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いまは緑色の芝生  作者: 三号


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ニュートン・アーキテクチャ

 え、どうしてって。それはですね、今日、友人に会うために玄関の扉を開けたんですよ。


 そうしたら、驚きました。扉を開けた外には川が流れてるじゃないですか。いやね、ご存知の通りここは海からも川からも山からも遠く離れた住宅地で、しかも七階なのですから、外に川なんか流れていないはずなんですよ。しかも驚くべき事に、玄関の一寸先はもう川が轟々と流れてるものですから、嗚呼、これはもう外には行けないと思いまして、一旦、扉を閉めましてね。


 暫くは部屋で悶々としておりましたが、いつまでも家に居るわけにも行くまい出かけなければと意を決しまして。再び扉を開けましたら、今度は外が吹雪ですよ。困りましたね、実際。夏なのに一面が雪景色なのですから。ええ、何とか出ようと思えば外に出れたのかもしれませんが。私、今までお話した事がなかったかもしれませんが寒いのが苦手で。季節は夏なので、冬用の衣料は箪笥の奥に仕舞っていましたので、それをいちいち出していては時間に間に合わない事は確実ですから、やはりもう一度、一旦、扉を閉めましてですね。


 それでも、家の中から出なければ友人には会いに行けないものですから、やむを得ずもう一度、扉を開けましたら。今度は外の一面が草原なのです。いや、遠くに山脈が見えたことは見えたのですが、それはもうどこまで行けば山になるのかわからないくらい遠くなので、一面が草原と言っても差し支えはないかと。これでは時間に間に合う事ができるわけありません。どこまで行けば電車に乗れるのかも分かったものではありませんから。そこで、また一旦、扉を閉めましてね。


 私は部屋の中で一人で困ってしまいました。どうやら私の部屋の扉からでは外に行けなくなってしまった様子なのです。


 仕方がありませんので、私はベランダから外に出ることにしたんですよ。私の部屋は集合住宅の七階ですが、これも今までどなたにもお話した事は無いのですが、実は私、空中に浮く事ができまして。はい、あまり長い時間は浮いていられないのですが、七階から降りる間くらいであれば問題ありませんから。


 そうしたら、あなたが隣りのベランダから声をかけるじゃありませんか。どうしたのですか、そのような恐ろしい顔をして私を見ないでください。嗚呼、あまり大きな声を出さないでくださいな。

 もうよろしいですか、時間に間に合わなくなるのでそろそろ出かけたいと思います。それでは。

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