父上と母上が仲良しで嬉しい~クリヒムside~
「兄上、母上のところ行こう!」
「いや、今は父上と話しているようだから、邪魔をするのはやめよう」
僕はクリヒム・クーリヴェン。公爵家の次男なの。
僕は父上と母上と、兄上が大好き。母上はいつもにこにこしているの。
僕はね、本当の母は知らないよ。僕を産んだ時に亡くなったんだって。そのことで何か言われることはあったけれど、僕は父上と兄上が居たから寂しいなんて感じることは一度もなかったんだ。
父上も兄上も、いつも優しい。
父上は魔法が凄くて、それであんまり表情は変わらないけれど僕たちのことをいつも大切にしてくれているんだ。
兄上もね、父上にそっくりなの。あんまり笑ったりしないけれど、時々ね、優しい笑みを浮かべてくれる。兄上は心を読む能力があるんだって、前に教えてもらった。
僕の会ったことのない本当の母は、兄上のことを嫌っていたって聞いた。兄上、凄く優しいのに!
母上にも兄上は「嫌われてしまうかも」「気持ち悪いと思われるかも」と心配していた。僕にもそうだった。
僕は兄上が大好きだよって言ったら、笑ってくれた。
僕はね、兄上の笑顔が好きだなって思う。母上もね、兄上のその力を気にしないって、寧ろ素敵だって言って抱きしめていた。僕はそれを見て嬉しかった。
兄上は母上に嫌われたらって不安そうだったもん。
僕は母上の身に何が起きていたかは正しくは知らない。ただ母上が大変な状況にあったんだっていうのは、あれだけ泣いていた母上を見たら分かった。
母上を部屋から出ないようにするって聞いた時にはよく分からなかった。ただ母上のことを傷つける人がいるから、守るためにとは聞いていた。
父上と兄上は、母上を助けるために一生懸命動いていた。僕は……父上や兄上のように何か出来ることがなかった。僕は落ち込んだけれど、父上と兄上から母上のことをよろしくって言われた。だから僕は母上となるべく一緒に居たんだ。
一人で部屋にいる母上は悲しそうな顔をしていた。何かを怖がっているみたいで、笑ってほしいと思った。
ずっとそういう顔をしていたけれど、父上が戻ってきてから母上は僕の好きな笑顔を見せていた。
僕と兄上は途中で退出になったけれど、兄上が言うには父上は母上のことが大好きなんだって。
「そっか。なら、兄上、一緒に遊ぼう」
「もちろん」
そんな会話を交わして、僕と兄上は一緒に魔法の練習を始める。
「父上が母上を好きなぐらい、母上が父上を好きになってくれたら母上がずっとここにいてくれるようになるから」
「……母上が父上を好きにならなかったら、母上、いなくなるかもなの?」
「クリヒム、そんな泣き出しそうな顔をしなくていい。父上が頑張るだろうから、母上はおそらくずっと私達の母上で居てくれるはずだ」
そう言って兄上は笑っている。
父上と母上は夫婦で、夫婦っていうのは好きな人同士がなるものなんだって兄上が言っていた。
でも父上と母上はそういう理由で結婚したわけじゃないから母上が父上のことを好きになってくれなければ、母上が別のところにいってしまうこともあるかもなんだって。
だから兄上は、父上に頑張ってほしいみたい。
「僕たちも父上と母上が仲良くなれるように何か出来るかな?」
「出来ると思う。……でも私たちが行動して逆に失敗したりするかもしれないし、ちゃんと考えないとなとは思うけれど」
兄上はそう言いながら、色々考えているみたい。
兄上はとても頭が良い。人の心を読めるからなのか、兄上って凄く大人みたいな時がある。
僕は兄上と一緒に魔法の練習をした後、屋敷の中へと戻る。
侍女達が母上がお菓子を用意してくれていると教えてくれた。父上と一緒にいたのではないかな? とそう思っていたのだけど、聞いてみたら一緒にお菓子作りをしていたみたい。
母上はお菓子を作ることが好きで、いつも美味しいものを作ってくれる。父上は母上と一緒に居たいから、お菓子作りをしているのかな? だって母上がやってくるまでは父上はお菓子を作ったりしていなかったもん。
僕は兄上と一緒に厨房へと向かうと、二人が楽しそうに作業をしていた。
「あら、ティアヒムとクリヒムも来たのね」
母上は僕たちの姿を見た途端、嬉しそうに笑った。
僕は母上のそういう表情を見ると、なんだか嬉しくなる。母上の笑顔って、僕、大好き。
父上もそうなんだろうなって思う。
だって父上は母上が笑っているのを見ると、凄く嬉しそうにしているから。
僕は兄上の言うように、父上のことを母上がもっと好きになってくれたらいいなと思う。
だって僕は母上にこの屋敷に居て欲しいと思うから。
それから母上と父上の作ったお菓子を四人で食べた。とても楽しかった。




