旦那様と、子供達とクッキーを食べる。
「父上、私は今――」
「父上、あのね――」
私は旦那様に一生懸命話しかけている子供達を見ながら、クッキーを口にする。
美味しいわ。味もそうなのだけど、目の前で嬉しそうに旦那様に話しかけている子供達を見ているとより一層そう感じるわ。だってこんなに素敵な家族を見ているだけで嬉しいもの。
私は基本的に黙って話を聞いているわ。家族の団らんを邪魔したくないと思っているから。
旦那様も子供達に見せる視線が穏やかで、そういう父親の一面がいいなと思ったりする。
「……ウェリタさん」
私がにこにこしながら親子の様子を見守っていたら、急にティアヒムがこちらを見る。ジト目で何か言いたそうにしている。
「なにかしら?」
「……どうしてそんなに笑っているんですか」
「素敵な家族だなと思ったのよ。見ているだけで幸せな気持ちになるわ」
素直にそう口にすると、なぜだかティアヒムは何か言いたそうな顔をする。私が何か気に障ることでも言ってしまったかしら。
「父上」
ティアヒムは旦那様の方を何か言いたそうに見る。
なぜかアイコンタクトで旦那様とティアヒムは何か分かり合ったようだ。仲が良い親子だからこそかしらね。旦那様単品も、子供達だけも見ていて嬉しくなるけれど、やっぱり親子三人そろっているとより一層こう……相乗効果というか、素敵な家族感が増すわ。
「ウェリタ」
「はい。なんでしょうか?」
「……君も家族だ。だから、見てないで会話に交ざるといい」
そんなことを言われて私は少し驚く。
結婚はしたものの、そんな風に言われるとは思ってもいなかった。それに旦那様は私が二か月ほどで此処を去ろうとしていることを知っているはずなのに……それでもこんな風に言うのは旦那様の意思というより、ティアヒムとクリヒムの前だからかな。
それにしてもティアヒムは私の言葉に、私も家族なのにと思ってくれたのだろうか。うん、なんて可愛いのだろう。
「そうですわね。じゃあ交ざらせてもらいますわ」
私はそう口にして、会話に交ざることにした。
「ティアヒムとクリヒムにこの前、魔法を見せてもらったのです。二人とも凄かったのです。旦那様も子供のころから魔法が得意だったのですか?」
何を話そうかと考えて、真っ先に話題として思い浮かんだのは魔法の話だった。
ティアヒムとクリヒムの魔法はとても素晴らしかったわ。やっぱり旦那様も昔からそうだったのかしら。
「いや、私は昔は魔法が得意ではなかった」
「え、そうなのですか?」
旦那様の言葉にティアヒムが反応を示す。クリヒムも驚いた様子だ。
なんだか私の勝手な想像だと旦那様は昔から魔法が得意なイメージだった。今、物凄い魔法の使い手だと旦那様は噂されている。それだけの結果を出している。
それって凄い事だわ。
元々不得意だった魔法をそんな風に言われるほど得意になるまでにはどれだけの努力をしてきたんだろう? 私はそうやって出来ないことを出来るようになった人たちのことを素直に尊敬する。
「ああ。ある時、コツを掴んでからは上手く使えるようにはなったが、それまでは上手くいかなかった」
「そうなんですね……」
「父上、魔法凄く得意なのに、そうだったんだ」
旦那様の言葉にティアヒムとクリヒムはそれぞれ反応を示している。
「幼い旦那様が努力をした結果が、今なのでしょうね。とても素晴らしいと思います。旦那様は氷属性の魔法も得意なんですよね? 難しいと言われる属性の魔法を使いこなせるなんて流石ですわ」
氷属性の魔法は結構貴重だったりする。例えば私は水属性の魔法は使えるけれど、氷の魔法は使えない。
操作が難しいと言われている魔法を使いこなしているというだけでも、旦那様は凄い。
何度考えてもこんなに魔法が得意で、強い旦那様を殺そうとしているバルダーシ公爵家って考えなしよね。
さっさと諦めてくれたらいいのに……。
きっと理屈ではなくて、旦那様が居ることを邪魔には思っているのだろうけれど。
「きっととても素晴らしいものなのでしょうね」
想像しただけで気分が高揚してくる。私はやっぱり魔法が好きなんだなと実感する。
「ウェリタさんは父上の魔法、見たことないんだよね? 父上、ウェリタさんにも父上の魔法見せてみて」
私の言葉を聞いたクリヒムが突然そんなことを言い始めた。
私の本音を言えば、旦那様の魔法を見たいと思っていたからありがたい申し出だけど……、
「クリヒム、旦那様のお手を煩わせ――」
流石に忙しい旦那様の邪魔をするわけにはいかないとそう口にしようとする。
だけど、その最中に「構わない」という旦那様の声が聞こえてきた。
――そういうわけで、私は旦那様の魔法を見せてもらうことになった。




