クリスティーナちゃんの本性(思てたんと違う)
「ふふふっ、ローズガーデン邸の庭にはさすがに劣りますけど、王宮の庭も素敵ですねっ! 美しい薔薇に囲まれてのアフタヌーンティー。全女の子の夢って感じですっ♪」
ローズガーデン邸によく似た、紅薔薇咲き誇る王宮の庭園にて。
日の当たらないガーデンテーブルにティーセットを並べたクリスティーナちゃんは、穏やかに微笑んで紅茶に口をつけた。
「……」
わたしは目の前に置かれたティーカップをちらりと見て、ごくりと唾を飲む。
推しの一人――クリスティーナちゃんが入れてくれた紅茶だ。飲みたくないわけがない。けれど、今のクリスティーナちゃんは敵か味方かまったく判断がつかない。
なら、物凄く口惜しいし血反吐をゲロりそうだけど、飲むわけには――。
「ロザリーちゃん、紅茶お気に召しませんでしたっ?」
「いや~……そういうわけじゃないんだけど……」
「あたしが淹れた紅茶、飲んでくれないんですか……?」
「うっ!」
身を乗り出したクリスティーナちゃんが、上目遣いで覗き込んでくるっ!
新緑色の瞳がキラキラと細かい光を放っていて、サラサラの銀髪がふわっと広がって、あっ、お花の甘くていい香り……。肌きめ細かっ、色白っ、唇とぅるとぅるっ! でも、それ以上屈まれると谷間が見えちゃ……。
「飲んで、くれないの……?」
「飲みまーーーーーす!」
ぷは~っ。一気飲みした。なんか懐かしい味がした。実に美味。ベロやけどした……。
「あぢぢ……」
「ははっ、良い飲みっぷり! ……じゃなくて。そろそろ本題に移りましょうかっ♪」
ふーっふーっと舌を冷ますわたしを見て、快活に笑ったクリスティーナちゃん。彼女は持ち上げかけたティーカップをソーサーに戻して、指を組んだ。
「で、何から聞きたい? ――ですかっ♪」
指を組んだまま小首を傾げ、クリスティーナちゃんは目を細めて妖し気に微笑んだ。
その気迫を前に、またごくりと生唾を飲む。
「じゃあ、さっき言ってたこと――お母さまにもう一度会いたいか、っていうのは何?」
「それは……まだ秘密です♪」
「あれえっ!? なんでも教えてくれる感じじゃないの!?」
「はい、違いますっ♪ それは最後の交渉材料ですので、こんな初期段階でおいそれと言うわけないじゃないですか。まあ、ロザリーちゃんがあたしたちの仲間になってくれるっていうなら、教えてあげますけどっ?」
「んん……それはできないかな。わたしはこういう場面では絶対に、女の子に噓をつかないし、できない約束はしないから。敵かもしれないけどさ、わたしはクリスティーナちゃんにも誠実でいたいんだよね」
「そういうとこ、ほんと調子狂うな……。まるで、アイツみたいだ」
「え? え、え??」
昔を懐かしむように目を細めたクリスティーナちゃんは、瞠目したわたしの頬を撫ぜて、愛おしそうに爽やかに笑った。
きゅーっと、顔が熱くなる。
「はははっ、鳩が豆鉄砲を食ったみてえ……ですっ」
「……」
「……きゅ、きゅるん♡」
「……」
「いや、手遅れか」
「手遅れだね」
「だろーな」
はあ……と重いため息を吐き出して、クリスティーナちゃんはどかっと深く椅子にもたれかかった。わしゃわしゃとかきあげた髪を豪快に掻く様子を見るに、ゲームでの純真無垢な聖女の面影は感じられない。
王宮のベッドで初めて会話した時の違和感が、明確な形をもって胸中に湧き上がる。
――やっぱり、この子は“クリスティーナちゃん”じゃない。
「……えー、じゃあ演技疲れたから素でしゃべってい? どーにも、女子っぽいしゃべり方って苦手なんだよな」
「いや、それはいいけどさ……急にキャラ変えるじゃん。もうキャラ崩壊とか、正体とか隠す気ないの? ……わたしと同じで、あなたも前世持ちなんだよね?」
内心いろんな意味でドキドキしながら問いかければ、クリスティーナちゃんはニヤッと片側だけ口角を吊り上げた。
「おー? あったりー。勘いーじゃん。まあまあ、そこら辺ももろもろ今から説明すっから、内緒にしてくれよ? オンナノコの秘密も、ロザリーちゃんなら守ってくれるよなっ♪」
「うーん、場合によるかも。ルキウスさまたちに隠し事作りたくないし」
「ほんと噓つけねーのな」
「うん」
くすっと吹き出したクリスティーナちゃんが、ティーカップを傾けて喉を潤す。
「んーじゃあ、俺主導で話進めるか。その方がわかりやすいだろーし」
「うん……ん? クリスティーナちゃん、俺っ娘なの!? 銀髪で見た目清楚なシスターが実は俺っ娘……? これはアリだな。将来ワイン片手に懺悔聞いてそう。アリすぎる」
「いーや。実は男の子かもしんねーぜ?」
「え、そうなの!? 前世が男の子で、身体は女の子ってこと!? いや、それとももしかして……」
ぐぐぐぐぐ……と、視線を下腹部の方へと下げる。黒いミニスカートと、食い込んだガーターベルトが映える白いおみ足のその奥。視線の意図を察してか、クリスティーナちゃんが煽情的に脚を組み替える。
ごくり。もしかして、そのショーツの奥には……もしかして、もしかしたらなんてことが――。
「なーに想像してんの? 変態♡」
「ひぎゃっ!」
ばちんっ、とおでこに衝撃が走り、わたしは目をばってんにして額を抑えた。こ、こいつ、でこぴんしやがった……!
