空想プロローグ 1
初の連載……だと思われます。
温かい目で見てください
ここは果てから果てへの往復を繰り返す機関車。
名前は「ギフト」
何処かの言葉で、《贈り物》と言う意味らしいがさて、意味に意図があるかは不明である。
『ご到着いたしました、ローデン、ローデンです。へヴァンデ行きは乗り換えです』
機関車内に放送がかかる、今まで乗っていた人と今から乗ってくる人が狭い扉で混ざり合う。
窓から見えるローデンの駅は、建物自体は近代的ではあるが、赤レンガの所も見え、何処か昔を思い出させてくれるそんな場所。
『扉が閉まります、お手などを挟まぬように』
どうやら、機関車の出発の時間が来たようだ。乗ってきた人々は開いている席に座る。
『最果ての地行き、特殊運行車に、ご乗車誠にありがとうございます。次は、アリツヅ、アリツヅでございます。アリツヅ附属病院に用のある方はおおりください』
機関車の出発は乗客の体を左右に揺らす。
『皆様に安心と安全、安眠と安穏を我が機関車は贈ります』
お決まりの機内放送を終える。
「それでは、レンリン副運転手、あとは任せますね」
そう言って、この列車の全権を握っているヴァーレン・ハートは車内を見回る為、運転を副運転手のレンリンと変わる。彼女とは、別の意味も含め長い付き合いでもある。
「任せておいてヴァーレン、あ、それと、変わるのはいつもの時間でいいかしら?」
「あぁ、いつもの時間でお願いするよ、それと、ローデンで乗ってきた実習生の面倒をお願いします」
「うん、そっちも任せておいて」
「君にはいつまで経っても頭は上がらないよ」
そうして、ヴァーレンは機関室のドアを閉めて、車内の点検と乗客とのコミにケーションを取りに歩いていく。
コツコツと磨き抜かれた革靴が音を立てた。
「あの~、そこの鉄道員さん」
車内を巡回中のヴァーレンを一人の杖のついた老婦が呼び止めた。
「はい、なんでしょうか?」
すぐにヴァーレンは老婦と同じ目線に成る為にしゃがみ、老婦からの呼び止めにこたえる。
「この一号車R一六七と言う部屋は何処にあるのですかねぇ」
老婦の質問は至って簡単な道案内だった。
「はい、一号車ですね。案内いたしますので、差し支えないようでしたらおんぶすると言う選択肢がありますが、よろしいですか」
「ご親切にどうも、なら、お言葉に甘えさせてもらうわね」
「私達、鉄道員はお客様第一なのでね、では、参りますね」
老婦を背負い一号車のR一六七室に向かう。
「あ、あと、私に孫がおるのですが、これがまた、本が好きでね」
「お孫さんがいらっしゃるのですか、それはいいですね」
笑みを浮かべる老婦は孫の話をしだした。
「色々な本が好きでね、最近では誰かの人生に遭った出来事の話が好きでね」
「感心しますね。私はそう言った子は好きですよ」
老婦が一つヴァーレンに提案した。
「ならどうでしょ、鉄道員さんの今まで会った事など、私の孫に話してもらえないでしょうか?」
「お孫さんが良ければ私はいいですよ」
そう言っている間にR一六七室に到着し、老婦をゆっくりと降ろす。
「ここがR一六七室です」
老婦のタメにドアを開けると、ドアの前に一人の少年が立っていた。
「あ、ばぁちゃんがやっときたぁ」
外見から判断するなら、少年の年は恐らく7歳だろう。
手には、先程、老婦が言っていたよう本が好きなのか、本を持っていた。
「あぁ、いたよぉ、この子がさっき言った本好きな孫じゃよ」
「この子ですか、とっても可愛いお孫さんですね」
「えぇ、自慢の孫ですよ」
ヴァーレンは少年の頭を撫でる、すると不思議と少年はヴァーレンになつき始めた。
「おじちゃん、だれぇ?」
少年の無邪気な笑顔がヴァーレンの痛い所を突く。
「お、おじっ、お客様――」
「おぉきゃくぅさまじゃなくて、僕はアダムって呼んで」
「失礼、ならアダム様、私はまだ二十四歳で、おじさんではないよ。お兄さんだ。いいかな、お・に・い・さ・ん。よく覚えておいてね」
「うん、おじちゃ……、じゃなくて、お兄ちゃん。わかったよぉ」
「良い子に出来ましたね。良い子には飴をあげますよ」
ヴァーレンは制服のポケットから、一つ飴を取りだして、アダムに手渡す。
その飴は金太郎飴、島国ニホンが誇る独特の飴だった。
「わぁ、すごーい。おばぁちゃん、見て、飴に顔があるよ!」
「えぇ、私も初めて見る飴だわ、こんなモノをもらっていいのかしら?」
確かにあまり一般の市場ではあまり見ない飴だが、ニホンに行けば当たり前に買えてしまう代物なので、そこまで心配される事でも無かった。
「大丈夫ですよ、それの飴はニホンって国では当たり前に売っていますし、この《ギフト》はニホンが長時間停車駅に入っているので止まりますから、その時また買えばいいの話ですから」
「ニホンですか、先行き短い老人が少し興味を持ってしまいましたよ」
「持てる事は良い事だと、私は思いますけどね」
ヴァーレンの言葉に老婦は照れくさく笑っていた。
……すいません