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第13章

第13章


森の屋敷のなかで2番目に大きい部屋をあてがわれて、修道女から急にお姫様の気分になったことも、しだいに慣れて来た頃であったが、婚礼の日の夜は本当にロマンティックな気持ちになった。部屋が薔薇の花びらで埋め尽くされていて、大きなオルゴールが運び込まれて可愛らしい音楽を流していた。クリシュナさんがいて、部屋のセッティングをしてくださっているようだった。

「すんません、俺男なのに、エイヴァは育児っす!」

「あ、ありがとう、ほ、本気だな……」

「本気っす!お楽しみください、これ、ネグリジェ!」クリシュナさんは赤面した私の顔を見てから恭しくお辞儀をし、失礼します、と私の首筋に百合の香りの香水をつけて、これはプレゼントっすよ、と手に持たせて、部屋を後にした。


しばらくすると、戸を叩く人がいた。

「失礼するよ。まったく、してやられたよ。ホットワイン、飲む?」声の主は、もちろんハーヴェイ様だった。私たちは天蓋付きのベッドに並んで腰掛けて薔薇を一輪取り出して香りを嗅いだ。

「ハーヴェイ様?」

「なんだい?」

「お仕事する部屋でいつも寝られてますよね」

「うん」

「あの、夜はいっしょに、お休みしたいな……」そして、ハーヴェイ様はうふふと優しく笑った。そうして私の髪をさわり、まつ毛を触った。

「美しいな……」そのまま引き寄せて、私の唇にキスをした。そしてもう一度キスをした。もう一度、もう一度、そして私の身体を抱きしめた。

「こうしてると、自分がいるところが、聖母様の国だってわかるんだ……」

「私もです」そうして見つめ合い、彼は蝋燭の光をひと息に吹き消した。


私はどんな時も聖母と同等に彼の手となり足となった。私ほど彼のことをよく理解する者はいないだろう。私たちがこの親愛なる森から出て、彼が領主として君臨してからの物語は、また別の物語である。


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