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死刑のあとに出来る事  作者: 和泉こまる
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第4話 似たもの同士 前編

 汗が頬を伝うのを感じる。


 それが厚さから来るものでは無いことを僕は理解していた。


 胃袋が絞られているような感覚、看守に初めて話しかけられたことを思い出す。


 見た事も無い数の人間が僕を見ている。しかも同年代くらいの子供達だ。

 あ、シアくらいの女の子もいる……、と思ったら口元が見えない程ひげが生えた人もいる。


 というかこの部屋広いな!

 僕の記憶の中で一番大きな部屋は施設の図書室、シギの部屋3個分くらいだったが、今いるこの部屋はシギ部屋換算することもおこがましいほどの大きさだった。人はざっと6、70人くらいか。それほどの人数がギチギチに詰まっているわけでもなく余裕を持って座っているのだから相当大きい部屋だ。


「お~いハジメ君」


 そ、そうだ。ここは恐らくシギがさっき言ってた……そうだ魔術を習うとかの学校か?

 もしかしてその場所に直接飛ばされたって事か?


「授業始めたいんだけどな~?」


「あ、え、えと自己紹介……でしたっけ?」


 そしてさっきから僕に話しかけてくるこの人はいったい何者なんだ?


 髪はボサボサで眼鏡をかけており、シギと同じ様に白衣を身に纏っている。

 この人がいわゆる『先生』か?

 ミャーもシギのことをそう呼んでいるし。おそらく似たような種類の人間なのかも。


 とりあえず伝えなければ……さっき自分が決めた名前を……、

 

 初めて会う人たちに……!


「は、初めまして」

 で、良いよな?


「ハジメ、って言います……、よろしく」

 

 言えた……言えたんだよな?

 あんまり大きな声は出ていなかったらしく、僕を見ている数名は首を傾げていたり、隣の生徒に聞こえていたかと訊いているような素振りを見せていた。


「どこから来たんですかー?」


 どこからともなく声が、いやこの教室に座っている生徒の質問が僕にぶつかる。

 

 慌てて周りを見渡すと活発そうなツインテールの女の子が目をキラキラさせながら僕の方を見て手を挙げている。

 

 あの子が僕に質問してきたのか?


 こんな僕に……?


 胃の痛みが消えて安どの感情が頭に広がる。

 そうだよ、僕はもう死刑囚じゃないんだ。

 同い年くらいの子供からあんな風に話しかけられたってなんにも問題じゃないんだよ!


「え、えっと、施設から……」


 しまった、と思った時にはもう遅かった。

 施設の事は禁句だ!


 アゴがしびれたかと思うと勢いよく口が閉じる。


 そしてどんなに力を込めて開けようとしても開かない!

 

 マズい……マズいぞ。


 今はシギもいない、僕の身の上を知っている人もこの場所には居ない。


 このままだと……そう思った時だった、さっきの白衣の男性が僕の頭を鷲掴みにする。


 そしてそのまま再び僕の意識は闇へ沈んだ。





 起きると、そこはまた身に覚えのない場所だった。

 

 僕は簡素な椅子の上に座っており目の前には机もある。


 そして目の前の教壇にはさっきの白衣の男性がこっちをじっと見ていた。


「困るな~変な呪いがあるなら先に言ってよ~。これじゃあ僕が君に無理をさせたみたいになるじゃない」

 男性は頭をボロボロ掻きながら、手元にある名簿を覗き込む。


「ハジメ・シリーズくんで良いかい?」


「……はい」


「先輩……じゃなかった、君の保護者に頼まれてね。突如この学校編入した君の授業の担当になったシフォンだ、まあ、シフォン先生と呼んでくれよ」


「は、初めまして」

 はい初めましてと先生は続ける。


「あの……、ここはどこでしょう?」


「ここはさっきの教室の隣にある補修室、暫くは君と僕で授業をする。まあ理由はいくつかあるが……」

 そう言い先生は指を鳴らす。

 それと同時に僕の目の前に7,8冊の教材が現れる。


「僕は君の事情を知っている一人だ」

 ……胃がまた痛くなるのを感じる。


「だから他の生徒とは違い、義務魔術教育要領がほとんど終わってないっていう事ももちろん知っている。だから当分はここで補修な」


 この場所にも僕の事情を知っていてくれている人がいる事に少し安心するが、とりあえず僕は気になっていたことを彼に問いただす


「ここは学校なんですか?」


「そうだけど……あ、もしかしてあんまり保護者から説明を受けずに飛ばされてきたカンジ?」

 僕は頷く。


 するとシフォン先生は頭を抱えてうなだれる。


「あ~あ~、そんな事だと思ったよ……まったくあの人はテキトーな事ばっかりだなあ、本当……」

 シギのことを知っている風な口ぶりだ。


「シギを知っているんですか?」

「まあね、ゼミの先輩さ……。彼女は昔から研究の為なら手段を選ばない人でね……、まあ先輩の愚痴はまた今度だな」

 

 そう言い終える前にシフォン先生は扉へ視線を移す。


 すると大きな音と共に出入り口のドアが破壊され、室内に吹っ飛んできた!


「おい公務員、俺様の席はココか?」


 腕組みをしながら僕と同じくらいの、でも態度は僕の数倍はデカい茶髪でとんがり頭の少年が教室に乱入してきた。


「……あ~、言い忘れたけど、クラスメイトは君を合わせて3人だから」

 

読んでいただきありがとうございます。


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