パーティーと、親戚筋の女性①
今日はパーティーの当日、私は朝から少しだけ緊張している。
クリティド達が私の味方でいてくれると知っているから、問題は起こらないと思っているけれど。
私は公爵夫人として頑張っているつもりだけれども、なかなかうまく出来ているか不安にはなるの。だって私はただの子爵家令嬢でしかなかったのだもの。
まだまだ足りない部分も沢山ある。
公爵家に嫁いですぐのころは、自分の命が短いってそう思っていた。死んでしまう私がクーリヴェン公爵家に深く関わったり、入り込まない方がいいなんて思って……それで私は意図的にあんまり学ぼうとしなかった。
そのせいもあって今、少し苦労しているのよね。あの頃からもっと公爵夫人として学んでいればまた別だったんだろうけれど……!
でもそうはいっても仕方がないと言えば仕方がない。
あの頃の私は自分が生きながらえてこうして公爵夫人として生きていくことになるなんて全く考えていなかったのだもの。例え、運よく生きていられたとしても離縁することになるだろうってそう思っていた。
だからこそ、私はまだまだだわ。
「ふぅ……」
大きく息を吐いて、鏡に映る私のことを見る。
赤と黒の二色を使った少し大人っぽい印象のドレス。クリティドが自分の色を入れたいと言っていたから、こういう色になっているの。赤はクリティドの瞳の色だもの。
クリティドはそういう独占欲が強い。私はそれが嬉しくて、同時にクリティドにそう言われるほどに見合う私で居られているのだろうかという不安を感じたりもする。
もちろん、クリティドが望んでくれたのは私で、私自身が公爵夫人として生きて行こうと決めているのだからこそもっとしっかりしないと。
いつまでもうじうじして、自信がない状態というのも嫌だわ。
そうね、理想としては周り全てに認めてもらえるようになりたい。周りがどういおうとも、私達がそうであることを咎められる理由はない。だけれども認められた方がずっといいもの。
なんだろう、少し楽観的で現実が見えていないと言われるかもしれないけれどなるべく認められた方が私は嬉しい。
……高位貴族の争いに巻き込まれて、私はクリティドのことを殺すように命じられていた。
優しい人ばかりじゃなくて、そういった恐ろしい現実も沢山ある。
特にこの世界は前世よりもずっと危険なんだもの。あとはそうだわ、今後同じようなことが起こった際になんとか出来るようにしたいなってそうも思う。
私が色々と考え込んでいると、部屋の扉がノックされる。
入室の許可を出すと、クリティドと子供達の声が聞こえてきた。
「ウェリタ、綺麗だ」
真っすぐな目でそんなことを言われると、ドキドキしてしまう。
こうやって自分のことを肯定され続けて、綺麗だって言われ続けると本当に自分が絶世の美女にでもなってしまったかのようなそんな感覚になってしまったりするわ。とはいってもそんなことは分かっているけれども。
「母上、良くお似合いです」
「わー、綺麗!!」
ティアヒムとクリヒムがそう言ってにこにこと笑っている。
クリティドや子供達も私の衣装と合わせてあるのよね。こうやって家族全員が揃うとより一層際立つのも素敵よね。
嫁いだばかりの頃は、私はこんな風に本当の家族になれるなんて思ってもなかった。
でも今の私は、このクーリヴェン公爵家の一員になれたんだなと実感する度に私は嬉しくなる。
「クリティドも、ティアヒムもクリヒムもとっても似合っているわ」
本当に並んでいると一枚の絵画か何かのよう。ティアヒムとクリヒムが凄く可愛くて、つい抱きしめたくなった。
けれども着飾った状況で抱きしめたら、ドレスがしわしわになってしまう。
流石に侍女達の仕事を増やしたくないもの。今回は公爵家が主催のパーティーだから、少しぐらい遅れても誰も文句は言わないかもしれない。
ただそうして立場が以前とは異なったからといって、驕りたくはないなとは思っている。
私だったら……知り合いが立場が変わったからと以前よりも偉そうな態度をしていたら嫌だなと思ったりするから。
ただ公爵夫人として侮られ過ぎてもダメだと思うし、そういう匙加減って難しいんだろうなぁ。
そんなことを考えている私はクリティドに手を引かれて、そのままパーティーの場へと向かうことになった。
お父様達も参加なさるものだから、余計に楽しみだわ。
弟と一緒に参加するのって考えてみれば初めてだ。今はクーリヴェン公爵家からの支援があるから問題はないけれども、実家の子爵家はお金がなかったし、私もそもそもあまり社交界に出ることなかったから。
お父様達も楽しんでくれたら、とても嬉しいなと私はそんなことを考えた。
私も招待客たちに不快な思いをさせないように、頑張らないとね。




