空を舞う
おはようございます。朝だと思われます。
さて進化が完了したわけだけど……今のところ体に目立った変化は見当たらない。
大きさも…大きくなってる気はするけど、元がデカかったからそこまでの変化はない。
いやね?50センチ大きくなりましたって言われたら普通「おー!」ってなるけど、元が9メートル50センチでしたとか言われたら「あー、10メートルいったね」としかならない。
とまあそんな感じで、私の体にそこまでの変化は見られないね。
じゃあおそらくステータスが変化している事でしょう。
というわけでいざ!ステータス、オープン!!
◆
名前 無し
種族 グレーターキマイラ
レベル 1/100
HP 23400/23400
MP 17900/17900
筋力 16794
防御 15983
精神 14420
防魔 15877
素早さ 14568
スキル 『鑑定』『成長補正』『物理魔法Lv2』『爪Lv10』『牙Lv10』『咆哮Lv6』『炎の吐息Lv8』『飛翔』『鷹の目』『気配探知Lv1』『隠密Lv2』『HP強化Lv1』『MP強化Lv1』『筋力強化Lv5』『防御強化Lv4』『精神強化Lv2』『防魔強化Lv4』『素早さ強化Lv4』『思考加速Lv4』『貯蓄Lv4』『HP回復速度上昇Lv5』『MP回復速度上昇Lv3』『物理攻撃耐性Lv3』『氷炎耐性Lv1』『状態異常耐性Lv5』
スキルポイント32
おお!ステータスであのゴブリンキングを上回ってるじゃん!
しかもスキルも滅茶苦茶強化されてるし、新スキルもある。
氷炎耐性ってのは…文字通り火属性と氷属性の攻撃を弱めるスキルっぽいね。
しかも、火耐性、氷耐性の混合じゃなくてその上位耐性の炎耐性、氷冷耐性、の混合というクソ強スキル。
これでブレス攻撃の自傷は気にしなくて済むね!
…まっ、炎の吐息が進化前に比べてレベルが倍になってるからそれでも自傷はしっかりしそうだけど。
まあそんな事はさておき一番大事な新スキル、『飛翔』について話そう。
◆『飛翔 空を飛べるようになるスキル』
うん、シンプルイズベスト。
けれど私が欲しい内容は書かれてた。
私はついに全人類の夢、空を飛ぶことを実現するのだ!
…まあもう人間じゃないけど。
それで?もう一つの新スキルは何じゃらほい。
◆『鷹の目 鳥系モンスターの固有スキル。MPを消費し、遠くを見る』
おん?このスキル説明が正しければ私、鳥扱いを受けてる事になるんだけど…運営さん大丈夫?なんかバグってない?
…もしかして私ってキマイラだから、他の動物の固有スキルを入手できる?
だとしたら相当強くない?
良いんすかそんな事できちゃって。
キマイラのコンセプト的には大丈夫だろうけどさ…ほら、種族のバランス的にね?
……いや、別にいいわ。鳥とかの固有スキル持っててもドラゴンに勝てる気しないもん。
はあ…格の違いを見せつけられるなあ…強くなった自分の説明でも見てモチベーションをあげよう。
◆加護『転生の恩恵・モンスター図鑑』発動
『グレーターキマイラ
高難度モンスターの一種。個体ごとに特徴は異なるが、どの個体も総じて高い戦闘力を有する。討伐には大軍が差し向けられることもある』
ほーん…なんか説明が凄くシンプル。
思ってたのと違うけど…それでも国が戦力を結集して戦うような強力なモンスターになった事に間違いはない。
本当にそれだけ強くなったのか?ぜひ確かめてみようじゃないか。
私はいい場所を知ってる。
空を飛ぶことの実践もかねて外に出ると私はスキルが『こうしろ』と指示するままに動く。
説明は難しいけど、空を飛ぶためにMPを消費し翼を羽ばたかせると何というか、びっくりするくらい不自然で自然な動きで空を飛ぶことが出来た。
そう!私は空を飛ぶことが出来たんだ!
グングン高度を上げ、森の木々なんてとうの昔にはるか下。
速く飛ぼうと思えば走るよりもずっと速く飛べるし、まるで風になったような気分で自由自在に空を駆け回る。
意味のないジグザグ飛行をしながらやってきたのは、かつて私とウサギたちが住んでいた場所。
そして、そこからは自分の脚で歩くことにした。
何故かというと、空を飛ぶことには意外な弱点があることに気付いたからである。
その弱点というのが、MPの消費が激しいというもの。
まあこの巨体が飛ぶんだから正直仕方ない気はするけど…それでも消費量が割と馬鹿にならない。
それとも一つ消耗が激しいものがある。
それは体力。
はっきり言うなれば貯蓄のスキルで蓄えている養分のストックだ。
通常動物は動くために食べ物を摂取しそのカロリーを動力源として動いている。
確かに効いたことがある。鳥は飛ぶために骨をスカスカにして軽くしているし、長距離を飛ぶ渡り鳥は移動を開始する前に体重が元の二倍以上になるほど養分を蓄えるそうだ。
もっと言うならハチドリという生き物は花の蜜を吸い続けないとあっという間に餓死していしまうほど、空を飛ぶという行為はエネルギーの消耗が激しい。
それは私も同じで、MPと膨大な量のカロリーという二つのエネルギーを大量消費してやっと飛べる。
つまり、ただ移動するだけなら空を飛ぶという行為はあまりにもエネルギー効率が悪い移動手段となる。
目的地へ急ぎたい時や、敵から逃げる時以外は不用意に飛ばないようにするか、エネルギー確保を十分にできる環境に居た方がいいだろう。
まあ、今回の場合エネルギー確保に関しては問題なさそうだけど。
「ゲギャ!ゲギャ!」
と、そんな事を考えているうちにいつの間にか目的地についていた。
私の向かっていた場所、それはゴブリンの集落だ。
挑む相手はもちろんゴブリンキング。
進化した私の腕試しに付き合ってくれやゴブリンの王様さんよぉ。
私の登場に驚き、逃げ惑う雑魚なんかには目もくれず、進化して手に入れた気配探知の示すまま進む。
すると相手の方からやってきてくれた。
「ウウウウウウウウウウウ……」
威嚇の声を上げながら歩いてくるゴブリン王。
その手にはステータスを確認した時に見た項目の通り、剣が握られている。
随分と使い古された剣だ。
2メートルを優に超える巨漢が持つにふさわしいその大剣というべき剣が私へ向けられる。
あのサイズなら相当重いだろう。
それを感じさせない動きで剣を構えるあたり…ステータスの力は偉大だ。
緊迫した空気が流れ、私を見上げるゴブリンキングは冷静に息を吸い、吐く。
『ガァァァァアアアアアアアア!!!!』
戦いの開始を告げる銅鑼は、私のスキルとMPの強化を受けた咆哮。
私が雄たけびを上げると同時、ゴブリンキングは動き出した。




