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植物な少女とワタシ  作者: 生方冬馬
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アザミ

美しい少女がいた。


手には何かの枯れ草を持っていて、怒っている。すごい形相で睨まれてしまった。


せっかくの美しい顔が台無しだ。


「どうしてなの?」


「え?」


それはこっちのセリフだと言いたい。


この少女は一体何に怒っているだろうか。


さっぱりわからない。


「どうしてあんなに酷いことができるの?」


少女は激昂していて怒鳴りながら距離を詰めてきた。


ワタシは訳がわからなすぎて「この子、まつ毛が長いなぁ」なんて全く関係のないことを考えてしまった。


「あの、誰かと間違えていませんか?」


ワタシはそれだけを搾り出して少女に訴えた。


少女はカッと目を見開いてまなじりを吊り上げた。


どうやら怒りのスイッチがさらに上がってしまったらしい。


「何を言っているの?あなたのせいで、みんなみんな死んでしまった」


少女は涙まじりに怒声をあげる。


ワタシはさらに冷めてしまった。


ワタシには全く心当たりがない。何も意味がわからない。何が言いたいの?


「ええと? 何があったのかな? 心当たりが……」


「昨日のことよ! 忘れたとは言わせないわ」


「昨日、昨日といえば……」


昨日といえば、父と一緒に空き地の草刈りをしたくらいなのだが。


「それよ! そこでみんな刈られてしまったわ!」


少女は手にしていた枯れ草をワタシに突きつけてきた。


特徴的な葉っぱからそれはアザミの花のように見えた。


「そういえば、アザミが群生していたなぁ。そこを刈り取ったのはワタシだけど……」


あの空き地は父の名義なので、ワタシと父が草刈りをすることになんの問題もないのだが。


「みんな一生懸命に生きていたのに! 刈り取るなんてそんな酷いことがよくもできたわね!!」


「そんなこと言われても」


あのままにしたら近所迷惑になってしまう。


苦情を言われるのはワタシの家なのだ。


「あくまでも非を認めないのね。それなら、いいわ。あの子たちの痛みを思い知りなさい!」


少女が一歩距離を詰めた。


もう、唇が触れそうだった。


少女の大きな瞳が視界いっぱいにうつる。


少女に腕を掴まれた。


「痛い!!!」


そこから激痛が走る。


何千本もの針で刺されているようだ。


「痛い!! 痛い! やめて」


ワタシは少女の手を振り解こうとしたが、少女の爪が食い込んでいて振り解けない。


「どう? わかった? あの子たちの痛みが!」


「分かった。わかったから! 痛い! 離して! ごめんなさい!」


痛すぎて涙が出る。


離してもらうためになりふり構わず懇願した。


少女は満足したのか、勿体ぶったように手を離してくれた。


腕がまだちくちくと痛む。


「次はもっと痛むわよ。覚悟しておきなさい」


「わ、わかったから」


少女はフンッと鼻を鳴らすと踵を返して行ってしまった。


「なんだったのよ。あれ」


ワタシは少女に掴まれた腕をさすった。


まだ、かすかにちくちくと腕が痛んだ。



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