キマイラキッズ
おはようございます。
今日は何日なのか分かりません。
それはともかくとして…狭い。
何が狭いかって、この巣穴が狭い。
なんていうか…とにかく狭いんだ。
これはきっと、キマイラベビーからキマイラキッズになった事で、体が大きくなった弊害だろう。
それはもう、すごく狭い。
ぎゅぎゅぅ~、という効果音が聞こえそうなくらい窮屈で何とか体を巣穴から出すと、言い表しようのない解放感で気分がいっぱいになった。
すると足元に複数の生き物の感覚を感じ視線を下す。
そこには小さな子ウサギたちが居て、大きくなった私の脚に体を擦り付けてる。
…君達ちょっとなつき過ぎじゃないかい?
可愛らしい子ウサギの戯れに付き合いつつ、私はずっと気になっていたステータスを確認する。
◆名前 無し
種族 キマイラキッズ
レベル 1/30
HP 253/253
MP 80/80
筋力 189
防御 233
精神 102
防魔 223
素早さ 177
スキル 『鑑定』『成長補正』『爪Lv2』『牙Lv1』『咆哮Lv1』『気配感知Lv2』『隠密Lv1』『筋力強化Lv1』『防御強化Lv1』『素早さ強化Lv1』『思考加速Lv1』『貯蓄Lv1』『火耐性Lv1』『状態異常耐性Lv1』
加護 『癒しの加護』『転生の恩恵』
スキルポイント1
◆加護『転生の恩恵・モンスター図鑑』発動
『キマイラキッズ
低難度モンスターの一種成長したキマイラの未成熟個体。未成熟と言えど既にキマイラの片鱗を見せており、また攻撃性も高いため非常に危険。炎と状態異常に耐性を持ち、毒も食す雑食性で火を恐れない』
えっ?
めちゃめちゃ強くなってる!?
ステータスが全体的に倍以上になってるし、今はあんまり使えない火耐性にかなりありがたい状態異常耐性がある。
な~んだ!特殊進化しなくても十分最強じゃん!
今ならブラックウルフに負ける気がしない。
レットムーンベア?何それどんな化け物?
とにかく一気に気が大きくなった!
早速雪辱を晴らしに行きますか!ブラックウルフ!
――と、意気込んだはいいものの。
あ、あいつらやべー!
通りでレッドムーンベアみたいな化け物が居る中で自分の縄張りを守れるわけだ正直舐めてた。
あいつら一匹の強さは私には及ばない。
私の方が、今は強い。
でも、あいつらの恐ろしいところは数の暴力。
何あれ?軽く100はいたんだけど?
手始めに3匹の群れを見つけたから襲ったら、遠吠えしやがったの。
とりあえず3匹は倒したけどさ?
その後次から次へと襲ってくるわけ。
逐次投入みたいな感じで少しずつ来てくれたおかげで何とか対処したけど…それでも100匹近くに襲われたら無理。
何匹倒したかわかんないけど、とにかくそこら中にブラックウルフの死体が散乱するくらいには倒したところで無理だって思って逃げた。
でもね?あいつら縄張りを抜けても追いかけて来るんだもの。
その時気配感知で探っただけでも100はいたね。
ホントにおっかない。
そりゃあ、縄張りの維持とか出来るよねって。
…でも、私はあれでもマシだって考えてる。
あの規模の群れを率いることが出来るって事は、相当なリーダーシップを持つボスがいる。
野生動物の場合、それは力だ。
途中私に近いステータスを持つブラックウルフも居たし…おそらくあの群れのボスはもっと強い。
なんだったらレッドムーンベア並みの化け物なんじゃないかって思ってる。
それならレッドムーンベアがブラックウルフを襲わないのも納得だし。
とりあえずブラックウルフやレッドムーンベアの話はここまで。
今はブラックウルフの群れからの攻撃で受けた傷を治してるところ。
癒しの加護様様だよホント。
まさかブラックウルフ相手にここまでケガするとは思わなかった。
でもおかげでレベルが一気に8まで上がった。
また新しいスキルを取得して、次の狩りを始めないとね。
あいつらのせいで、貯蓄で貯めてたエネルギーをかなり消費した。
しかも、あいつらから逃げるために死体は置いてきちゃったし…何か生き物を狩って餌を得ないとヤバイ。
そんな事を考えていると、私の気配感知に反応アリ。
体を起こしてその気配のある方へ進むと…そこには丸々と太ったイノシシが居た。
◆
名前 無し
種族 ビッグボア
レベル 4/20
HP 240/240
MP 23/23
筋力 283
防御 179
精神 21
防魔 151
素早さ 223
スキル『突進Lv3』『剛毛Lv3』『石頭Lv1』
スキルポイント14
◆加護『転生の恩恵・モンスター図鑑』発動
『ビックボア
低難度猪型モンスターの一種。硬い頭と高い物理ステータスから来る突進は格上のモンスターさえ倒す。雑食性ではあるが、基本的に葉っぱや木の実、キノコなどを食べる』
説明の通り、物理関連のステータスが高いね。
攻撃力に直結する筋力なんかは、私よりもずっと高い。
でも、総合的に見れば私の敵じゃないね。
何より…スキル構成や説明からどういう対処をすればいいのかわかる。
ビックボアの前に出た私は、木を背に息を吸い込み…
『ガアアアアアアアアアア!!!!』
渾身の咆哮をお見舞いする。
空気がビリビリと振動し、ビックボアは少し後ずさる。
しかしすぐに歩みを止めると数回地面を蹴り、突進の構えを取った。
そして、その高い物理ステータスに任せて高速で突進してくる。
アレは確かに当たったらヤバそうだ。
当たったら、ね?
ビッグボアが迫ってくるギリギリでジャンプをすると、奴は見事に木に激突した。
激突した木は大きく揺れ、幹にヒビが入っている。
大した破壊力だけど…それで自分がフラフラになるのは不味いんじゃないか?
千鳥足なビッグボアにこちらも体当たりをお見舞いして転倒させると、鋭い牙をビッグボアの喉元に突き立てる。
今の私はベビーだった頃の倍以上に大きい。
故に牙の長さも口の大きさも倍以上。
長く鋭い牙がビッグボアの首の肉に深く深く突き刺さる。
それにビッグボアは大層暴れだし、筋力で劣る私はやばくなる前に逃げる。
私が離れたことでビッグボアはすぐさま逃げ出し、森の奥へ消えていく。
素早さも私以上だから追い付けないけど…あんな手負いの獣。
そう遠くへは逃げられないし、追いかけるのも楽。
血の跡をたどってゆっくり追いかけると、巣穴らしき場所でぐったりしているビッグボア。
これ以上苦しめないためにも、私はビッグボアにとどめを刺す。
そして、動かなくなったビッグボアを骨だけに変えて一旦巣穴に戻る。
…蛇よりは美味しかったけど、ビッグって名前に着く割には大きくなかった。
せいぜい前世の猪よりちょっと大きいくらい。
それでも私よりは大きい体してたけど、蛇の腹の持ち具合に対してそんなにストックは増えてない。
貯蓄のキャパはまだまだあるし、どこかでいっぱいにしたいね。