「はは」
しかも、痛みにうめくわたしを見て随分と愉しそうに嗤ってるし、原作のクリスティーナちゃんに比べて性格が悪すぎる。そもそも原作のクリスティーナちゃんは稀代の聖女なわけで、性格の良さでは誰も敵わないんだけれども!
それにしたって、この子はいじわるだ!!
「うう、いじめっ子め……」
「負け犬の遠吠えみたいでかあいーねえ」
「ぬぐぐぐぐぐぐぐぐ……」
ニヤニヤと揶揄うように熱っぽい目をするクリスティーナちゃんに言い返すこともできず、たじたじと歯を食いしばる。誰が負け犬だ。まだ負けてないが???
「……」
でも、こうやって接してみると、クリスティーナちゃんの性格は少し男の子寄りな気がする。体については……ちょっと深く考えないでおこう。頬っぺた熱くなってきたし、クリスティーナちゃんがニタニタとこっちを見てるし。
「あれ、まだ俺の性別が気になっちゃってる感じ? えっち♡」
「んなっ! いや、ち、ちちちちちちちちがいますけどどどどど???」
「うわ、噓つくのヘッタクソすぎ。ウケる」
「ウケないが?? いたって真剣だが???」
「ははは。で、どっちだと思ってんの? 性別」
「え、暫定男の子……?」
「へえ。俺のカラダ、“生えてる”って思って見てるんだ?」
「なっ、いやちがっ、そっちじゃなくて……!」
「っ、ふふ。顔真っ赤じゃん。さすがに免疫なさすぎだろ。あ、婚約者が女の子になっちゃったからまだ見れてねーのか。それとも前世からか? ……そんなに気になんなら、見てみる?」
「なっ、」
挑発的に笑ったクリスティーナちゃんが、短いスカートの裾を摘まんでたくし上げる。引き締まった太ももの付け根が、黒いレースが、あらわになる。
ダメだ。これはやばい。刺激が強すぎる。性別がどっちであれ、こんな光景を見せ続けられたら、鼻血の出血多量で死にかねない。ヴァンパイアがそんな死に方をするなんて、末代までの恥だ。それなのに、視線を逸らすことができない!
「はぁ……はぁ……」
呼吸がまとまらない。脳みそが茹で上がりそうだ。
やばい。死ぬ。
「……なーんて」
「え?」
「さすがに冗談に決まってんだろ。俺が“生えてる”かはナーイショ♡」
摘まみ上げたスカートをぱっと離したクリスティーナちゃんは、唇に人差し指を当ててチェシャ猫のように意地悪な顔で笑った。
「は、は~~~~~~~っ!?」
「声でか。そんなに見たかった? 俺の――」
「言わなくていいから!!! 見ない!! 興味ない!! や!!!」
「ごめんって。ちょっと揶揄いすぎたわ」
一ミリも申し訳ないとは思っていなさそうな面で、クリスティーナちゃんが手を合わせる。ほんとに、この子はいろんな意味で油断ならない。
「ほんとだよ、まったくもう……」
「ねー怒んないでよ。お詫びに俺の正体教えるからさ」
「え? 正体って?」
頬杖をついたクリスティーナちゃんの瞳が鋭く光って、わたしはドキッと息を飲んだ。庭を走る風が、さらさらと長い銀髪とマリアベールを揺らす。
「――俺はね、“愛飢え乙女”の作者なんだよ」
「…………は?」
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はい!
今回はクリスティーナちゃんのせいで一段とセンシティブになっちゃいましたね~。
あまりにも筆が悪ノリしちゃって……えへへ。
クリスティーナちゃんの体と前世の性別については、ナイショ♡とのことですので、私からも黙秘を貫かせていただきます。
俺っ娘なのか、男の子なのか……生えてるのか、生えてないのか……。
全ては皆さまのご想像にお任せ致します!!!
ちなみになんですが、メインキャラのS度は、
ルキウスさま>クリスティーナちゃん>ロゼッタ>ロザリー>>>ランスくん
って感じです。みんな違ってみんなかわいいね。
さてさて、クリスティーナちゃんの衝撃の正体と本性も明かされましたことで、次回に続きます!!!
来週も見てくださいませ!!!
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