食べ物を求めて
ゴブリンキングを倒してから1週間。
貯蓄のスキルレベルが上がったおかげで、肉が腐る前に全てのゴブリンを食い尽くす事に成功し、しばらくは安泰だと思っていた。
けれど、空を飛ぶ時のエネルギー消費のことを考えると、今のままでは足りない気がして狩りに出る事にした。
と言ってもゴブリンの巣の周辺は、ゴブリンキングにビビって大した強さのモンスターが居ない。
強いモンスターってのはだいたい大きいから、できれば強くて大きいモンスターを食べたい所。
まあとはいえ別に小さなモンスターも食うけどね?
塵も積もればなんとやら、1つは小さくてもたくさん食べればその分腹は満たされる。
手当たり次第生き物を狩り、食べる生活をしながら森を彷徨う。
特に行く当ては無いけれど、生き物の気配があればそこに向かって、無ければ先へ進む。
そんな生活をしていると、だんだん貯蓄のスキルレベルが上がっていってついにレベルがマックスになった。
◆
名前 無し
種族 グレーターキマイラ
レベル 12/100
HP 29300/29300
MP 22000/22000
筋力 18124
防御 17593
精神 15991
防魔 17032
素早さ 16853
スキル 『鑑定』『成長補正』『物理魔法Lv2』『爪Lv10』『牙Lv10』『咆哮Lv6』『炎の吐息Lv8』『飛翔』『鷹の目』『気配探知Lv2』『隠密Lv2』『HP強化Lv2』『MP強化Lv2』『筋力強化Lv5』『防御強化Lv4』『精神強化Lv2』『防魔強化Lv4』『素早さ強化Lv4』『思考加速Lv4』『飽食Lv1』『HP回復速度上昇Lv6』『MP回復速度上昇Lv4』『物理攻撃耐性Lv5』『氷炎耐性Lv2』『状態異常耐性Lv5』
加護 『癒しの加護』『転生の恩恵』
スキルポイント32
貯蓄のスキルは飽食になり、ストック出来る量が大幅に増えた。
具体的には、貯蓄のレベルマックスで2万だった許容値が一気に30万まで増えた。
まさかの十倍以上。
そんなに許容値が増えても食べ切れないとは思うけど…でも、それだけストックがあればしばらく何も気にせず空を飛べる。
より一層狩る量が増え、森のモンスターを全て食い尽くしそうな勢いになった私は、ついにあるものを見つけた。
「お父さん!お母さん!行ってきます!」
元気いっぱいの声で『行ってきます』の挨拶をする。
村のすぐ近くにある森に薬草を取りに行くのだ。
あの森は危険なモンスターがたくさん住んでいるため、森の外側にしか行けないけれど、普段人が立ち入らないため薬草がたくさん生えている。
だから私のように森に入って薬草を取りに行くことで、生計を立てる事が出来るのだ。
森に行くのはモンスターに襲われるかも知れないから危ないことだけど、危険なモンスターは森の内側の方に縄張りを持ち、その近くから離れることはあまりないそうだ。
「おじさん!今日も来たよ!」
「…おう」
それでも森の外周には弱いモンスターが住んでいる。
だから村の狩人のおじさんと一緒に薬草を取りに行くんだ。
狩人のおじさんも、森の野生動物を狩って生計を立てているので、森へ行く。
それに便乗する形で薬草採取をする。
こうした助け合いが村の暮らしでは大切なんだ。
今日もおじさんと一緒に森へ入る。
森には私がおばあちゃんになっても無くならない程の沢山の薬草が生えている。
その中でも出来るだけ大きな物を取って、小さな薬草や若い薬草は残す。
こうすることで、私の子供がおじいちゃんやおばあちゃんになっても薬草が残るらしい。
それでも、カゴがいっぱいになるほどの薬草。
これを水に浸けて余分な物を落とし、干して乾燥させれば街で売ることの出来る薬草になる。
それを服や道具を買うためのお金にするんだ。
そうして畑作業を楽にして、私達が食べられるご飯の量と売れる量を増やす。
だからこの薬草採取はとても大事な仕事だ。
「…不味いな。帰るぞ」
「えっ?」
しかし、突然おじさんからストップがかかる。
そして、おじさんは急いで道具をまとめ始めた。
私も怒られないよう薬草を取るのをやめて、おじさんと一緒に走る。
おじさんの顔色は悪い。
それに、まるで何かに怯えているような…
「っ!?」
その時、私達の上を何かが飛んでいった。
その陰が見えた。
空を見上げると…そこにはとんでもなく大きなモンスターが居る。
しかも、こっちを見られた。
「隠れるぞ!」
おじさんは私の手を引いて森に入り、木の陰に身を隠す。
あのモンスターが私達を獲物と認識していない事に賭けて、森の中で息を殺す。
バサバサという大きな羽音が遠のいていき、ついには聞こえなくなる。
それを確認してから森から出ると…モンスターは何処かへ飛び去っていた。
外だ!
