スキル
フォレストスライムを倒してから、私は日が昇っている間ずっと獲物を探し回った。
その戦績は、フォレストスライム3匹。
最初を合わせれば4匹だ。
レベルは3から7まで上がり、トントン拍子で強くなれた。
成長補正様々だね。
んで、何とかウサギの巣穴まで帰ってきたんだけど……何故かやたらと懐いている子ウサギ達に囲まれながら、巣穴の中で自分のステータスとにらめっこする。
◆名前 無し
種族 キマイラベビー
レベル 7/10
HP 91/91
MP 25/25
筋力 60
防御 68
精神 26
防魔 61
素早さ 59
スキル 『鑑定』『成長補正』『爪Lv1』
加護 『癒しの加護』『転生の恩恵』
スキルポイント7
度重なるレベルアップで私のステータスは倍近く伸びた。
中には倍以上になっている項目もあるし…1日でこの伸びなら上々だと思う。
そんな中、更に私はステータスの上昇を加速させたいと思っている。
レベルが上がるにつれて必要経験値は増えるだろうし…そうなるとレベルをあげたいのにステータスが足らなくて経験値が思うように集まらない。
そんな状態になるかもしれない。
だがそんな悩みを解決してくれるのがスキル。
チートスキルを獲得し、最強になってやるぜ!というのが今。
さっきからステータスとにらめっこをして選び抜いた、目ぼしいスキル達がこの4つだ。
『筋力強化
筋力ステータスを上昇させ、レベルアップ時のステータス上昇に補正をかける』
『防御強化
防御ステータスを上昇させ、レベルアップ時のステータス上昇に補正をかける』
『気配感知
生物が放つ僅かな気配を察知する。スキルレベルの上昇に伴い範囲、精度が向上する』
『隠密
気配を小さくする。スキルレベルの上昇に伴い精度が上昇』
強化スキルは1ポイント、気配感知と隠密はそれぞれ2ポイントで取得出来る。
それなら余ったスキルポイントで何か取得すれば良いと思うかもだけど…精神のステータスはいわゆる魔法攻撃力。
魔法が使えない今、強化した所で意味がない。
防魔は魔法攻撃に対する防御力なんだけど…そもそも魔法が使えるモンスターを見たことがないから、これも大して意味がない。
じゃあ素早さは?と言われると…素早さ強化だけ何故か2ポイント必要。
それを取るためにポイントを残してる。
素早さは逃げる時でも追う時でも重要なステータス。
早めに入手したい。
じゃあ何故先に取らないかって?
素早さ強化を取った所で、ブラックウルフのほうが速いし、レッドムーンベアからは絶対に逃げられない。
なら、隠密でそいつらからバレないようにしつつ、気配感知でスライムを探したほうがいい。
それに、隠密は奇襲に使えるし、ブラックウルフやレッドムーンベアの接近に気付くためには気配感知があったほうがいい。
そんな理由から私はとりあえずこの2つを取得する事にした。
んじゃ、とりま〜す!
《スキル『筋力強化』『防御強化』『気配感知』『隠密』を取得しました》
おっ?これはアナウンスが流れるのか。
ふむふむ…さてステータスはどう変化したかな?
◆名前 無し
種族 キマイラベビー
レベル 7/10
HP 91/91
MP 25/25
筋力 70
防御 78
精神 26
防魔 61
素早さ 59
スキル 『鑑定』『成長補正』『爪Lv1』『気配感知Lv1』『隠密Lv1』『筋力強化Lv1』『防御強化Lv1』
加護 『癒しの加護』『転生の恩恵』
スキルポイント1
うんうん、ちゃんとステータスが上がってる。
これならフォレストスライムと正面から殴り合っても大丈夫そう。
…でもあいつらスライムのくせに筋力が高いんだよなぁ…私より力が強いってマジ?
