、あの薬草お粥ぅ~」
「しかたないさ、これを食べると病気がよくなるかもしれないんだから、ほら、ちゃんと食べるんだ」
ナミキの前に置かれる木製のお皿の中には木製のスプーンとお米まで緑とかした、緑一色の料理が置かれる
「だって、口に入れた最初の味って、グル―ベル草の何とも言えない苦みに途中から、ランベール草の渋みに最後のアクルガルム草のグチョっとしたクリーミーなあの感じ。もう耐えられない……よ……」
うげぇっと少し舌を出してどれだけ不味いかを兄である少年に語ろうとも、ナミキの病気が治る事だけを懇願し続けている少年には「不味いから違うのがいい」と言われても、困るだけで、これまで、おいしく食べられるように創意工夫してやっとの思いで、この味に、この料理に辿りついた事を考えればそもそも無理な話なのだ。
「考えておくよ。でも、おいしいとか不味いとか言うのだったら病気治してから言うんだ」
「……いじわる……」
それでも、少年は創意工夫をし続ける。何があろうとするのは、ナミキの舌を満足させる為に改良するよりも、意地に近い何か言葉に表せない様な感情だった。ただおいしく、ただこの不満に満ちた顔を驚いた様な顔にしたい。まぁ、意地なのかもしれない。
「意地悪で結構、ほらゆっくりとよく噛んで食べて、さっさと御風呂入って、さっさと
ベッドで眠りにつくんだ」
「それは解っているよ。お兄ちゃん。でも、このやるせない気持ちをどこにぶつければいいのか解んないよ。むふぅ~」
頬を膨らませてやるせない気持ちを息に混ぜて吐き出す。そして、また不味いお粥がたんまりと乗る木製のスプーンを口へと運びそしてお粥を胃に流し込ませる。苦いと何度も同じ言葉を繰り返し、何度も顔をしかめる。その工程がお粥を食べ終わるまで繰り返された。
「最後まで読んで下さりありがとうございます、感想などを書いて下さると作者と原案者のモチベーションが上がりますので書いていただけると感謝の言葉一色です」
「それでは、次回の更新でまた会いましょう。セレスでした」