虫
エビルモンキーを倒した私が次に狙う獲物……というか、私が獲物になってる。
私を捕食しようとした奴の正体は、蜘蛛。
ステータスがバカみたいに高い蜘蛛だ。
◆
名前 無し
種族 ナイトメアスパイダー
レベル 41/100
HP 6900/6900
MP 4500/4500
筋力 4418
防御 5640
精神 4102
防魔 5597
素早さ 5065
スキル 『蜘蛛糸Lv9』『毒牙Lv9』『酸攻撃Lv9』『操糸術Lv8』『気配探知Lv1』『隠密Lv8』『筋力強化Lv6』『防御強化Lv5』『精神強化Lv3』『防魔強化Lv5』『素早さ強化Lv5』『毒無効』『酸無効』『麻痺耐性Lv1』『物理攻撃耐性Lv3』
スキルポイント91
めちゃんこ強いこのモンスターは、小柄なゾウ並みの巨体を持つ私とそう変わらない巨大な蜘蛛。
そして、その見た目に違わない超ステータス。
ゴブリンキングほどではないにしても、このあたりの主であることに変わりはない。
しかもなにがヤバイって、私は知らずにこいつの領域に足を踏み入れってしまっている。
巨体からは想像もできないような細い糸を出して巣を作るらしく、私はそれに気づかずまんまと広い巣の奥地まで来てしまった。
こちらを見つめる無機質な8つの目は、私を捕食しようとギラギラと光を放っている。
私もドラゴン襲来前の戦闘や、エビルモンキーとの戦闘でレベルは上がってるけど…それでもステータスが精神以外1000を超えたくらい。
つまり全体的に見て5倍くらいの差があることになる。
正直ステータスだけ見れば勝てる気がしないし、体格でも勝ってる訳じゃないから優勢な要素がない。
強いて言うなら炎の吐息。
おそらくだけど、これが相性がいいはず。
蜘蛛系のモンスターは火に弱いイメージ。
おそらく突破口はこれだろう。
私は炎の吐息にすべてをかけて…いきなり炎のブレスをナイトメアスパイダーにぶつける。
「キェェェェエエエエエエ!!!!」
ナイトメアスパイダーが、断末魔のような悲鳴を上げる。
実際かなり効いているようで、やっぱり弱点属性だったのか消費MP100に対して、ナイトメアスパイダーのHPが1000以上削れた。
これなら勝てる。
でも、現実はそう甘くない。
一旦ブレス攻撃を辞めて、一か八かの近接戦闘を仕掛ける。
前足の一本に全力で噛みつくと、まるで岩でも噛んでいるかのような硬さだった。
だがそれでも諦めずさらに顎に力を入れると、まるで陶器が割れたかのようなパキッ!という音が聞こえて、牙が深くまで刺さる。
さらに一部が割れたことで一気に脆くなり、前足一本を噛み千切ることに成功した。
…口の中は歯でお茶碗を噛み砕いたみたいになったけど。
やっぱり外骨格は固いけど、割れてしまえばあとは脆い。
気分は…アレだ。小さい頃、カニを堪能したくて硬い殻を噛み砕いて食べてた時の感覚。
めっちゃはしたない上に、歯を痛めそうだから成長と共にやらなくなったけど…まさかここで似たような経験をするとはね。
足を一本砕いた私は、反撃が来る前にすぐさま距離を離す。
ここまでは不意打ち。
この先は激昂したナイトメアスパイダーのターン。
いきなり襲われることを警戒し、ナイトメアスパイダーを絶対に視界から離さないようにしつつ、気配感知で周囲からの攻撃も許さない構え。
しかし、そんなものは無意味だった。
ナイトメアスパイダーが取った行動は一つ。
「キエエエエエエエエエエエエ!!!!」
その圧倒的なステータスに身を任せ、何も考えない突進。
それによってあっという間に私との距離を詰めたナイトメアスパイダーの牙が私の左前脚を捉える。
激痛が私右足を襲い、その直後かすかに私の脚に何かが注入される感覚があった。
何かって何?そんなの毒に決まってるでしょ!!
やばい!状態異常耐性があるから多少の毒は効かないけど、相手の毒牙のレベルは9!
このまま噛まれたら死ぬ!!
「ガアアアアアアアアアアアア!!!」
自爆覚悟で炎ブレスを爆発させるようにぶっぱなし、ナイトメアスパイダーを引きはがす。
そして、ブレスで自分の脚を焼いた。
左前脚が機能しなくなってバンランスは取れないし、攻撃の手段は減ったし、HPもめっちゃ削れたけど、毒が全身に回るよりは断然いい。
そしてナイトメアスパイダーはと言うと…私のブレスで焼かれた外骨格が赤くあり、まるでゆでガニみたいになってる。
…ゆでガニ?
もしかしたら…いけるかも!!
「キ、キィ…」
「グガアアアアアアアアア!!!!」
「!?」
捨て身の特攻。
失敗した私は死ぬ!
焼けてほとんど使い物にならなくなった左前脚を杖のように使いながら全力で距離を詰め、上に乗ると焼かれて赤くなった部分を狙って噛みつく。
焼けた外骨格は私の予想通り他と比べて脆くなっていて、簡単に噛み砕くことが出来た。
もう後はやる事なんて決まってる!!
灼熱の業火に焼かれて死ね!!
噛み砕いて中身が露出した部分に、ゼロ距離で炎のブレスをぶち込む。
いかに高いステータスを持っていようと、体に風穴開けられてそこから炎のブレスをぶち込まれたら意味なんてない。
信じられないほどの勢いでナイトメアスパイダーのHPが削られていく。
「キエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!」
もちろん、ナイトメアスパイダーだってただではやられてくれない。
私の事を振り下ろそうと体をぶんぶん揺らして暴れまわる。
振り落とされぬよう、爪を使って全力でナイトメアスパイダーの体にしがみついていると、振りほどけないと判断したナイトメアスパイダーは、ゴロゴロと地面を転がって私をこすり落とそうとする。
私よりもはるかに高い筋力から繰り出されるゴロゴロは結構な力があり、私は引きはがされてしまった。
でも、逃がすものか。
逃げ出そうとするナイトメアスパイダーに向けて、ありったけのMPを消費してマジックアローを飛ばす。あいつは速い、マジックボールでは逃げられるかもしれない。
だからマジックアローを選んだ。
多数のマジックアローが弾幕のようになってナイトメアスパイダーに襲い掛かる。
大したダメージにはならないかもしれないけど、大切なのは煩わしいと思わせること!
何故なら本命は…
「グルアアアアアアアアアアア!!!!」
私の直接攻撃なのだから。
マジックアローに気を取られて私の接近に気付かなかった!
それが貴様の敗因だぁ!!
無事な右前脚を振り上げ、ナイトメアスパイダーの頭に叩きつける。
その一撃で半分赤くなっていたナイトメアスパイダーの頭部が割れる。
すかさず中へ右前脚をねじ込み、脳髄を破壊した!
《レベルが上がりました》
その機械音のような声が、私の勝利を告げるのだった……




