子供達とお喋りをする
「ウェリタさん、父上にもお菓子持って行ってるんだよね?」
「そうよ?」
今日は、子供達と一緒にまたお菓子を食べている。
私の作ったものを美味しいと言って口にしてもらえるだけでも、幸せな気持ちでいっぱいね。
クリヒムはいつもにこにこしていて、なんというかその笑顔を見ているとなんだって叶えてあげたくなるわ。もちろん、保護者の立場としてはそれではいけないのは分かっているけれどね。
でもクリヒムってば凄く良い子なのよ!
なんというか無邪気で、愛らしくて……だけど何というか、周りを困らせるような我儘は言わないというか。そういう優しさを実感すると、やっぱり父親である旦那様の育て方が良いのかしらなんて思う。
「だったら父上も交ぜてお喋りしたいな」
「クリヒム、父上は忙しくなさっている。急には無理だと思う」
クリヒムの提案はティアヒムにばっさりとそう言われていた。
実際に公爵様は広大な公爵領をまとめ上げるためにいつも忙しくなさっている。……本来ならというか、本物の公爵夫人ならばその公務もしなければならないことだ。だからちょっとだけ忙しい旦那様の助けになれないことは申し訳なく思う。
でもすぐに去る身で中途半端にそういうものに関わるのはどうかと思うのよね。機密事項も沢山あるだろうし。やっぱりそうね、代わりに旦那様を沢山労わろう。あとは旦那様の負担にはならないようにしないと……。
「んー。だったらどこかで時間もらって一緒に食べたいな」
「それなら大丈夫だと思う。父上に聞いておく」
「やった。ありがとう、兄上!」
ティアヒムも本当に良いお兄ちゃんって感じよね。こうやって子供達が仲良く過ごしているのを見ているだけで頬が緩むわ。可愛いもの。
「旦那様と一緒は今度にしましょうね。今日は私だけで満足してくれると嬉しいわ」
「うん! ウェリタさんと一緒にお喋りするのも楽しいから満足」
「そう言ってもらえて嬉しいわ。私もティアヒムとクリヒムと一緒にこうしてお喋りをするのが毎日の楽しみなの」
クリヒムと目を合わせてにっこりと笑う。そうすれば、クリヒムはにこにこと笑いながら視線を返してくれる。
「……あなたは、大げさすぎです」
「あら、全く大げさじゃなくて本心だわ。私、ティアヒムとクリヒムと一緒に過ごせるのが本当に楽しいもの」
「あなたは父上の奥さんなのですから、父上と過ごすのが楽しみというべきでは?」
「もちろん、旦那様と一緒に過ごすのも楽しいわ。旦那様って本当に子供思いで優しい方よね」
大げさだなんてティアヒムには言われてしまったけれど、全く以てそんなことはないわ。この限られた人生でこんなに可愛い子供達と仲良く出来るなんて幸せだもの。もちろん、旦那様と話すのも楽しいわ。
「子供思い? 父上と僕たちの話しているの?」
「ええ。そうよ。旦那様とはいつも二人のことばかり話しているの」
クリヒムの言葉にそう答えると、子供たちは少し驚いた様子を見せる。どうしてそんな風に驚いているのかしら?
「父上、そんなに話しているんだ……」
「予想外だった?」
「うん。父上は僕たちのこと大切にしてくれてるけど、忙しそうだから」
そう口にするクリヒムを見て、もしかしたらティアヒムもクリヒムも旦那様が忙しそうだからと色々と遠慮してしまっているのかなとは思った。
先ほどクリヒムが旦那様も一緒がいいと口にしたのは……そういうゆっくりする時間がとれてなかったことの表れなのかも。私と旦那様が一緒にお喋りをしているのを羨ましく思っているのかも?
旦那様もそういう感情には疎そうだし、自分から子供達とゆっくりお茶をするなんてしなさそうだものね。
でも私との話題は大体が子供達のことで、それだけ大切にしているってことだもの。きっと旦那様って誘ったら幾らでもティアヒムとクリヒムとも過ごしてくれるはずだわ。
私が此処にいる間に旦那様と子供達の仲がどんどん詰まってくれたら私は嬉しいと思うの。
バルダーシ公爵は私という捨て駒が失敗した所で、この家に手を出そうとはするだろう。手紙でその情報は旦那様に流すつもりではいるけれど……、何かあった時にクーリヴェン公爵家が結束している方がいいものね。
「ティアヒム、クリヒム。一緒にお菓子を作らない?」
私がそう提案すると、二人は驚いた顔になる。そんな提案をされるとは思わなかったんだろうな。それにしてもその顔も可愛いわ。
「お菓子を?」
「僕たちも?」
「ええ。私はいつも旦那様とお喋りをする時は作ったお菓子を持っていくの。だから一緒に作って持っていくのはどうかなと思ったの。旦那様も二人がお菓子を作ってくれたらきっと喜ぶと思うわ」
我ながらなんて良い提案かしら。
可愛い子供達が旦那様にお菓子を持っていったら、それも手作りだったら――きっと旦那様は優しい笑顔でも浮かべるのではないかしら。うん、見たいわ。
「でもそんなことしたことありません」
「上手に、出来るかな?」
「失敗しても大丈夫よ。失敗作は私が食べるもの」
私がそう言ってにっこり笑えば、ティアヒムには呆れた顔をされてしまった。結局二人は私の提案にのってくれた。
子供達と一緒にお菓子を作るの楽しみだわ。




