進化
新天地での暮らしを始めて5日。
やはりあの辺りはゴブリンの領域故に強力なモンスターが少なかったらしい。
引っ越してからと言うもの、一時も気を抜けない生活を送っていた。
引っ越して初日に母ウサギに起こされて何事かと思えば、周囲を見たこともないモンスターに囲まれていた。
一体一体は大した事ないが、数が多くて中々苦労したね。
その日以外にも毎日のように襲いかかってくるモンスター。
大して強くないか、強くても一体だけなのが幸い。
だから何とかウサギ達は無事だけど、私は無事じゃない。
でもまあ、それだけモンスターと戦ったおかげでレベルはメキメキ上がり、あっという間に上限へ。
次の種族に進化すべく、私はウサギ達を穴の中に隠し、その上に穴を塞ぐように乗る。
そうしてウサギ達の安全を確保してから進化を始めることにした。
《キマイラに進化可能です。進化しますか?》
あー、はいはい。
まーた特殊進化はない感じね。
もう少し譲歩してくれたっていいのよ?
こう…ダークキマイラキッズとか?
…流石に厨二過ぎるかそれは。
はいは〜い!進化します!
《キマイラキッズからキマイラへの進化を開始します》
前回のように猛烈な眠気に襲われ、そのまま眠りにつく。
こうして起きたらきっと進化してるは、ず……
おはようございます。
目が覚めました。
ウサギ達は…うん、全員無事だね。
巣穴の上から移動して、新鮮な水と草を食べられるようにしてあげる。
もちろん、周囲への警戒は怠らない。
なんだか視野が広くなったような気がして、目視での警戒もしやすくなった。
それもそのはず、今の私はゾウ……とまではいかないけど、それくらいでっかい体をしているのだ!
◆
名前 無し
種族 キマイラ
レベル 1/50
HP 1002/1002
MP 500/500
筋力 863
防御 921
精神 671
防魔 872
素早さ 854
スキル 『鑑定』『成長補正』『爪Lv8』『牙Lv7』『咆哮Lv4』『炎の吐息Lv1』『気配感知Lv7』『隠密Lv2』『筋力強化Lv2』『防御強化Lv2』『防魔強化Lv1』『素早さ強化Lv2』『思考加速Lv3』『貯蓄Lv3』『HP回復速度上昇Lv1』『物理攻撃耐性Lv1』『火耐性Lv1』『状態異常耐性Lv1』
加護『転生の恩恵・モンスター図鑑』発動
『キマイラ
中難度モンスターの1種。成熟した個体であり、口からは火を吹き、強靭な四肢は大地を風の如く駆け回る。好戦的な性格であり、人を積極的に襲うため危険なモンスターとして扱われる』
おお!レッドムーンベアの手前くらいまで強くなってるじゃん!
それにスキルも結構レベルが上がってるし、新スキルも生えてる。
『炎の吐息』と『HP回復速度上昇』。
おそらくキッズの頃からあった火耐性と合わせて、これで火を吹くんだろうね。
ついに私もブレスを撃てるようになるのか…ちょっと強くなった気分!
そして既存のスキルのレベルもかなり上がってる。
特に『気配感知』!
なんかやけに周囲が鮮明に分かるなと思えば、めっちゃレベル上がってた。
これあのゴブリンキング以上じゃね?…と思ったけど、思い返してみればゴブリンキングは感知じゃなくて『気配探知』なのよね…
つまり上位スキル。
…確実にこっちの事認知されてることが、つい今分かったね。
でも、かなり移動してゴブリンの領域からは逃げてきたから大丈夫なはず。
…っと、そんな事を考えているとめっちゃデカくなった私を見て、凄く興奮してる子ウサギ達が遊びに来た。
しゃがんであげると、私の上に登ったり割とふさふさな毛を引っ張ったり可愛い。
ああ、でも羽根を引っこ抜くのは辞めてね?
まだ飛べない翼が剥げちゃう。
そんな恥ずかしい事になったら私人に会いに行けない。
子ウサギたちと戯れていると、こちらへ近づくモンスターの気配を察知。
一応警戒しつつ、子ウサギに余計なストレスを掛けさせないために普通に接する。
好奇心旺盛な子ウサギは、私の動かす長い尻尾に夢中で、私が尻尾を動かす度にあっちへ行ったりこっちへ行ったり大はしゃぎだ。
そんな中、母ウサギはモンスターの接近に感づいたようで、耳を立てて足をダンダン踏み鳴らす。
するとすぐに子ウサギたちは巣穴へ飛び込み、母ウサギも巣穴へ入る。
外敵の対応は任せると。
そう頼まれた私は、自らモンスターの方へ向かう。
こちらへ迫ってきていたのは前から襲ってきてたモンスターと同種。
戦力の差は肌でわかっているはずなのに向かってくる愚かさよ。
進化した私の力でねじ伏せてやろう!
早速炎の吐息で―――と言いたいところだけど、ここは森の中。
むやみに火なんて使ったらどうなるか。
だから今回は普通に肉弾戦で押し切る。
「ガウガウ!!」
恐れを知らず迫ってくるモンスター私はそいつに対し、強烈な体当たりを食らわせる。
面白いほど簡単に吹き飛んでいくモンスターを追いかけると、倒れた先で鋭い爪を振り下ろした。
まるでバターでも切るかのように簡単にモンスターの肉や骨を断ち切ってしまう。
爪の鋭利さはもちろん、進化して強くなった影響がもろに出てるね。
一撃で死んだモンスターの肉体をぺろりと平らげ、巣穴の方へ戻ると子ウサギたちがすぐに飛び出してきた。
私はその子ウサギたちを踏みつぶしてしまわないように気をつけながら腰を下ろす。
そして、進化して大きくなった翼や長い尻尾を使って元気いっぱいな子ウサギたちと一日中じゃれ合っていた。




