クリティドと二人で視察 ⑦
「クリティドはこうして寄り道をすることってよくあるんですか?」
私は馬の上から辺りを見渡しながら、クリティドにそう言って問いかける。
「あまりなかったな」
「そうなんですか?」
クリティドはこれまでも視察などによく向かっていたと思う。だけれどもこうして寄り道をすることはなかったみたい。なんだかそれが少しもったいないなと思ってしまった。
でもクリティドらしいと言えば、彼らしい。
「ああ。……でもたまにはこうして寄り道をするのはいいな」
「ふふっ、新たな楽しみが出来るのっていいことですよね。私、公爵夫人として一人で視察に行くことが出来るようになったら周りの何気ない光景でもあなたにお伝えしますわ。だからクリティドも話してくださいね?」
私はそう言いながら、クリティドの頬に手を伸ばす。密着していると、緊張する。本物の夫婦になってしばらく経つのに、こうして近づいていると胸が高鳴るわ。
クリティドはかっこよくて、一緒に居ればいるほどかっこいいなと胸がときめいて仕方がない。
「もちろんだ。……些細なことでもいいか? どういったことを言えば君が喜んでくれるか私には判断がつかない」
「ふふっ。もちろんですわ。そもそも、クリティドと話をするだけで楽しいので、どんな内容の話でもきっと喜んで聞くと思うの」
クリティドは自分がつまらない話をしてしまったらなんてそんなことを考えてしまっているのかも。
そんなことを心配しているだけでも、なんて可愛らしいのかしらとニマニマしてしまう。クリティドって私のことを大切にしてくださっているからこそ、私からの心象を気にしているのよね。
それを思うと何だか嬉しくなった。
クリティドと一緒に話しているだけで私は嬉しいから、きっとどんな話をされても楽しくなってしまう気しかない。
「本当にウェリタは可愛いな」
「まぁ、ありがとうございます。でも可愛いのはクリティドもよ?」
「どこに可愛い要素が?」
「私が楽しむ話をしたいって、そう望んでくれているところとか」
私がそう言って笑いかけると、クリティドは少し照れた様子だった。やっぱりクリティドって可愛い部分が結構あるのよね。
一緒に過ごせば過ごすほど可愛い姿が見られて、妻という立場は役得だなとそんな気持ちになった。
クリティドと話しながら、こんな素敵な場所に美しいクリティドが居ると本当に絵になるわ。
私が可愛いと口にすると、クリティドは照れた様子を見せる。
結婚してから何度も、「可愛い」って告げているのにこうなのだもの。やっぱりこういう姿を見るとときめく。
もちろん、普段のかっこいい姿もとても好きだけれども。
「こうして二人で寄り道をしたことはティアヒム達に話そうと思いますわ。きっと二人も私とクリティドが視察でどんなふうに過ごしているか知りたいはずだから」
なんだろう、今から帰るのも楽しみだわ。
結婚してからティアヒムとクリヒムと離れて過ごすことも初めてだから、早く帰って子供達にあいたいなとそんな気持ちにもなる。
「これまで視察のことを子供達に話したりなどはあまりしていなかった。……もったいないことをしていたかもしれない」
「そうなのですね。なら、これからどんなことでも話してみましょう。ティアヒムとクリヒムは、クリティドと沢山お喋り出来ると嬉しいはずですから」
クリティドは必要以上には喋らないタイプではあると思う。私が話しかけたら沢山話してくれるけれど。
だからこそ子供達との接し方も私が嫁ぐ前は最低限だったとも聞く。今はそうでもないけれどね。
「ああ。そうするつもりだ」
クリティドの可愛い部分って、素直な部分もあると思う。
私の言葉をこう……簡単に受け入れてしまうというか、そう言う部分も好きだなと思った。
それから私達は一旦、皆の元へと戻った。
もっとゆっくりしたい気持ちも当然あったけれど……それでもいつまでもここで過ごしていたら周りに迷惑をかけてしまうわ。
私達は此処に遊びに来たわけじゃない。
休暇で訪れているのならばもっとゆっくりも当然出来るけれど、今回はそうじゃないわ。
私は公爵夫人として一生懸命頑張ろうと思っているのだからきっちりしないと。
そう決意して戻った私達は薬草の群生地へと再び向かった。
しばらくして辿り着いたのだけど、魔物の姿があった。それに関してはすぐにクリティド達が対応してくれるのだった。
本当に流石だわ。今の、魔法なんて使えない私ではどうしようもない。剣術などでも使えれば別だろうけれど、そんな心得もないもの。
それにしても薬草の群生地には初めてけれど、圧巻だわ。




