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白き御遣いと神子  作者: 木谷 亮
白き御遣いと聖なるお山
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第5話 人間のお世話

私の抜け毛付きベッドはそんなに臭いのか。

王子(仮称)は意識のないままに鼻を手で覆って寝ていた。……悪かったな!臭くて!



結局、巣穴に連れて来たのはいいものの、私は王子の処遇に困ってしまっていた。

明らかに具合悪そうだけど、獣の私にはどうしようもない。

かと言って、あのままあの場に放置していれば、王子の命は確実に失われていただろう。

前世の、人間の記憶がある私としては、そのままになんてしておけそうにもなかった。


(でもなぁ。病人の処置っていったら、やっぱりベッドに寝かせて、栄養ある物食べさせて―――――って私も栄養あるもの食いたいわ!)


前世の私ってお節介だったかなぁ、なんて思いながらもとりあえずせっせと葉っぱベッド第二弾を作成していく。

今作っている葉っぱベッドは王子専用のものだ。さすがに私の抜け毛付きベッドじゃ可哀想だしね。

それにそれ、私専用なの。

マイベッドなの。

ただの葉っぱの寄せ集めだろうが何だろうが、愛着のあるベッドだから他人には貸したくないわけ。


トットコ歩いて、巣穴の外へ。

背中の翼を大きくしてから腕で囲うような形に広げて、大雑把に集めた葉っぱを運搬する。

この翼って大きさが自在なのがいいよね!

さすがに狭い我が家では広げたままだと窮屈だから小さく小さーくしてるけど、こういうときにはとっても便利。

大体集め終わったら、巣穴のマイベッドの近くにドサァッと積み上げる。これで完成!ただの葉っぱの山と呼んではならない。あくまで「葉っぱベッド」だ。


王子を転がしてうつ伏せにし、その腹の下に頭を突っ込んで私の首の上に乗せると、新しく作ったベッドへと移動させる。

ゴロンと仰向けに生るように転がし、後ろ足で余った葉っぱを蹴り、王子の体の上にフンワリと覆うように葉っぱを乗せる。葉っぱしかないけど、毛布代わりだ。


王子のベッド作りを終え、私はマイベッドに腰を下ろすと「ガフゥッ」と溜息をついた。

はー、やれやれ。

我ながら面倒くさいものを拾っちゃったもんだ。




しばらく王子の様子を見ていたが、起きる気配が無いので私は出掛けることにした。

結局、目的だった野苺も食べられなかったし、今日の食料を確保せねばならない。

お手製の籠を口に咥え、王子を拾った河原近くの野苺ポイントへ向かう。


(おおー!あったあった、そこそこ生ってるじゃない)


予想通り、野苺は鈴なりに実を付けていた。

幾つもなっている苺のうち一つをそっと口に入れ、久しぶりの酸っぱ甘い味にウットリと酔いしれる。うーんウマイッ!

野苺はあまり腹には溜まらないが、その味は満足できるものなので私は好んで食べるほうだ。

前世が無類の苺好きであったことも、影響しているのかもしれない。

しばらくハグハグと口にしていたが、途中でハッと王子の存在を思い出した。


(何か、食べ物与えてやらないと)


ちょっと勿体ない気もしたが、野苺を蔦ごとブチッと引き千切って籠に入れる。それを何回か繰り返して、籠の3分の1ほどが埋まったところで野苺がなくなった。

籠いっぱいに、とはいかなかったが、とりあえずこれくらいあれば人間一人の食事にはなるだろう。

私は籠を口に咥えると「ウグゥルルルゥ…(王子起きたかなぁ…)」と独り言を呟きながら、再び巣穴のほうへと戻って行った。



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