表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/67

嫁いできた妻に纏わる話 ②~クリティド視点~

 発覚した情報は胸糞悪くなるようなものだった。それでいて優しいウェリタがどれだけ苦しんでいたかと考えると胸が痛かった。



 ――ウェリタはバルダーシ公爵家から、私を殺すようにという密命を受けていた。




 実家への支援を盾にされていたことは分かった。それに……、ティアヒムがウェリタが記載していたという手紙の内容を確認してくれた。




 そこにはウェリタがバルダーシ公爵家から密命を受けていることを周りに話せないようにされていることやクーリヴェン公爵家が狙われていたことについてだけが書かれていたようだ。……ティアヒムの能力によって分かっているウェリタ自身のことをそこには一切書かれていなかった。

 ウェリタ自身がその手紙を書くことで身体を壊していることやこのまま彼女が私を殺さなければ亡くなってしまうこと……などが書かれていなかったのだ。





 ……そこにあったのは、私達に対する心配の気持ちばかりだった。なぜ、自分が大変な状況で、死ぬかもしれないのにウェリタは人のことばかりを心配できるのだろうか。

 もっと自分のことを考えて、助けてとそう口にしてくれればいいのに。

 ――そんな状況なので、ウェリタは私たちのことを心配しているようだ。





 ウェリタの様子は侍女達に確認しているが、不安そうにしているらしい。早く全て片付けて、ウェリタのことを安心させたいと私はそればかりを考えている。




 彼女の身体が心配だから医者に診て欲しいのに、それを拒絶しているようだ。

 それはこんな状況でも彼女は――気丈なのだ。怖いだろうに、不安だろうに、それでも……彼女は一人で戦おうとしている。

 ウェリタのことを縛る存在をどうにかしなければならないと私たちは動いている。




 まずはクーリヴェン公爵家に入り込んでいたバルダーシ公爵家の手の者達を捕縛した。




 これに関してはティアヒムの協力があり、早急に捕まえることが出来た。この者達は、ウェリタのことを度々脅していたようだ。本当に腹立たしい。

 彼らはバルダーシ公爵家に我が家の情報を様々流していたようだ。……これまでよく仕えてくれていると思っていたのに、不審な行動を一つもしていなかったからと気づけなかった私の不甲斐なさに何とも言えない気持ちになる。




 湖での魔物の出現も、バルダーシ公爵家が放ったものだったらしい。ウェリタが中々、私を殺そうとしないからと痺れをきらしたらしかった。






 バルダーシ公爵家をどうにかするために、王家への報告を早急に行った。正攻法で潰すのに十分な証拠が集まってきている。






 そもそもの話、ウェリタにかけられている魔法は国内で禁止されているものだ。それに公爵夫人であるウェリタを脅迫し、クーリヴェン公爵家に対して悪意を持って行動をしている存在だ。

 ほかにも法をいくつか犯しているというのも分かった。そもそもウェリタに辛い思いをさせている存在を私は許す気もなかったので、王家には私達クーリヴェン公爵家が責任を持ってバルダーシ公爵家を潰すことを宣言しておいた。

 ……昔からの知り合いである王家からの使者には、「公爵様が奥方をここまで大切にするとは思いませんでした」などと言われてしまった。





 私は彼女に笑っていて欲しい。花が咲くような愛らしい笑みを浮かべるウェリタが私に笑いかけてくれるのが喜ばしいと思う。

 湖で魔物が現れた時は、正直言ってその身体を抱きしめたいとさえ思った。

 躊躇して撫でるだけにとどまったけれど、それだけでも彼女は安心した様子を見せていた。




 私の悪い噂を彼女は知っているはずなのに。

 私の魔法を見ても、ただ綺麗などと言って笑って……私の力が彼女に向けられることがないと確信した様子で信用しきっている。




 私を殺すように密命を受けており、彼女からすれば……私は敵ともいえるだろうに。

 それに元々子爵令嬢だったウェリタからすれば、今回の件は突然巻き込まれた恐ろしいことなのだ。バルダーシ公爵家やクーリヴェン公爵家のことを憎んでもおかしくない。

 もっと自棄になってもおかしくない。




 彼女はまだ十八歳なのだ。自分が死にたくないという理由で、私を本気で殺そうとすることは出来たはずだ。すっかり私たちはウェリタに心を許してしまっていたのだから、そのタイミングなんて幾らでもあった。

 それでも彼女は、必死に抗っていたのだ。

 その強さにも惹かれてしまう。




 彼女のことを好ましく思っているだけではなくて、私は彼女のことを恋愛感情で好きなのだと思う。

 ウェリタのような女性を、私は知らないから。






 私は王家への手回しを終えた後、すぐにウェリタに魔法をかけている存在を捕縛した。

 魔法を使えないようにして、慎重にとらえた。



 調べた情報からその魔法師が、ウェリタの心臓を縛っていることが分かったから。私が下手を打てば、ウェリタが死んでしまう可能性があった。

 すぐさま、ウェリタにかけている魔法を解かせる。




 愚かにも「解いてほしくば、私の言うことを聞け」などと交渉をしてこようとしたので、徹底的に痛めつけてそんな戯言を言わないようにさせた。




 ウェリタの魔法を解くには少し時間がかかるらしい。

 その間にバルダーシ公爵家を潰すために動いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いよいよバルダーシ公爵家へのKA・CHI・KO・MIですねwktk
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