第11章
第11章
「ミヒャエル先生、私どうしてもあなたに診察してほしくて、来てしまいました」
「ああ、君はあの時の……」
ヴァイオレットさんには、みんなでぞろぞろと会いに行ったものだから、爆笑され、貰っときなさい、盛大な結婚式になるでしょ?と言われた。この街に来る時に倒れていた女性が僕の勤めている診療所を調べて診察に来た。彼女の名前はアンちゃんと言った。
「先生のこと調べて、来ちゃって。私なんていなくなればいいんだ。私はあたまおかしいから」
「どうしてそう思うの?」
「お酒がやめられなくて、飲めば飲むほどおかしくなるの、わかってるけど、やめることができないんです」そうして僕は頷きながら話を聞く。
「こんなのダメですよね、私なんか死んじゃえばいいんだ………」
「今はそう思うんだね。えっと、きみの心臓は元気だよ。過呼吸になるのは、精神的なものなのかなって思ってる」
「はい……」
「精神的なものは、お薬で治したりもするし今日頓服出したけど……このケースは、少しは、本人が強い心を持って、頑張らないといけないのもあるんだ」そう言って診察を終わりにした。
またアンちゃんは病院に来た。
「やっぱり私心臓がおかしいと思うんです!だって私はなろうと思ってないのになるんです!」僕は不思議と、彼女に妹のような感情を抱いた。
「君の心臓はどこも悪くないよ」そう言って僕はアンちゃんの服の上から聴診器をあてた。ほら。だから、負けたらダメだよ。と、アンちゃんに聴診器の音をきかせる。
「悪いです、いっぱい………」アンちゃんは顔を赤らめて言った。
「先生」僕ははい、と言った。
「私先生が好きです」
「……困ります」するとアンちゃんは泣き出した。
「私がブスだからですよね?!」
「お帰りください」
仕事をしているときに、なぜだか、アンちゃんのことが気になった。タイプでもないし、女性としては清潔感のない人であるのに、なぜだか、気がかりなのだった。