村だ!
人間だ!!
ついに森を脱出し、それどころか村まで見つけた。
ここに来るまでに空を飛んだからお腹が空いたね。
村に降りて食料を分けてもらおうと思ったけど……降り立った瞬間阿鼻叫喚。
村人が悲鳴を上げて逃げ回るものだから、これは無理だと即座に判断し撤退。
森を出てすぐの所で見つけた二人組もすぐに隠れちゃったし…人間って臆病なんだね?
ステータスも100行くか行かないかくらいのばっかだったし…そりゃそうか。
私はステータス15000超えのスーパーモンスター。
人間から見れば150倍強いばけもん。
逃げ出すのも無理は無いと、他を当たる事にしたんだけど…見つけちゃいましたよ。
襲っても……ゴホン!!食糧になっていただいても問題なさそうな人間達。
「□□□□□□□!!!」
「■■■■■■!!」
「□□□□□□□□□□□!!」
なーんか理解出来ない言語で悲鳴をあげる男ども。
何言ってんのかさっぱりわかんないけど、悲鳴に関しては全世界共通。
多少の差はあれど、恐怖で頭がおかしくなって発狂している事に変わりはなく、それだけは理解できる。
ステータスはオール800程度か…ゴミめ。
しかもクセェし汚いし荒っぽいし、流石山賊って感じ。
そう!私が見つけたのは山賊の群れ。
村から私が飛んで5分程の位置山賊の基地があった。
あの村いつ襲われてもおかしくないくらいの距離だ。
若い女の人沢山いたし、この山賊共に襲われて悲惨な目に遭うのは可哀想だ。
何よりお腹が空いてる。
…人間を食うのかだって?
私はキマイラだ。
と言うか前世の頃から別に他人がどうこうなんて考えたこと無かった。
私は仮に食糧難が起こればゴキブリを食えるし、海で遭難してウミガメのスープを食べる事になったら、むしろ率先して作る側。
その上キマイラになって、本能的な同族喰らいへの嫌悪感が無くなった今、人間を食べたくないと言う気持ちは私にはない!!
…かと言って、私も元は日本生まれ日本育ちの先進国に生きる道徳的な人間。
何の罪もなく、かつ真っ当に今を生きる人々を襲うのは気が引けるってもの。
けど、法を守らず、真っ当に生きる人達を踏み躙って生きるカスどもを襲う分には何の躊躇いもないわけだ。
まして私はキマイラ。
人間の法?
私、人間じゃないから殺人の罪に問われないんだよね。
社会からも、無法者が魔物に食われてラッキーくらいの気持ちっしょ?
なら襲わない理由は無いよね!
私の養分になりたまえ!
まるでゴブリンを倒した時の如く、簡単に踏み潰していく。
もちろん比喩だ。
ブチュって潰れた肉なんか食っても、見た目が悪くてお腹が空かない。
軽く頭を爪でこう、ザシュッ!として食べたり、そのまま頭からマミったり、加熱調理したり。
まあ十数人いた山賊どもは3分持たず食い尽くされた。
もちろん逃がすなんて真似はしてない。
世のため人のため私の腹持ちのため、そして経験値稼ぎの為全滅させてやった。
君たちの無念、私は忘れない。
3秒くらいは。
さーて、お宝あさりしよう。
こいつら山賊なら商人とか村とか襲って、お宝の1つや2つ持ってるっしょ?
何かあるかなぁ……ん?
…無いねぇ。
びっくりするくらい何も無いねぇ。
なんかゴミみたいな袋に銅とか銀っぽい硬貨はあったけど…それ以外はゴミ。
一応鑑定を使ってそれっぽいのは全部調べたけど…ゴミしか無い。
というか、私には価値の無いものしか無い。
いやね?確かに鍬とか鎌とか売れると思うよ?
貴重な金属製の農作業具だし。
でもさぁ、私農業しないんだ?
うん、要らないね。
はぁ…ショボ。ショボ過ぎてなんだかやる気が無くなっちゃったわ。
腹いせに街襲うか?
……いやいや!何考えてんだ私!
人間だよ?そして私は元人間だよ?
この蛮族どもには容赦しなくても良いとしてさ、何もしてない善良な市民に手を出すのはやめようって思ってたでしょ?
…キマイラに転生したせいで、頭がおかしくなったか?
意識は肉体に引っ張られる的な感じで。
ありそうだなぁ…前世の私こんなに乱暴じゃ無かったし。
それでもウサギを愛でたり、善良な市民は襲わない程度の人間らしさは残ってるし、問題なし。
さて、新たな食料と出会いを求めていざ我往かん!