それはともかく、これでまた少しだけど強くなった。
今日はもう暗いし、また明日活動するとしますか。
私の事を枕のようにして眠る子ウサギに囲まれながら私も体を丸くして寝る。
もふもふに囲まれてるから、寒く無くていいね。
しかも、ここは巣穴だから外気温の影響を受けにくい。
ふぅ~、快適快適。
親ウサギが巣穴の出口近くで聞き耳を立てながら寝ているのを横目に、私も眠りについた。
……何時間寝たか分からない。
でも一つ確かなのは、今が朝じゃないって事。
そして気配感知が正常に働いた結果って事だ。
警戒する親ウサギを巣穴の奥へ行くように押しのけ、巣穴からひょっこり顔を出して外の様子を確認する。
そこで見つけた、私よりも大きな何かの陰。
私が目を凝らしてそれを見ようとした時、丁度よく雲が月を解放し月明りがそれを照らす。
蛇だった。
日本で見られるような、マムシだとかアオダイショウだとかの小さな蛇じゃない。
用意に5メートルは超えるであろう巨体を持つ大きな蛇。
子ウサギを食いに来たのか、はたまた…いや、この際理由なんてなんだっていい。
「シャァァァアアア!!!」
喧嘩前の猫のような声を出して、こちらへ接近する蛇を威嚇する。
しかし、蛇は私の体が自分よりも小さいからか全く気にする様子なく接近してくる。
…鑑定してみるか。
◆
名前 無し
種族 ブルースネーク
レベル3/20
HP 179/179
MP 59/59
筋力 83
防御 101
精神 51
防魔 81
素早さ 113
スキル 『牙Lv2』『突進Lv2』『毒生成Lv1』『毒耐性Lv3』
スキルポイント13
◆加護『転生の恩恵・モンスター図鑑』発動
『ブルースネーク
低難度蛇型モンスターの一種。主に夜間に行動し、夜闇に紛れて獲物を襲う。毒蛇でもあり、噛まれると致死性の毒を流し込まれる』
おっそろしいね。
何が厄介って、こいつは素早いフォレストスライムみたいなものだって事だ。
しかも、確かな攻撃性があるからこっちが何もしなくったって攻撃してくるし、攻撃されたら容赦なく毒を食らう。
フォレストスライム以上の脅威だ。
「シュルルルル…」
妙な音を出して舌をチロチロと見せるブルースネーク。
その眼は完全に獲物を前にした捕食者の目だ。
どうやら、戦いは避けられないらしい。
果たしてどうやって勝つか…噛みつかれたら終わり。
なら噛まれないようにしなきゃいけないんだけど…私の反射神経じゃどうにも避けられると思えない。
…となると、反射神経を上げるしかないね。
さっきあったんだよね、そう言うスキルが。もう取っちゃえ!
《スキル『思考加速』を取得しました》
…よし、気持ち世界がゆっくりに見える。
これならさっきよりはマシでしょ?
そう確信して、私は巣穴から飛び出す。
そして、一直線にブルースネークに向かって走る。
ブルースネークはまだ余裕を見せてる。
その余裕が命取りとも知らずに、こちらの様子をじーっと観察してるんだ。
そして、一気に噛みつける位置まで私がやって来ると、電光石火の早業で噛みついてきた。
…けどそれは当たらない。
私自身も、自分の反射神経を侮ってた。
一瞬でブルースネークの攻撃を見切り、簡単に回避して見せた。
そのことにブルースネークはかなり驚き、動きが止まってしまう。
その隙をついて、私はブルースネークの喉ものとに噛みついた。
「シュアアアアア!!?」
噛みつかれたブルースネークは奇声を上げて暴れまわる。
体をくねらせて何とか噛みつこうとするが位置的に噛めない。
その事を理解したのか、体を巻き付けて圧殺して来ようとするけど…お前が毒蛇で非力だってことはステータスで知ってる。
ちっとも怖くない締め付けを耐え、鱗に包まれた体を引っかき、ダメージを与えつつ確実に歯を置く深くまで突き立てていく。
今の私には筋力強化だけでなく、噛みつき攻撃の攻撃力を上げる『牙』のスキルがある。
そう簡単に許してもらえると思うなよ!
いっそう力を込めて肉を噛み千切ると、さらに深くまで歯を差し込んで肉を削いでいく。
ダラダラと血が流れて鑑定をせずともブルースネークの体力が減っていくの分かる。
やがて体から力が抜けていき、ついには動かなくなった。
そのころには首の肉を半分食いちぎった後で、背骨が見えかけてたからどのみち時間の問題。
失血で死ぬか、脊髄をやられて死ぬか。
ただ…私は生き残ってこいつに勝ったって事だ。
《レベルが上がりました》
レベルアップの音が私の勝利を教えてくれる。
そう感じたら急に疲れが出てきて、ウサギ親子が寝る巣穴とは別の巣穴で眠りについた。