第一章「それでも少年は『剣』を握る」 ―弐―
どうも、初めましての方は初めまして、セレスです。
そして、また見てくださっているかた、ありがとうございます。
では、第一章「それでも少年は『剣』を握る」―弐―をお楽しみください。
「―リンじゃ……」
「……え? わ、わたし?」
突然の指名に慌てるリン――いや、この場合、一番注目すべき、相手はリンの父親だ。
「おい、村長、それは冗談でいっているのか?」
さっきまで優しかったリンの父親はまるで昔話に出てくる鬼の様に変わった。
「冗談で人に死ねと言える人間ではない、まして、私の孫にそんな事が言えようか、我が神の御告げなのじゃ」
その言葉は確かなモノだった。冗談だろうと実の孫に誰が死ねと言えようか、自分が大切に育てた子供を誰が捨てようか、祖母なら絶対に孫に対して言う言葉ではないだが、今は村長としてココにいる。なにがあろうが私情は入れない。そんな覚悟でこの場に居る事を悟ったが、やるせない事には変わりはない。
「だ、だけどよ! なら、この娘を殺される事を黙って「はい、そうですか」と言って承諾できるほど、娘の死を受け入れるほど俺は――俺はこの村を愛してない!心も寛大でねぇ、正直、娘じゃない他の娘っ子が生贄に選ばれていたら……いたら……」
堪え様もない怒気を拳に込めて手が血まみれになるほどに床に只ぶつけた。ぶつけ続けた。そこには鬼ではなく、一人の娘を愛する親の姿があった。あり続けた。
「お父さん! それは言ってはダメ、私はお父さんが一番好き、でも同等にこの村の人も好きなの、大好きな御父さんがそんなこと言わないで」
「リ、リン……」
「村の掟が私に死を至らしめるなら、甘んじてそれに私は受けるわ、それで、もし、神様に会えたなら、パンチ食らわせて、こんな馬鹿な儀式はもうやめなさいと言ってやるわよ」
「だ――だから、私は死ぬんじゃない、神様を殴りに行くのよ。そう考えればいいのよ」
「……………」
父は沈黙する、これ以上自分が何かを言えば娘の覚悟を踏みにじりそうだったから、リンの親では無くなってしまう様な、もちろん、血がつながっているのでリンの親なのだが、もっと違う何かがこの子を否定してしまいそうな、娘と言う存在を否定してしまいそうな心境だった。
今、娘が笑って何かをやり遂げようと言うのだ、父として、何かを言わないといけない気がした。
「あぁ、思いっきり殴ってやれ、我が家自慢の黄金の右アッパーをお見舞いしてやれ」
馬鹿げている。なにを自分は言っているんだと頭で否定しても、心が、思いが止まらなかった。
――こんなお父さんを許してくれ。
心でそう何度も思った。
「うん!」
できるならば、生贄を変わってやりたい。そんな思いを胸に押し込めると息ができないほど、苦しく、嗚咽を出しそうなほど喉に言葉がつっかえてしまう。
「……お主ら親子を見ていると私情でこの儀式を止めてしまいそうじゃ……」
「多分、こう言った質問は意味がないかもしれのが、言ってもいいかい?」
そこに若い村人が立ちあがり、発言する。
「なんじゃ?」
「まず、生贄は変われるのかい?」
「無理じゃ」
どこかに盲点がないか、誰も犠牲にならなくなる儀式の仕方があるハズとそんな思いでの発言だった。
「なら、次、儀式の決行日までに生贄の身柄は確保。あるいは拘束される様な事はあるのか?」
「決行日は来週のちょうどこの時間に行われる。それまでに、拘束、又は、行動を制限すると言った事は一切ない」
「次、生贄とは具体的に何だ? 人は死ぬのか?」
「そこまでは、知らない」
「次だ。神はどこに居るのだ? そもそも存在するのか?」
神とは偶像。もし存在がしないのであればこの儀式自体の意味をなさなくなる。村長一人のでっち上げになる。
「我々の神はいる。確かに存在するが、おられる場所が険しすぎてだれも近づく事すら出来ぬ場所。目視で見たモノはおらん。無論私もじゃ、が私は聖域で聞える声で、存在を、神と呼ぶにふさわしい力を確認しておる」
誰もが険しすぎて近づかぬ場所と言えばココら辺では一つしか無かった。
「エガレン高海山か……」
エガレン高海山。誰一人としてそこには近づこうとはしない。海の山と書くこの山は海の中に居る様に息ができなく、圧倒的に酸素が足りない事による平衡感覚の不調とほぼ絶対と言える確率で高山病が起こる。それこそ、一度でも登ろうとしたならば帰ってはこられない。今まで無謀にも挑もうとした愚者が死屍累々とする山。村人一人、獣一匹近づこうとしない山。
「……村長、どうでもいい質問に答えて下さりありがとうございます」
「よい、お主も同族が死ぬのを見たくない一心の事だろう」
「……はい……」
「それでは、来週のこの時まで、解散じゃ、おつかれさまじゃ、皆の衆、このあと食事を用意しておるので皆それを食べて行くように。それと、リン達は食べずにすぐ家に帰えるのじゃぞ」
「うん、それじゃぁね、おばあちゃん」
「あぁ、丘の上によくいる子にもよろしくなぁ」
「……う、うん」
だが、リンは正直に現状を言うか言うまいか迷っていた。
言ってはいけない気がしたから……。
皆様、お疲れさまでした。
目が疲れぬよう少し休まれてはいかがでしょう。
……いらぬお世話と申す御仁は無理をなさらぬよう
それでは、お疲れさまでした。次の投稿は作者の近衛えのこ氏と相談して
できるだけ早く、且つ、面白くしていきたいと思います。
近衛えのこ氏は文法が苦手なそうなので不安が否めませんね。
長々と書きました。それでは、御身体にお気お付け下さい。