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守ろうとした手のひらで
「歩くのって、愉しいね」
そう言った君の手のひらが心地よいくらいに涼しくて、僕は夢を視る。
こうして僕らが歩いていく先に何があるのかなんてわからないし、予想も出来ないけれど、きっとそれほど悲観するものじゃないんだとは感じる。
それは、ときどき曲がり道があって、気がついたら知らない場所に出ていたり、先を行く誰かが途中で止まっていたりするかもしれない。
しかし僕は、あるいは僕と君は歩き続けるのだろう。
それとも、歩き続けることが出来るのだろうかと問うべきだろうか。
迷えない道なんてない、迷わない迷路もないし、迷わずの森は存在しない。
いつかは行き止まりに辿り着くだろう。
こうして手を握り合って歩いていけることさえ、永遠なんかじゃない。
だけど、今この時くらいは、手を取り合ってふたりで歩み続けることが永遠に紡ぎ続けられるのだという夢を見ても、それはそれで、悪くないことだと考えれば、少なくとも落ち着ける。
そうして僕は、例えば、君と歩いているアスファルトと、遠くに見えるブナ林の足元に色づくつつじと、メモ用紙を挟んだクリップに嫉妬する。




